北アルプスに入門「合戦沢ノ頭」「燕岳」「北燕岳」 
                                          登山日2012年6月30日



北燕岳からの大展望


合戦沢ノ頭(かっせんさわのかしら)標高2488m長野県安曇野市・大町市/燕岳(つばくろだけ)標高2763m長野県安曇野市。大町市/北燕岳(きたつばくろだけ)標高2750m長野県安曇野市・大町市


足の調子も今ひとつ。完治の見込みもなかなか目途が立たない。こんな時は無理をしないで楽しめる山に行きたい。そういえば、北アルプスの山域はほとんど踏み込んだことが無く、その中で代表的な入門コースとして燕岳が紹介されている。ここならば、道もしっかりしているだろうし、さほど無理ではないと思った。ただ、「北アルプス3大急登」のひとつ合戦尾根があるというのが気になった。
仕事が終わってから、登山口の中房温泉を目指す。穂高町からの林道は狭く、ヘアピンカーブも連続しており緊張する。この道はすれ違いをどうするのだろうかと、早くも帰りのことを心配してしまった。自宅から3時間程度で中房温泉手前の登山者用の駐車場に到着。駐車場は第一、第二、第三と分かれている。第一が一番大きく、登山口に近い。しかし、見ればなにか混雑して居心地が悪そうだ。そこで、第二駐車場に停めることにした。第二駐車場は、三段になっていてそれぞれ10台程度駐車可能だ。1段目は2台、2段目は1台、3段目は駐車無しであった。とりあえず2段目の駐車場に駐車した。車中泊の準備をしてから、外に出てビールを呑んでから就寝。


6月30日(土)

朝4時半頃、周囲の騒がしさで目を覚ました。予定をオーバーして眠ってしまったようだ。慌てて出発の準備を始める。谷間にある駐車場であるが、周囲はすっかり明るくなり、歩き始める人も出てきている。第二駐車場の一段目はすでに満車状態でマイクロバスなども入っていた。カップラーメンを食べてからいよいよ出発だ。

第二駐車場と第一駐車場は距離的にはほとんど変わりなく、第一駐車場の混雑具合を見ると第二駐車場に駐車したことは正解だったらしい。車道を登っていくと中房温泉の広い駐車場に到着。ここは温泉の利用者だけしか利用できない。こんな早朝にもかかわらず係員が立っていた。トイレに立派なトイレに寄ってから、いよいよ歩き出す。案の定、良く踏まれた道で所々に設置してある木製の階段は老朽化が著しい。歩き始めはなかなかペースが上がらず、数人に追い越されてしまった。負け惜しみを言うようだが、みんな軽装で快適そうである。こちらは水を3リットル、着替え、雨具、軽アイゼンまで持っている。どうみても、北アルプス日帰り登山のスタイルではなさそうだ。それに、服装が皆さんカラフルで、登山靴は泥さえも付いていないような人が多かった。

第一ベンチは樹林の中にある広場だった。水場の標識があるがどのくらい先にあるのか不明なので、確認もしなかった。(あとで聞いたら数歩で水場、それもおいしかったとのこと)ひっきりなしに登山者が到着し休んで行く。展望もないのでザックを降ろすこともなく、立ち止まっただけで先に向かって歩き出す。相変わらず展望のないジグザグの道を、ひたすら登っていく。変化に乏しい登山道が延々と続く。

「頭上注意」と書かれた単管パイプの櫓を過ぎると第二ベンチだ。どうやら先ほどの櫓は合戦小屋にスイカを運ぶ索道だったらしい。ここも展望はなく休む気にもなれない。再び歩き出して第三ベンチ、ここも展望はない。その次の富士見峠に着くと、そこからは雲の上に青く山頂部分を出した富士山が遠望できた。ここに来てやっと展望のある場所に出た感じがした。しかし、その後も樹林の道は続き、ひたすら登る事になる。

「合戦小屋10分」の標識がでると道は緩やかになる。さらに「合戦小屋5分」の標識がでると鼻歌気分で登ることができる。そして今までの樹林で狭められた視界が一気に開け、合戦小屋の広場に到着した。朝の日射しが眩しい、爽やかな場所だった。まず目についたのは名物のスイカである。まあ、これを食べなくちゃ!!早速八分割のスイカを800円で求める。なんでも今日が販売初日で、今年10人以内に入るお客だそうだ。トレーに乗せてもらって、塩は使いたい放題とのこと。塩分補給も兼ねてたっぷりと振り掛けて味わう。旨い!!スイカってこんなに旨いものだと始めて知った。冷たくてみずみずしくて、甘くて塩味のスイカは山にはピッタリだ。あっという間にスイカは皮だけとなってしまった。満足!満足!



道はしっかりとしており、階段がある

富士見ベンチからは本当に富士山が見えた

イワカガミの咲く道

こんな標識は嬉しい

合戦小屋到着

スイカを食べなくちゃ



合戦小屋からは所々残雪の残る道を歩くことになる。次第にあこがれの槍ヶ岳が姿を現すようになると、疲れが一気に吹き飛ぶ感じだ。名残のヤマツツジを見ながら三角点がある「合戦沢ノ頭」に到着。ここは素晴らしい展望だ。これから登っていく合戦尾根の先に燕山荘の赤い屋根が見えている。ここが急登なのかと見つめてみるが、それほど急には見えない。先ほどの合戦小屋で休んで間もないことから、このまま合戦尾根に取り付いた。



合戦沢ノ頭

合戦尾根の先に燕山荘

合戦沢ノ頭からの展望

槍ヶ岳は目立つ

合戦尾根の残雪

燕山荘手前に咲くサクラ

燕山荘

燕山荘玄関

燕山荘の庭から燕岳



残雪の道はステップが切ってあり登りやすい森林限界を越えているので展望は申し分ない。梅雨のさなかではあるが、天空は青空が広がり飛行機雲が乱れることなく一直線に横切っている。時折、下山してくる人たちとすれ違う。高齢の方が多く燕山荘泊まりなのだろうが何とも羨ましい山行である。登るに従って合戦沢ノ頭が次第に眼下に小さくなり、頭上には巨大な燕山荘の姿が近づいてくる。槍ヶ岳は次第に目の前の稜線からせり上がってくる感じだ。名残のサクラを見ながら砂礫の道を登りきると、燕山荘の一角に到着することが出来た。山荘前には大きな雪の塊がオブジェのように置き去りにされていた。


山荘のベンチに腰を下ろし風景を眺める。今まで群馬の寂峰を登って来たので、この雄大な景色は異次元の世界に等しく眼に映る。いままで北アルプスになんとなく、嫌悪感を抱いていたのだが、それが何となく消えていくような気がした。ゼリー飲料を飲み干してから、ともかく目的の燕岳を目指すことにする。

それにしても、風化した花崗岩の作り出す風景と、花崗岩の崩れた砂礫が敷き詰められた稜線はなんと美しいのだろう。白い砂礫の斜面は雪とも見間違えるほどだ。その白い砂礫の中に絶妙な配置でハイマツがアクセントになっている。常に360度見渡せる残雪の山々は、時間が過ぎていくことが惜しくなる。何度も立ち止まっては目指す燕岳の鋭峰と周囲の景色を堪能する。歩くスピードも極端に遅くなるが仕方ないだろう。



まるで白い砂浜

イルカ岩

白い砂礫の道は続く

不思議な世界だ

槍ヶ岳、笠が岳、鷲羽岳、水晶岳、野口五郎岳、三ツ岳、烏帽子岳そして目指す燕岳

ハクサンイチゲ

ミヤマキンバイ

窓岩

この石、転がり落ちないのかな

燕岳山頂直下

燕岳山頂


燕岳山頂には途中で追い越された単独行の女性が、景色を眺めていた。そして、合戦尾根から前後して登っていたカップル(親娘に見える)がすぐに追いついてきた。狭い山頂はそれだけでも窮屈な感じがするほどの広さだった。単独行の女性にカメラを預けて記念撮影をしてもらった。4人でなんだかんだと話していると、すぐ先にある北燕岳に行こうとでなんとなくパーティーが出来てしまった。山頂は狭いし、次々に登って来る人もいる。そんな中で、隣の駐車スペースに朝方車を停めた練馬ナンバーの人と話すことになった。まあ、登る時間がそれほど違わなかったから当然かもしれない。


北燕岳への道も快適だった。コマクサの群落はあったがまだ咲いてはいなかった。あと数日と言ったところだろう。北燕岳の最後の登りは岩場になっており、ちょっと緊張するが、手がかりは十分あるので問題はない。4人でこの山頂を独占して展望を楽しむ。再び単独行の女性にシャッターをお願いする。こちらもお返しに記念写真の三脚となって彼女のカメラのシャッターを押した。時刻はまだ早いので燕山荘まで戻って昼食にすることにする。



北燕岳に向かって行く、遠方に剱岳

北燕岳から燕岳を振り返る。(中央に槍ヶ岳)



ゆっくりと、ゆっくりと山荘まで戻ると、テーブルがちょうど空いた。すぐさまザックをテーブルに置いて腰を下ろした。昼食の準備をしていると、隣のテーブルに先ほどまで一緒だった単独行の女性が座った。聞けば名古屋から来ているというが、単独で若い女性が山に来ているというのも、群馬ではなかなか見られない。そのうちに「隣に座っても良いですか」と同年代のカップルがビールの大ジョッキを持ってやってきた。こちらは350ccの缶ビール。ちょっと引け目を感じるがまあいいだろう。ふたたび即席のパーティーでのささやかな宴会だ。北アルプスに全く知識のない私は見える限りの山々の名前を教えてもらった。お礼に、自家製のカリカリ梅を差し出すと、これまたお礼にサクランボをいただいた。こんな事をやっていたらあっという間に1時間が過ぎてしまった。



帰路、燕岳は山頂を通過せず巻道を通る

コマクサはまだつぼみ

燕山荘の裏にあるゴリラ岩

やっぱりビールと焼そばパン



さあ、あとは下るだけだ。皆と別れてザックを背負った。合戦尾根を下り始めてから合戦小屋までは長野市から来た単独行の男性と話をしながら、ゆっくりと下った。これも又楽しい時間であった。合戦小屋からは完全に一人旅で、一気に中房温泉に下ったが、うるさい虫がまとわりついて、立ち止まると顔の周りを取り囲む。登って来る人を見ると、ブヨ、蚊、ハエが球形の霞のように取り巻いている。まあ恐ろしい光景である。特に標高1900m付近は最悪だった。


中房温泉に着くと、隣に駐車した人と偶然に再会。再び話をしながら駐車場に揃って到着。ともかく足はなんとかこの山では持ちこたえてくれた。本格的な復活は無理だろうが、この程度の入門コースならば何とかなりそうな目処が付いたことは、収穫だった。



「記録」
第二駐車場05:13--(.11)--05:24中房温泉--(2.24)--07:48合戦小屋08:12--(.15)--08:27合戦沢ノ頭08:31--(.42)--09:13燕山荘09:23--(.35)--09:58燕岳10:02--(.16)--10:18北燕岳10:25--(.28)--10:53燕山荘11:40--(.43)--12:23合戦小屋12:30--(1.25)--13:55中房温泉--(.11)--14:06駐車場




沿面距離15.2km



群馬山岳移動通信/2012