信仰の山を歩く「秩父三峰山」 登山日2005年3月26日



三峰山(みつみねさん)標高1120m 埼玉県秩父郡/妙法ヶ岳(みょうほうがたけ)標高1329m 埼玉県秩父郡/霧藻ヶ峰(きりもがみね)標高1523m 埼玉県秩父郡/前白岩(まえしらいわ)標高1776m 埼玉県秩父郡/白岩山(しらいわやま)標高1921m 埼玉県秩父郡

山仲間の集まりが奥秩父で開催されることになった。宴会は夕方からなので、それまで秩父三峯の周辺を歩いて時間調整を行うことにした。
三峯神社の駐車場に到着したのは6時半頃であったが、駐車している車は3台程度で、閑散としていた。駐車場からは、朝日に染まる和名倉山が谷を挟んで大きく迫って見えた。支度を整えて歩き出すと、妙にそのことだけでうれしい。それもそのはずで、今年になってまだ2回目の山行で本格的な山歩きは久しぶりである。歩き出すとすぐに保存された古い民家がある。しかし、生活感がないからなんともここにある事に違和感を覚える。さらに歩くとコンクリート舗装された遊歩道にでる。道の両側は杉木立に囲まれて射し込む光も少なく暗さを感じる。ほぼ水平に続く道を歩くと道が分岐する。

三峯神社駐車場からの和名倉山立派な道


 そのまま直線に続くのは白岩山を経て雲取山に続き、左は妙法ヶ岳に続く道である。まずは妙法ヶ岳を登っておくことにする。鳥居をくぐり、舗装こそされていないが広い道に入る。道の脇には10年ほど前に騒いだ過激な宗教団体を対象にした看板が設置されている。道はそのまま登っていくが、やがて残雪が凍結して滑りやすくなってきた。アイゼンを付けるほどでもないので、そのままストックを頼りに歩く。
 それなりの急登であるが、ちょっとした広場にたどり着く。そこからは雪のへばりついた斜面のトラバスになった。ここでアイゼンを付けようと思ったが、面倒なので結局はそのまま進むことにした。かなり危険かなと思ったが、思ったほどではなく、東屋のある広場に出た。ここにも鳥居があり、信仰の山であることが伺える。

 鳥居をくぐり、アップダウンを繰り返しながら道なりに歩く。鎖や階段が所々に設置されているので、安心感はあるが、雪が乗ったところではそれなりの緊張感が伴った。急な岩稜に付けられた階段を登ると、立派な社のあるピークに飛び出した。ここが、三峯神社の奥の院である妙法ヶ岳であった。展望はすばらしく、両神山の先御荷鉾山 までの山群は特徴あるピークばかりで見ていて楽しい。振り返ればこれから向かう霧藻ヶ峰を中心に、大きく右に屈曲する稜線が特徴的に望める。

奥の院入り口妙法ヶ岳山頂


 妙法ヶ岳を辞して、先ほどの東屋のある鳥居まで戻る。ここで今後の凍結した道を予想して、アイゼンを装着した。先ほどは右から登ってきたが、今日の目的地である白岩山に向かって、今度は左の道に進路をとる。雪の斜面を登り詰めると、ほどなく下りとなり雲取山に続く道と合流する。炭焼平と呼ばれる場所を過ぎると、徐々に雪が深くなってきた。そして地蔵峠あたりまで来ると、すっかり周囲は雪景色となった。地蔵峠の手前には小さな祠に赤いちゃんちゃんこを着た地蔵が入って、祠の前には鈴が数個ぶら下がっていた。すると、若い登山者がひとり追いついてきて、その鈴を手で鳴らしてから、そのまま雪の斜面を風のように登っていった。
 地蔵峠からさらにわずか登ると展望の良い場所に出た。ここには三角点があり、雪の中からタケノコのようにちょっとだけ飛び出している。ここが霧藻ヶ峰で、ここからちょっとだけ歩いたところに人工的な岩場がある。この岩には秩父宮殿下ご夫妻のレリーフが埋め込まれていた。しばらくこのレリーフのいわれと、霧藻ヶ峰の名前の由来を読んで過ごした。そのすぐ脇には霧藻ヶ峰休憩所があった。かなり立派なもので山小屋としても充分通用するものだ。

地蔵峠秩父宮殿下のレリーフ
霧藻ヶ峰


 この休憩所から、雑木林を下るとわずかな時間でお清平と呼ばれる広いコルに出る。このころから風が強くなりコルは風の通り道になっていた。さすがに寒くなり、ヤッケを着込むとやっと暖かくなった。このコルから先は急な登りとなり、息を整えなければ登れなくなってきた。鎖場もあり、ちょっと緊張する。しかし、それもわずかで、雪の原を快適に登ることになる。
 前白岩の肩でちょっと休憩、あんパンを2個頬張って一息入れた。休憩後すっかり雪が深くなった樹林の中をじりじりと高度を上げた。ほどなく和名倉山が正面に大きく見える前白岩山に到着。目指す白岩山も樹林の隙間から見えている。前白岩山からさらに息を切らしながら登ると、雪に埋もれた白岩小屋に到着。小屋は煙突からの煙もなく人の気配が無くひっそりとしていた。小屋の入り口の雪は踏み跡が残っているので、利用した人があったのかも知れない。GPSを見ると目の前の斜面を登れりきれば白岩山に到着するようである。日射しも出て雪の斜面が眩しいが、これもまた春山の雰囲気が出ていて楽しい。

白岩小屋前白岩


 樹林帯の道はジグザグになっており、それだけ緩やかである。梢にはまだ雪が残っているところを見ると、最近降ったものなのだろう。この奥秩父の1000m程度の山で、これだけ雪にあえるとは予想外であった。それだけにこの雪の感触がたまらなくうれしい。傾斜が緩くなったところで、突然に樹林が開けダケカンバの幼木の疎林になった。ここには地蔵峠で追い抜かれた登山者がベンチで休んでいた。道から少し離れたところに白岩山の標識があり、ここで記念撮影をしてベンチのあるところに戻った。先ほどの登山者は荷物をまとめているところだった。聞けば雲取小屋まで行くそうである。その雰囲気から、小屋の従業員かな?とも思われた。時間も早いし、ここまで来たのだから雲取山まで行ったらどうかと勧められたが、体力的に無理だと答えた。
 ベンチに腰掛けビールを取り出して、明るい日射しの中で一口呑むと何とも言えない充実感を味わった。

白岩山山頂三峯神社の風呂で頂いたタオル


 三峯神社に戻り、境内にある温泉に入った。なんと大浴場に一人で貸し切り、タオル付きで500円は安い。それにシャワーの湯量が豊富で、まことに贅沢な気分を味わった。

「記録」
三峯神社駐車場07:05-(.09)---07:14分岐--(.49)--08:03妙法ヶ岳08:17--(.29)--08:46分岐--(.32)--09:18地蔵峠--(.03)--09:21霧藻ヶ峰--(.08)--09:29霧藻ヶ峰休憩所--(.13)--09:42お清平--(.47)--10:29前白岩の肩--(.15)--10:44前白岩--(.16)--11:00白岩小屋--(.27)--11:27白岩山11:47--(2.57)--14:44三峯神社駐車場

 

地形図



群馬山岳移動通信 /2005/