GPSの威力を実感「浅松山」「田代山」  登山日2000年6月9日


浅松山(あさまつやま)標高1290m 群馬県利根郡/田代山(たしろやま)標高1351m

6月9日(金)
浅松山の登りで休憩
 都合により、しばらく山から遠ざかっていたが、やっと山に行ける環境が整ってきたので、いつものパートナーである猫吉さんを誘っての山行を計画した。しかし、当初の計画は、あいにくの雨のために実行できなくなってしまった。それでは山の近くで酒でも飲んで過ごそうと言うことになり、雨の関越道を北に向かった。

 ところが「赤城SA」で待ち合わせていると、なにやら薄日が差し込むようになってきた。こうなるとどこかの山に登らないと気がすまなくなってくる。急遽、地図を取り出して周辺の山を物色する。当初、今年の2月に敗退した雨乞山が候補になったが、より困難を予想される田代山を浅松山経由で行こうと言うことになった。

 浅松山は、かつて猫吉さんは途中で時間切れのために敗退した経緯がある。私は子供と二人でゆっくりと時間をかけて登っている。

 まずは浅松山に少しでも近づこうと、適当な林道を見つけることにした。地形図を見ると、中野ビレッジの正門前から右に折れて続く道が確認できる。さっそくその道に入ってみると、とんでもない悪路で猫吉さんのデリカはともかく、私の車ではかなりの困難を伴った。慎重にコースを選んで、先に進むが帰路のことを考えると不安になってくる。

 やがて道は行き止まりとなり、進むことが出来なくなった。適当な余地に駐車して、出発の準備に取りかかった。すると時を同じくして、空から雨が降り始めてしまった。しかし、ここまで来て止めるわけにも行かないので、車の中を引っかき回して装備を整えた。

 こんな日は傘をさして登るのが、蒸れもなく最適だ。その代わりにステッキを持つことが出来なくなってしまうが、それも仕方ないことだ。車から離れて、沢の左岸の荒れた道を辿ると、すぐに沢を渡渉して対岸に渡る事になる。そこには朽ち果てた小屋が草に埋もれて傾いていた。

 さらにそこまでは新たな林道が延びてきており、道を左にとった。すると数10メートル歩いたところで、標識にたどり着いた。ここが浅松山に登る登山口となる場所だ。若干の休憩後、私が先頭で傘を差して登りはじめた。沢沿いの鬱蒼とした杉林の中を、黙々と登る。相変わらず猫吉さんはスタートのエンジンの掛かりが遅く、次第に私との距離が広がっていく。やがて視界から消えて、単独行のような形になった。

 道は展望のない急な登りをひたすら登るだけだ。雨の中の登りは湿度が多く、それだけでも憂鬱な感じであるが、それにも増して久しぶりの山歩きに、私の気分は晴れ晴れしていた。

 登り初めて約1時間、傾斜が緩くなりやっと一息付ける場所に着いた。そこに咲いているツツジを眺めてしばらくいると、猫吉さんが到着して、開口一番「こんなきつい登りは、群馬の山でも5番以内に入る」と言った。どうやら今日は体調が良くないらしく、疲れが出ていると感じた。ザックから真っ赤なトマトを2個取り出して、一つを私に差し出した。私は普段トマトなんて食べないから、これを持ってくる発想が浮かばない、しかし山では塩を付けて食べると実に旨いから不思議だ。

 若干の休憩後、緩やかになった山道を快適に登り上げると、程なく休憩所に到着した。立派なトイレが2基設置されて、内部は清潔で手入れが行き届いてる。ここから浅松山の山頂は間近であるので、休憩もしないでそのまま歩いた。
浅松山山頂
 浅松山の山頂は大きな立派な標識があるが、それ以外は展望もなく休憩する場所さえ無かった。それに雨が降っているので、落ち着ける筈もなかった。既に私はこの浅松山での無線運用は済んでいるので、早々に近くの東屋に逃げ込むことにした。猫吉さんはこのまま山頂で無線運用を行うというので、一人で10分ほど先にある東屋に急いだ。

 東屋の中は快適でここで簡単な食事を済ませながら猫吉さんを待った。猫吉さんはJF9DJF/小林さんと交信できたが、途中で尻切れになったらしく、東屋に到着後も何度か呼んでみたが連絡は取れなかった。時折、雲の切れ間から上州武尊山が見え隠れしたのがこの東屋からの唯一の展望だった。

 さてここから田代山に向かうのだが、果たしてどのコースを取ることが最適なのか、まだ決めかねていた。とりあえず、地形図上の林道を進み、破線の登山路と交わったところから、登山路を辿ることにした。

 まずは林道を歩くのだが、既に廃道になってからしばらく経っているらしく、雑草がかなり育っており、歩くのがちょっと嫌になるほどだ。私は雨具のズボンだけ、猫吉さんは雨具の上を着て歩き出した。
田代山に向かって林道を歩く
 林道から破線の道に入る場所は、すぐにわかった。破線の道は明瞭な道としては残っておらず、植林境界の土盛りが笹原の中に確認される程度だった。比較的笹の少ないところを選んで行くのだが、それでも限界はあり、行き詰まってしまうところもある。地形図の田代山の付近を見ると、たいへんに複雑な地形で迷いやすい事は事実だ。そこでいつものように巻紙を所々に巻き付けて進んだ。実はこのことが復路で威力を発揮することになる。土盛りの部分を失わないように、注意深く進むのだが、それでも時折不安になることがある。

 そのうちに背後から猫吉さんに呼び止められた。「道がどうも違う。下る筈がないのに、このままだと下りっぱなしだ」立ち止まって、猫吉さんの所まで戻った。地形図で確認すると、どうやら途中で東に向かうところを、北進してしまったようだ。

 猫吉さんが最近手に入れたGPS受信機を取り出して、緯度経度を測定する。GPSは最近誤差が無くなり、正確な測定が可能になっている。私の持っているGPS受信機よりも性能が優れているから、林の中でも測定できるのが強みだ。その結果により地形図から位置を確認するのは、私の分担となった。その結果は、猫吉さんの指摘通り東進するべき地点を通り過ぎてしまったようだ。

 ルートを修正して、雨の笹藪の中をひたすら歩く。さすがに猫吉さんの読図能力は大したものだと感心した。それにしてもGPSの位置情報の正確さには舌を巻くばかりだ。ピンポイントでの位置を確認できるのだから、これからの藪山登りには絶対に必要な装備である。

 やがて田代山から北に伸びる尾根に乗ることになった。ここからは地形図上の破線から離れることになるのだが、もともと道が無かったのだから、歩きにくさは同じ事である。しばらくは平坦に近い場所を歩くのだが、田代山の最後の斜面となったら、今まで腰ほどの丈の笹が、背丈ほどの高さに変わった。おまけに下向きなので登るときの負担は相当なものになった。二人で喘ぎながら、山頂を目指した。
藪に埋もれた田代山山頂
 やがて、傾斜も緩くなり待望の笹藪の山頂に立った。山頂からの展望は樹木と笹に阻まれて全く見えない。それに三角点を探したのだが、笹に覆われている為についに確認出来なかった。もちろんGPSでの確認をしたので、山頂であることに疑いはない。ただ、先行者であるGさんの山頂標識が、立木に打ち付けられているのがせめてもの救いだった。

 山頂では、雨と虫に悩まされて、快適とはほど遠い時間を過ごした。それでも、記念撮影と記念の無線運用は欠かさなかった。

 帰路は、なにやらルートがかなり怪しくなってきた。私も久しぶりの山行で勘が鈍っている事もあるので、ちょっと自信が無くなっていた。

 途中で猫吉さんがあらぬ方向に進んでしまっているので、慌てて大声で呼び戻した。これでは登るときとは逆の立場である。ルートにはしっかり、登るときに付けておいた巻紙が木の枝に下がっていた。ところがこの先で再び道を失ってしまった。こうなったらGPSに頼るしかない。測定して地形図上での位置は判明したが、よく見るとすぐ下まで林道が来ているのだ。再び藪の中を歩くよりも、林道を歩いた方がはるかに負担は少ない。そこで今度はコンパスを取り出して、方向を定めて北に向かって歩き出した。

 ところがすぐに猫吉さんの声が掛かった。「西に向かっている」北に向かったのに西に向かっている。????

 どうやら、コンパスの使い方が誤っていたらしい。慌てて右の斜面を登るとなんとそこには登るときに私が付けて置いた巻紙が木の枝にぶら下がっていた。あのまま気付かずに西に向かっていたら、引き返すのはかなりの困難があったに違いない。ともかく位置を修正して、藪深い斜面を下った。

 かなり不安になるほど斜面を下った。ちょっと開けたところで不安を解消するためにGPSで位置確認する事にした。ところが地形図上では既に林道に到着しているではないか。すぐに腰を上げてさらに下ると数メートルで林道に飛び出した。ここでもGPSの威力を再確認することとなった。

 長い林道、急な登山道を下って車にたどり着いたのはかなり遅い時間になっていた。



「浅松山・田代山」

林道(登山口)11:08--(1.16)--12:24浅松山山頂12:30--(.10)--12:40東屋13:23--(1.39)--15:02田代山山頂15:41--(.57)--16:38林道--(.26)--17:04東屋--(.57)--18:01林道(登山口)


群馬山岳移動通信 /2000/