意外と難しい「椀名条山」「氷室山」   登山日1997年1月18日


椀名条山(わんなじょうやま)標高1052m 群馬県勢多郡/氷室山(ひむろやま)標高1123m 群馬県勢多郡・栃木県安蘇郡
椀名条山山頂
 1月18日(土)

 この時期になると、正月気分もなくなり落ち着いてくる。ここはひとつ早起きをして、草木湖付近の山に向かうことにした。

 早朝のために通常は3時間あまりかかるところ、約2時間と、比較的早く草木湖に到着した。草木湖を通過して、さらに標識に従って「黒石坂キャンプ場を目指す。路面は凍結しているので、慎重に奥に進んでいくと、やがてキャンプ場に到着、さらに進むと三叉路の分岐に神社があった。右の方向には根本山登山口の標識があり、除雪のしていない道が続いている。三叉路の左に駐車余地があり、車はここに駐車して置くことにした。

 車から離れて、林道をさらに奥に向かって歩く。凍結した車道はなかなか歩きにくいもので、なるべく踏み固められていない場所を選んで行く。やがて左に民家が現れて、朝餉の支度の煙が立ち上っていた。そこからさらに先に行くと、左にログハウス風の民家があり、その手前に小さな橋が架かっていた。地形図によれば、このあたりから破線が表現されている。それらしき道は見あたらないが、ともかくここに派生している尾根の末端に、取り付けばなんとかなりそうなので、小橋をわたらずに斜面に取り付いた。

 尾根上はヒノキの植林と、藪の混在した歩きにくい場所だった。それでも積雪があるのでさほどの困難は感じられない。額に汗がにじむ頃に、尾根上にある、松の大木に到着した。ここから先は鬱蒼とした、植林の林が広がっていた。そしてその植林されたヒノキの幹には、赤テープが何カ所もつけられていた。それは右下から登ってきているところを見ると、キャンプ場あたりから直接登って来ているのかも知れない。

 松の大木からは実に明瞭な道が尾根上につけられており、迷うことはなさそうだ。積雪は尾根の北斜面は真っ白で10センチ程度、南斜面は所々落ち葉があらわれている程度だ。天候はまずまず、ときおり冷たい季節風が吹いてくるが、さほど気にならない程度だ。標高884メートルのピークの手前の鞍部で、「黒坂石−椀名条山」の標識が、足下に近いところに置いてあった。

 尾根上の道には実に様々な、動物の足跡が雪の上に残されていた。ほとんどがイノシシで、まれにシカやウサギの足跡が見られた。念のためにザックに鈴を、胸ポケットにはホイッスルを入れて置いた。目の前には椀名条山が、本当にお椀を伏せたような形で見えていた。

 忠実に尾根を進むと、やがて雑木に囲まれた椀名条山山頂に到着した。きれいな三角点と、おびただしい山頂標識が迎えてくれた。山頂標識は数えてみると、なんと5枚もある。なかでも「達筆標識」は目立つ位置にあり「椀名條山」と書いたこだわりが目を引く。残念ながら「KUMO」は探したが確認することは出来なかった。展望は木々の間からまわりの山を推定して見るくらいである。430Mhzで1局QSOして椀名条山から、県境尾根に向けて出発することにする。

 ここからの尾根道は、さしたる変化もなく、展望もなく、標高差のないピークをだらだらと歩く。唯一、県境尾根付近の山並みが間近に迫ってくるのが救いだ。標高1022メートル付近のピークを越えたあたりから、踏み跡があらわれてきた。人の踏み跡に混じって、犬の足跡もあるところを見ると狩猟の目的の人のものらしい。犬の足跡は尾根から離れたり戻ったりと、なかなか元気がいい。

 そして、県境尾根に登りあげたところで、道は大きく右に分岐した。傍らには石祠が良い道しるべとなって笹の中に埋もれていた。そして分岐から少し進むと東側の展望が急に開けた。それは最近植林されたばかりの斜面が、広がっていたからだ。さらに下からの道があるらしく、ここから俄然踏み跡がしっかりしてきた。複数の人間、それもかなりのパーティーのものと思われるほどしっかりしている。

 さてここからは小さなピークを確認しながら歩くことにする。道を離れて稜線に登りピークを越えながら歩くと、木には小鳥の巣箱がかけられている。中を見たが営巣したものはなさそうだ。そして杉木立の薄暗い高まりに立つと、直ぐ下に神社の灯籠が見えた。地形図で確認すると、どうやら此処が氷室山らしい。山頂標識は全くないし、杉に囲まれて展望もない、あまり気分の良いところではない。神社におりてみると、子供の玩具らしきものが置いてあったりする。あまり観察する気持ちにもならない場所だ。ともかくロケーションは良いらしく、3局QSOして、さっさと腰をあげる事にした。

 さらに先に進むと、道は分岐する。左は「大荷場、三滝」と読める。さらに右の笹藪の中にも標識があり、かすかに「黒石坂方面」の文字が見えた。目指すは根本山方面なのでそのまま直進することにする。すると道は再び1154メートル峰と、そのピークを巻くものに分岐する。もちろんピークを目指すことにする。

 1154メートルのピークは、これまたきれいな三角点と山頂標識が2枚あった。この山にも山名がつけられているらしく、「宝生山」といずれの標識にも記入してあった。しかし、その中の一枚は外見が「達筆標識」そのもので、山名は消されて後からフェルトペンで書かれているのだ。いずれにしてもこの標識の前で記念撮影をしておくことにした。このピークは実に気持ちの良い場所で、日当たりも良く、今回の山行で唯一くつろぐことが出来た。ゆっくりお湯を沸かし、暖かいラーメンを煮込んで食べた。

 この山頂を後にして、再び歩き出した。ここからはさしたる登りもなく、明るい日差しを浴びながら順調に進むことが出来た。そして今度は黒坂石への分岐を探しながら歩いた。途中に「氷室」の標識があり、そこからわずかに登りあげたところに「黒石坂方面」の標識が立ち木の枝に取り付けられていた。踏み跡程度の道がわずかに見られたが、ほとんど歩かれていないと思われた。それでも雪の上に人の足跡が残っていた。

 分岐から登りあげて、明瞭なピークに立った。さて、ここからいよいよ下降である。尾根を外さなければ問題無い筈であるので、コンパスの方向は尾根の末端に合わせて置いた。実際に下ってみると、赤テープと先行者の足跡が一致しているので、その後を追いかければ問題なさそうだ。途中でどうにも危ないところがあらわれたので、念のために軽アイゼンを装着した。

 順調に尾根を辿って行くと、なぜか消えかけた標識が、目の前のピークを巻くように枝にかけられていた。先行者の足跡もその標識の下をくぐって、先に進んでいた。ちょっとおかしいなと感じながらも、その後に続いて斜面をトラバース気味に歩いた。ところがいつしか赤テープは消えて、先行者も斜面を登って再び尾根に戻っている。さてどうしたものかと疑問に思いながらも、あたりを見回すと枝尾根に続く木に赤テープが付いている。さてこれが正規な道なのかと思いながら、その枝尾根を下ってみることにした。もちろん先行者は忠実に主尾根を下っている。慎重にあたりを見ながら下っていくが、どうもおかしい。地形図の破線の様子と、違うのである。

 迷ったかな!

 再び主尾根に向かって登ることにした。(登れば何とかなる)ところが主尾根に着いたがどうも分からない。このまま先行者に続いて主尾根を下るか、もしくは標識のあった場所まで戻るかである。そして意を決して、再び標識のあった場所まで戻ることにした。

 戻って再び標識をじっくり見ると、なんとその標識には矢印が付いているではないか。この標識はくぐるのではなく、方向を示していたのだ。矢印の方向には雪に埋もれてはいるが、道と思われるものが斜面に付いている。地形図を見るが、どうもこの道は地形図の道とは違うようだ。しかしこの道に賭けるしかない。

 雪に埋もれた道は道はジグザグに下っていく。それもだんだんしっかりしてくるので、スピードも早まってくる。そして小さな沢筋に出て、さらに下ると林道に飛び出した。下降点からわずか10分であった。林道脇には小さな沢があり、雪解け水が流れていた。それを手ですくって飲むと、緊張感から解き放たれたためか、その冷たさからか目眩がした。

 そして長い林道をイヤと言うほど歩いて黒坂石キャンプ場に戻った。



「記録」

 黒坂石キャンプ場07:19--(.06)--07:25藪に入る--(.21)--07:46松の大木--(1.10)--08:56椀名条山09:25--(1.03)--10:28県境尾根--(.20)--10:48氷室山11:00--(.04)--11:04大荷場分岐--(.10)--11:14宝生山12:00--(.24)--12:24黒坂石分岐--(.56)--13:20下降点--(.10)--13:30林道--(.49)--14:19黒坂石キャンプ場


                   群馬山岳移動通信 /1997/