シカのしゃれこうべを背負って佐久の山「女山」「横尾山」「高登谷山」   
                                        登山日2010年12月19日



横尾山(カヤトの原)から(左から横尾山・女山・後方に男山・天狗山・高登谷山)


横尾山(カヤトの原)から中央に瑞牆山。金峰山

女山(おななやま) 標高1734m 長野県南佐久郡/横尾山(よこおやま)標高1818m 長野県南佐久郡・山梨県北杜市/高登谷山(たかとやさん) 標高1846m 長野県南佐久郡




昨年の年末は佐久の男山に登った。さて今年の年末はどこに登ろうかと考えた。昨年が男なら今年は女が良かろうと佐久の女山に登ろうと思いついた。ネットで検索するがなかなか適当な記録が見つからない。しかし、地形図を見るとそれほど困難ではなさそうである。そこであらためて地形図を見ると近くには前から気になっていた横尾山がある。これなら周回登山が出来そうだ。それに近くにある高登谷山も登ることが出来そうだ。



12月19日(日)

「女山」「横尾山」

前日の畑作業の疲れを感じながら佐久の川上村に向かう。通いなれた道とは言え初めての山は道が良くわからない。いつものとおりだが登山口と駐車場所探しに苦労する。とりあえず信州峠まで行って見ることにする。峠には路肩に雪があるものの僅かなので気になる程ではない。周回を考えているので信州峠の駐車場女山まではちょっと遠い感じがする。そこで信州峠から佐久に戻って行くと、途中の左側に適当な場所があった。「ブナの森」と書かれたプレートがあり地元のライオンズクラブが整備したものらしい。しかし、その後の整備がされておらず荒れ放題と行った感じだ。車道から10m程は舗装されているので、そこに駐車する事にした、準備をして歩き出したのは7時半に近かった。みれば畑は霜で覆われて白くなっている。周囲の山々は山頂部分が橙色に染まり始め、冬の朝の輝きを演出している。

地形図を見ながら七森沢に沿って続く林道を目指す。この林道の入り口は金網のゲートがあり「無断入山禁止」とある。しかしゲートには施錠も無く自由に出入りが出来た。これは季節的な要因があるのかもしれない。林道は良く整備されており乗用車でもまったく問題なく走行できそうだ。地形図のとおりに橋を二つ渡り三つ目の手前に右から沢が流れ込んでいる。その沢に沿って荒れた林道が延びている。どうやらこれが女山に続いている破線の道に違いない。偵察のために林道横の尾根に入って見たが、踏み跡は直ぐに消えてしまった。



ここが今日の駐車地点

冬の朝は朝日が山頂を照らし美しい

七森沢に沿って続く林道入り口

ここが女山の取り付き点(尾根を登るのではなく廃林道を辿る)



それではと林道を辿って上部を目指すことにする。どうやら植林に使われた道らしくそれほど荒れてはいないので歩きやすい。ひょっとするとこのまま山頂まで行ってしまうのではないかと思われるほどだ。道はまっすぐ延びる沢から横にそれる事があるが、とにかく沢に沿って登って行く事にする。すると伏流水なのか、湧き水なのか解らぬがここから沢が始まっていると言う場所に着いた。湧き水であればなんとなく呑んで見たい気持ちになる。

しかしここで枯れ枝のようなものを見つけた。掴んで持ち上げて見るとそれは鹿の角である。それも頭蓋骨付きである。角にはワイヤーが縛り付けられているところを見ると、狩猟で倒されてここまで運ばれてきたものらしい。おそらく持て余してここに放置されたのだろう。般若の面のようでちょっと不気味だが、なぜか持って帰る気になってしまった。今までには西上州で一本拾った事があるのでこれで二回目と言う事になる。ザックにくくりつけると角がちょっとだけはみ出して、薮漕ぎではちょっと苦労するかもしれない。

ここから先も沢の様相で窪んだ地形が続いているが、左の尾根にトラバース気味に登り上げて山頂を目指すことにする。薮はそれほどひどくは無いが、結構急斜面なのでそれなりに苦労する事になる。まあ、適当に登って行けば山頂に行く事が出来るのは間違いないので気持ちは楽だ。時折吹きつける季節風は冷たく西高東低の気圧配置が強まっているのだろう。一旦尾根に乗ってその尾根を登る事にする。カヤトの原を抜けると山頂が近い。そのままほぼ水平に歩いて行くとそこが女山山頂だった。山頂には三等三角点があり、山頂標識などは見当たらなかった。しかし、12月4日にSKさんが登ったと言うことで立ち木に赤テープが巻かれてフェルトペンで書き込みがあった。こんな山に登るのは昔から限られているので、そのイニシャルから想像できる人物がいた。そういえば消息も途切れて久しい。山頂からの展望は無く立ち木の間から雪をかぶった八ヶ岳を似る事が出来るくらいだ。さしたる展望も無い事からこんな山頂は早々に立ち去る事にした。山頂からは赤テープもあったがそれに頼るよりも、往路を辿って戻る事を選んだ。



シカの角を発見

林道終点からトラバースして尾根に登る

女山の山頂

三等三角点

15日前に登った人がいた

ザックにくくりつけたしゃれこうべが不気味



ふたたび登山道に戻ると冷たい風が吹き抜けて寒さが身に堪える。さあ、これからどこを辿って横尾山にいこうか?地形図とにらめっこでこのまま林道を辿る事にした。すると右側に錆びたボンネットバスが放置されている場所に着いた。おそらく林業関係者の休憩所として使われていたものだろう。すでに窓ガラスは無くタイヤ部分は土に埋まって居る状態だ。そのボンネットバスから林道を挟んだ反対側にはなんとなく道形のようなものがある。これを辿ってみる事にする。ともかく、上部に向かって行けば何とかなることは間違いないから気持ちは楽だ。鬱蒼とした雑木林のなかの窪みを辿るような感じで登って行くが、この分では最上部で休憩者となる事は間違いない。そこで右側の斜面を這い上がって尾根を辿る事にした。しかし、尾根は笹薮となっており登りにくい。笹丈は腰あたりまでなのであまり気にならないが、ザックにくくりつけたシカの角が笹に引っかかって歩きにくい。なんでこんなものを拾ってしまったんだろう。後悔する事しきりで忌々しいとまで思うようになった。しかし、せっかくここまで持ってきたのだからと捨てて行く気にはならなかった。おもわず「しゃれこうげと大砲」の歌が口から出てきた。(風に吹かれ、雨にさらされて・・・・)そのうちに笹薮の中にけもの道が現れた。所々に有る糞をみるとっどうやらシカの道らしいことがわかる。しばらくは我慢の登りが続いて行くことになった。その笹薮も次第に薄れて今度は左に逃げるとなんと植林の刈り払いのある道となった。こうなればしめたもので目指す1670mの標高点は近いと感じた。

1670mの標高点に着くとそこは笹原で冷たい風が吹き抜ける場所だった。目の前には横尾山の語源ともなる横に長く連なった稜線が見えている。寒々としたこの標高点では休むわけにも行かないので、少し戻って風を避けてザックを降ろして大福もちを頬張った。この1670mの標高点には道があり、これを北に辿れば林道にいけるはずだ。



廃バス

こんなところを登っていく(シカはシダ類は食べないようだ)

笹藪だがあまりひどくはない

1670m標高点付近



案の定さしたる苦労も無く林道に到着することが出来た。この林道からの絶景にしばし見とれてしまった。それは雪を被った八ヶ岳が実に見事に見えていたからだ。青空に映える頂の雪は白く輝いている。このまま時間をここですごしてしまいたいと思うほどだ。この林道からどうやって横尾山に登るべきなのか地形図を見ればどこを登ってもさほどの差は無い事がわかる。すこし林道を進んだところから適当に登り始めた。


林道から見る八ヶ岳がすばらしい



ここの登りは薮も少なく適当に登って行くだけだった。時計の高度もどんどん上がって行くので気持ちがいい。そして上部に行くにしたがって岩場も増えてきたが、それほどの問題も無かった。林道から30分も登ったところで上部から鈴の音が聞こえてきた。さらに登ると目の前が開けて登山道に飛び出した。そこには鈴を付けたご婦人が歩いて行くところだった。幸いにもこちらには気が付いていないようだ。妙なところから出てきた登山者は不審者であることに間違いない。まして背中には般若のようなシカのしゃれこうべがくっついているのだ。その登山道から数分歩くと、先ほどのご婦人とほぼ同時に山頂に到着した。

山頂はいくつもの標識と三角点があり、展望は甲斐駒、北岳といった南アルプス方面が一望だ。八ヶ岳方面は雑木が多くあまりすっきりとは見えない。山頂の少し先のピークに行ってみたが展望はそれほどかわり映えしなかった。先ほどのご婦人はご主人と二人で来ていて、信州峠から2時間もかかったと嘆いていた。さて、ここで食事にするかどうか悩んでしまった。重たい思いをして鍋焼きうどん、ストーブ、ビールを持ってきているのだ。しかし、ここで食べてもなんのメリットも無いような気がする。それよりも車に戻ってからゆっくりと食べたほうが良いと判断した。



林道から横尾山への登り

横尾山山頂

瑞牆山。金峰山

信州峠



そうと決まれば、一直線に信州峠まで行ってしまおう。ほとんど水平に近い立派な登山道をどんどん歩いて行く。それにしてもこの道のなんとすばらしいことか。それは展望のすばらしさに尽きると言っていい。目の前の大展望は飽きることが無い。目の前の瑞牆山、金峰山の五丈岩も見える。左は先ほど登った女山から男山、右は北岳と飽きることがない。横尾山のメインはこのカヤトの原であるといっても過言ではないだろう。のんびりハイキングとはこの予名場所のためにアルのだろうと想う。

快適なカヤトの原を過ぎると、今度は一転して急な下降となった。中途半端に雪が残り油断するとスリップして尻餅をつきそうだ。山頂で一緒になったご夫婦は優雅にストーブでラーメンを作っていたが、それどころでは無いように思える。登り2時間で、帰りも2時間以上かかるに違いない。人ごとながら心配になってしまう。そんな急下降も次第に傾斜が弱まり信州峠が近いことを予感させられる。途中で犬を連れたご夫婦が登ってきたが、犬連れ登山を由としていない私にとっては、挨拶をする気にもならなかった。背中にあるシカのしゃれこうべが気になったのか、犬はしきりに私に吼え立てた。

信州峠に着くと、駐車場にはまだ余地があり数台の車が置けそうだ。あとは車道を辿って駐車地点まで歩いていくだけだ。


「女山」「横尾山」
ブナの森(駐車地点)07:21--(.13)--07:34林道ゲート--(.18)--07:52林道を離れる--(1.06)--08:58女山山頂09:07--(.39)--09:46林道--(.03)--09:49廃バス--(.46)--10:351670m標高点10:47--(.09)--10:56林道--(.03)--10:59林道を離れる--(.32)--11:31登山道--(.05)--11:36横尾山山頂11:48--(.25)--12:13カヤトの原--(.24)--12:37信州峠(車道)--(.10)--12:47駐車地点


群馬山岳移動通信/2010


トラックデータ





「高登谷山」

地形図を見ると、高登谷山へはマス目のような道のあるところから登るらしい。ともかくその場所に向かうことにする。車のシートにはカバーを取り付けて汚れたままで乗り込んだ。もちろんシカのしゃれこうべはザックから取り外して、座席下におくことにした。登山口になると思われる最高地点まで、車のナビを頼りに目指していくと、マス目のような道は別荘地であることが分かった。関係者以外立入禁止の表示もあるが、山登りのためなら言い訳も聞くだろう。どんどん上部を目指していくと、別荘bR46の地点で舗装が途切れて「ここは転回場所に着き駐車禁止」と書いてある。しかしその先は未舗装の広い駐車よりがそこにあった。ここから見る高登谷山は山頂部分が険しく岩峰の様になっている。この姿を見ながら傾き掛けた太陽を瀬に受けながら、女山と横尾山を背負って歩いてきた鍋焼きうどんを作ってビールを呑んだ。暖かいものを口に入れただけで何となく幸せな気分になるから不思議だ。



高登谷山がくっきりと見える

駐車地点(かなり広い)

駐車地点から高登谷山の岩峰

登山道があるじゃん



さて、ここからどうやって登ろうか?地形図を見ればどこから登っても良さそうな感じがする。しかし、とりあえず尾根を辿るのが常道なので、山頂に向かって直登せずに左にすこしトラバースして尾根に取り付くことにした。落ち葉の斜面をサクサクと音を立てながらトラバースしていくと尾根にたどり着いた。そこにはなんと立派な道があるではないか。それに、登山道と書かれた標識まである。これならまったく問題ない、地形図に記載はないがとりあえずは一安心、おまけに黄色のペンキマークまである。

尾根に沿って続く道はしっかりしているのだが、周囲は雑木に囲まれて展望がなかなか得られない。おまけに傾き掛けた冬の太陽が高度を下げて西方面の状況が分かりにくかった。尾根道は一旦右に曲がってから再び上部に登っていく。すると、カヤに囲まれた山頂に飛び出すことになった。山頂からの展望は得られずに木々の間から特徴的な岩峰を並べた瑞牆山と金峰山が見える程度だ。高登谷山一帯を見ると、三角点のある1847mよりも東にある1862m峰のほうが高い。双耳峰として考えるならば明らかに1862m峰の方が山頂と考えるべきだろう。そこで、足を延ばしてみることにする。一旦鞍部に降りてから再び登り上げるのだ。不思議なことにこのあたりは有刺鉄線が張られており、これが何を意味しているのか不明だ。おそらく野生動物に対する対策なのだろう。三角点峰から10分程度でそのピークに達することが出来た。こちらのほうが展望は優れているようにも見えるが、期待したほどではなかった。それでも瑞牆山の姿はこちらの方がハッキリと見えていた。

ザックを降ろし、防寒着を着込んで金峰山を眺めながらどら焼きを頬張った。しかし、寒さでゆっくりすることもままならず、早々に下山することにした。このピークからもわらび荘に下山することも可能だが、駐車地点まで戻るのに遠くなってしまう。そこで、三角点峰との鞍部から一気に下降することにした。



新調した熊避け鐘(期待したよりも音が小さい)

高登谷山山頂

1862m峰から瑞牆山

1862m峰から天狗山

下降点はこんな感じのところ

灯明の湯



鞍部から下を見ると、どうやらカラマツの植林地となっている。これなら大丈夫と確信を持って一歩を踏み出した。道はないがそれほど困難な道ではない。窪んだ場所に沿って下降するが、高度計の数値がどんどん減じていくのがわかる。さらに下ると炭焼き窯の跡もあり、生活がここで行われていたことが分かる。さらに下ると、新しい植林地に飛び出して配水設備の横を過ぎると、そこが駐車地点ぴったりの場所でほっとした。

帰りは灯明の湯で汗を流してゆっくりと帰宅した。


「高登谷山」
駐車地点13:43--(.07)--13:50尾根(登山道)--(.43)--14:33高登谷山山頂14:37--(.13)--14:501862m標高点14:57--(.08)--15:05下降点--(.15)--15:20駐車地点



この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。
(承認番号 平16総使、第652号)
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