雨の中の偵察山行「温泉ヶ岳」   登山日1998年9月27日


温泉ヶ岳(ゆせんがたけ) 標高2333m 群馬県利根郡/栃木県日光市

ふたつの温泉ヶ岳山頂三角点
 群馬県と栃木県をつなぐ金精峠付近は奥白根山を盟主として、魅力的な山が連なっている。しかし、ほとんどが藪山で安易には近づけない状況にある。今回狙ったのは栃木県側の「刈込湖」「切込湖」の北にある高薙山だ。

 9月27日(日)

 栃木県側の、金精トンネル入り口の駐車場に車を止めて空を見上げる。空からは冷たい雨が絶え間なく落ちてくる。今年の秋雨前線のしつこさには本当に辟易してしまう。どうやら、今日のメンバーのうちで一番早くここに来てしまったらしく、しばらく車の中で待つことにする。

 ほどなく今日のパーティーのメンバーが到着して、出発準備に取りかかる。一番早く来たのに、もたもたしていたら私が一番最後になってしまった。雨具を着込んで、隊列が金精峠に向かって動き出す。

 次第に健脚な人と、そうでない人の差が開いてくるのは混成パーティーの常である。トップは、キリマンジャロ中山さん、兵庫の小川さん、金沢から来た小林さん、の3人が形成して猛烈な勢いで駆け上がっていく。

 その後は渋沢先生、清水さん、中島さん、そして今回仲間に加わった新人の4名が続いた。

 最後尾は当然軟弱な私と、それに付き合ってくれている猫吉さんだ。ここの道はかつては良く整備されていたらしく、その痕跡が見られるが、今ではそれがむしろ歩きにくくなってしまっている。なにしろ登山道整備に使った丸太が散乱しており、散々な様相を呈している。

 そうでなくとも急斜面で苦労する道なのに、丸太の障害物があるから悲惨である。前方からも悲鳴に満ちた声がひっきりなしに聞こえてくる。それほどきつい急傾斜である。雨具の中が汗でビショ濡れになってしまった頃に、やっと金精峠に到着することが出来た。

 峠には今日の目的のひとつである、神社の御神体にある。みな鉄格子の扉の隙間からしげしげとその立派なお姿に見とれてしまった。その後は全員で記念撮影して、その場でくつろぐこととなった。

 この後は、KXWはここから下山、私と猫吉さんは高薙山の偵察に、そのほかの6人は奥白根山を経由して菅沼へ行く予定だ。そのために3パーティに分散して別々に歩き出す。こちらは猫吉さんと二人だけなので、今までの賑やかさが嘘のように静かになった。

 道は刈り払いもされているところもあり、良く整備されていた。かつて根名草山に行ったときに、この道も歩いたはずなのだがあまり印象がない。もっともその時は腹痛に耐えながらの山行だったので、それどころではなかった事もある。

 雨具のガサゴソと言う音が、ちょっとうるさいが仕方ない。展望もない道をひたすら歩くと、登山道脇の木に取り付けられた板に、フェルトペンで温泉ヶ岳の方向が示されていた。それに従い、笹藪の中に踏み込んだ。

 意外なほど踏み跡が明瞭で、難なく山頂に到着した。

 山頂に着くと、今までの雨も小降りになり、展望が開けた。思いでの四郎山、燕巣山、尾瀬の山、そして目指す高薙山は間近に見えている。猫吉さんは16年ぶりに再会した達筆標識に感慨深そうで、横から後ろからいろんな方角から眺めていた。ここで不思議なものは三角点で、一メートル程度の間隔で並んでいるのだ。これは珍しいと、カメラに収めておいた。

 無線機を取り出し、スイッチを入れると、小川さんが五色山から呼んでいる。その後小林さんと交信して、QSLは確保できたので、私の無線運用はこれで中止となった。その後も猫吉さんは無線運用を継続、さらに後半ではなんと、前白根山に移った小川さん、小林さんと交信する事になった。彼らの足の速さは尋常ではない。つくづく今日は一緒に歩かなくて良かったと痛感した。

 さて、いよいよ温泉ヶ岳を下りて、高薙山の偵察に向かうことにする。なにか雨も小降りになり、ひょっとしたら高薙山に行けるかもしれないと言う期待を持った。しかし、結局は雨も再び激しくなり、あまりの藪の深さに退散することにした。

 帰りは白根温泉で、今日のメンバー全員が再び集結。次の再会を約束してそれぞれの方向に帰って行った。



「記録」

金精トンネル08:20--(.23)--08:43金精峠09:08--(.41)--09:49温泉ヶ岳分岐--(.12)--10:01温泉ヶ岳山頂10:56--(.06)--11:02分岐--(.43)--11:452274m標高点--(.53)--12:38金精峠12:47--(.16)--13:03金精トンネル



群馬山岳移動通信/1998/