丸沼高原から「座禅山」  登山日1997年7月5日


座禅山(ざぜんやま)標高2317m 群馬県利根郡/螢塚山(けいづかさん)標高1885m 群馬県利根郡
座禅山から見る日光白根山
7月5日(土)

 かねてから「奥白根山」に登るのに、丸沼高原からのルートが気になっていた。あまり人気がないルートだけに静かな山歩きができそうなので期待を抱いて出発した。丸沼高原スキー場のできるだけ上部に取り付くために車道を詰める。やがてゲートが閉じられたゲレンデの入り口に到着した。ゲートは手で押してみると、鍵がかかっておらずに簡単に開けることができる。しかし、そのゲートの中に入ったにしても、すぐに行き止まりとなるので、中にはいることは止めた。車道の反対側に「第5駐車場」の看板がでているので、そちらに車を止めることにした。

 この駐車場は大変広く、誰も駐車していなかったので、ちょっと気持ちが悪い。眼前には丸沼を挟んで「四郎岳」が大きく迫っている。よく見るとその稜線に向かって車道が延びているのがわかる。以前、廃道を辿ってやっと山頂にたどり着いたが、ここから見えている林道を使えば簡単に登れそうな感じを受ける。

 さて支度をして駐車場から歩き出す。シロツメクサに覆われたスキー場のゲレンデはなかなか爽やかで心地よい。しかし、ウサギかニホンシカのものと思われる糞が、いたるところに落ちていて、避けて登るのが困難なほどだ。かなりの急傾斜の登りで、いきなり汗が噴き出してくる。上部をみると単独行の登山者がいるようで、立ち止まってはこちらを見下ろしている。こんなところから登るもの好きが、ほかにもいたと思うとちょっとうれしくなった。

 ゲレンデの終点は「加羅倉尾根」と呼ばれる場所であるが、どこが尾根なのかさっぱりわからない。振り返ると、スキー場のカラフルなロッジと草原が、外国の絵はがきのようにも見える。そしてその尾根には先行していた登山者が休憩をしていた。かなり若い男性で、聞けば、菅沼の登山口から登ろうとしたが、車がいっぱいで駐車する余地がないので、こちらに回ってきたとのことである。昨今の登山ブームはすごいが、そこまできているのかと身震いをしてしまった。昔は奥白根山なんてシーズン中でもあまり人に会わなかったような気がするのだが。ともかくその男性は地図を持っていないという。そこで、今日はガイドブックをコピーして持って来ていたので、それを渡した。

 先行者はそのまま奥白根山に向かって歩いていった。わたしはここから「蛍塚山」を目指すことにした。加羅倉尾根から、車道のような広い道が上部に向かっているので、それを辿ることにした。その道の最上部は峠のようになっていて、さらに左の藪の中に道が切り開かれていた。その中に入ってしばらく歩くと、今度はちょっとしたピークに出た。ここが「蛍塚山」と思ったが、三角点がない!いくら探しても三角点がない!地形図を確認すると、どうやらここではなさそうだ。再び戻って広い道の峠から、今度は右に行ってみた。しかしそれらしきピークが見つからない。
 
 こんどは「加羅倉尾根」に戻って、リフトの最終地点から斜面を登ってみた。そして上部に着いてから何度も丹念に探してみたが、三角点が見つからない。結局この「蛍塚山」の山頂探しのために、1時間20分ほど費やしてしまった。しかしあきらめきれない、とりあえず三角点は見ていないものの、どこかで踏んでいるとの判断で、一局とQSOをしておいた。この一局からカードが来れば「蛍塚山」は終わったことにしようと思った。

 「加羅倉尾根」から今度はやっと正規のルートを辿ることにする。少し歩いたところでおもわずドキッとしてしまった。そこにはお地蔵様が、それぞれ別々に小屋に入って半円状に5体が並んでいるのだ。その中心部には燭台が置かれて、蝋が垂れたままになっていた。あまり気持ちのよいものではない。ましてこの儀式が行われている時で無くて、よかったと胸を撫で下ろした。

 道はさしたるアップダウンもなく、展望のない樹林帯をひたすら歩くのみだ。かつては盛んに歩かれていたのだろうが、この不気味な雰囲気の道では人気が出ないのも当然と思う。その名残なのだろうか、立派な道が突然現れることがある。こんなところには標識があるのだが、もしこれが無くなったら、とんでもないところに迷い込むことは必至であろう。

 樹林の道も飽きてきたところで、立派な標識で「弥陀ヶ池」への分岐が現れた。「座禅山」に行くには「弥陀ヶ池」に行くのが正解なのだが、ちょっと寄り道をして「七色平」に行ってみることにした。

 数分で「七色平」に到着、ここは朽ち果てそうな避難小屋があり、その手前は湿原になっていたが、だいぶ乾燥をした裸地も多かった。それに植物の名称を書いた立て札が、かなりの数置いてあるのだが、フェルトペンの文字が消えてしまって、ただのゴミとなっていた。ここから見上げる「奥白根山」はなかなか荒々しい姿を見せており、ここがかつて火山だったことを伺わせてくれる。

 再び、弥陀ヶ池の分岐に戻り先に進むことにする。ここからの道は、はじめはダケカンバの森でやがて針葉樹の鬱蒼とした森に変わっていく。そして傾斜も急になってきたが、むしろ登山道らしくてうれしくなってしまう。

 そのうちになにやら上部で人の声がするようになってきた。どうやら弥陀ヶ池が近くなってきたらしいことがわかる。そして目の前が開けたとたんに、樹林帯から一気に抜け出した。そこは不思議なことに草が刈り取られて、マルバタケブキの葉だけが取り残されている。妙な感じを受けたがその先に進んで、思わずが止まった。なんと、眼前に広がる弥陀ヶ池から奥白根山山頂に向けて、登山者が列を作っているではないか。これはたまらんと思い、踵をかえして樹林帯を抜け出たところまで戻った。

 仕方ない、ここから「座禅山」に登ることにしよう。しかし、大した登りではなく、あっけなく山頂にたどり着いてしまった。ダケカンバの木の陰で潜んでいた、ニホンシカがこちらを伺ってから茂みの中に隠れてしまった。「座禅山」は弥陀ヶ池に面した高みが、一応のピークで、その反対側は大きなクレーターになっている。そのクレーターの中に入るのはちょっとたじろいでしまった。まあこの中に入る必要もないので、2317メートルのピークに腰を下ろした。

 ここでお湯を沸かして、みそラーメンを作ることにした。何しろ気温17度、下界では内陸地で40度を越えたと無線機から声が聞こえる。ラーメンを食べながら、弥陀ヶ池と奥白根山の取り合わせを堪能しながら箸を動かした。

 さて無線機の周波数ダイヤルを回していると、池田さんが「千丈ヶ岳」から出ていたので声をかける。確か去年の夏に「富士山」移動の池田さんと話して以来だ。
懐かしさもあり、しばらくラグチューを楽しませてもらった。

 帰りは再び同じ道を戻った。「加羅倉尾根」ではあまりの心地よさに、しばらく腰を下ろして、もやにかすむ「上州武尊山」「尾瀬の山々」その奥の「谷川連峰」を眺めて過ごした。

 最後はゲレンデの下り、登ってくるときは感じなかったが、とても直滑降では降りられず、後ろを向いて這うようにして下山した。

「追記」
丸沼からの奥白根へのコースは思ったほどきつくはなく、むしろ静かな山歩きを楽しむには最高のルートだと思った。コースタイムもむしろ丸沼からの方が、早いとも感じられる。難点は加羅倉尾根の不気味なお地蔵様と、ゲレンデの下りと入ったところだ。

「記録」

 丸沼高原スキー場08:10--(.37)--08:47加羅倉尾根----(蛍塚山)----10:02加羅倉尾根--(.28)--10:30弥陀ヶ池分岐--(.04)--10:34七色平10:47--(.03)--10:50弥陀ヶ池分岐--(.25)--11:15座禅山12:08--(.16)--弥陀ヶ池分岐12:24--(.18)--12:42加羅倉尾根13:02--(.23)--13:25丸沼高原スキー場

                      群馬山岳移動通信/1997/



     丸沼