日光の山「太郎山・山王帽子山」
登山日1995年6月17日

太郎山(たろうさん)標高2368m 栃木県日光市・栃木県塩谷郡/山王帽子山(さんのうぼうしやま)標高2077m 栃木県日光市・栃木県塩谷郡
山王帽子山山頂

 ふと、日光の山に出かけたくなった。いままでは群馬・栃木県境の奥白根山から根名草山あたりの稜線までしか歩いていない。今回は日光太郎山に登る事にした。

 6月17日(土)

 前日の気象情報の通り朝起きると絶好の行楽日和だ。このくらい予報も当たってくれれば全く問題ない。7M1HIG/林さんのファイルを見ると、AM6時に自宅を出発とあるので、それにならって私もAM6時丁度に自宅を出発した。林さんは足尾経由だったがこちらは関越道沼田IC経由で行く事にした。

 光徳入口から光徳牧場に向かいアストリトリアホテルの先、光徳沼駐車場に車を止める。この駐車場は広々としていて、観光バスも駐車する余地が残されていた。既に山登りの支度をして歩く人の姿もかなりおり、先週の黒斑山に引き続き賑やかな山に来たものだと思った。

 車を離れ舗装された山王林道を歩き出す。500メートルほど歩くと、右の笹原の斜面に「太郎山登山口→」の標識が見える。しかし先行している多くのパーティーは、そのまま林道を登っている。目的地が違うのだろうと、こちらは笹原の斜面に入った。しばらく登ると再び林道に出た。そこで高校生の2人組と、中年の2人組に出会った。私が笹原の斜面から出てきたのでびっくりして「ここにこんな道があったのか」と呟いた。おそらくあの標識を、ほとんどの人が見落としているのに違いない。ちょっと得をした気持ちになった。

 さらに舗装された林道を登ると、右側に矢島三嵩の句碑があり、何やら彫り込んであったが何が何やらさっぱりと解らない。そばには登山届のポストが置いてある。高校生は真面目に何か記入している。中年組はタバコを取りだして一服の体制だ。こちらは休む必要も無いし、書き込む予定コースもはっきりしないので、立ち止まらずにそのまま通過した。ここからは車が入り込める程度の未舗装の道が延びている。実際に6台ほど車がここに入り込んで駐車してあった。

 カラマツの林の中の幅の広い道は、ほぼ水平で歩き易い。5分ほど歩くと後ろから先ほどの2組のパーティーが迫り、ハイペースで追い越されてしまった。そして私の視界から消えてしまった。特に高校生は大したもので、賑やかにしゃべりながら軽快な足どりだった。

 道の脇にはスミレが多く咲いているのだが、スミレの花はさっぱりと名前が覚えられない。道はやがて狭くなり岩が多くなってきて、それとともに沢の中に入っていく。時折沢の水が近くを流れているので、良い水場ともなっていた。ここで先ほど視界から消えた2組のパーティーが休んでいた。中年組は相変わらす紫煙をくゆらせており、高校生組はエアリアマップを広げてまわりを見ているようだった。こちらはまだ歩き始めてわずかなので、休む必要も無くその脇を抜けて登り続けた。

 沢の中の道は火山で見られる特有の石が多く、ここがかつて火山であった事をうかがわせる。それにしても恐ろしい道である。周囲の斜面を見るといたるところで崩壊しており、その落ちた岩が登山道に敷き詰められてガレ場となっているのだ。いつ崩れるかは「神のみぞ知る」である。ガレ場の道にしては歩き易いのだが、これは登りだからそう思えるのだろう。この道を下山するとしたら、かなりの危険を伴うだろうと思われる。

 ただひたすらこの砂礫の道は登るのみだ。時折振り返ると、戦場ヶ原が眼下に見渡せるので気持ちがいい。それに今日は天候にも恵まれて周囲の山の新緑も輝いて見えた。やがて左側に見える山王帽子山のピークが、ほぼ同じ高さになるとハガタテに到着した。ハガタテは山王帽子山と太郎山の稜線状にある分岐である。ここにはシャクナゲが花を咲かせており、その下で中年の夫婦が休んでいた。少し離れた所で休憩をする事にする。

 ハガタテに着いた頃からガスが濃くなり、展望が得られなくなってしまった。残念だが今日は下界は晴れで2000メートルから上はガスがまいているようだ。それでも時折ガスが切れて遠方が見えることがある。こんな時は気分まで晴れ渡るようだ。シラビソの樹林帯をひたすら登るので、普段は怖い思いをするような道だが今日は時折、人の声がするので、そんな恐怖心は起こらない。そんなに足は早くはないのだが、数パーティーを追い越してしまった。今日は大変にマナーの良い人が多く、道を譲ってくれる人ばかりで助かった。

 やがてミヤマカタバミの花に混じって、ギョウジャニンニクが顔を出しているのに出くわした。葉を摘んで臭いを確かめると、ニンニク特有のすごい臭いがした。これはかつて奥志賀でたくさん取ったことがある。地元では「カンビョロ」と呼んでいた。地元の人に料理をして貰ったのだが、旨くて酒の肴に大量に食べた。ところが翌日になってその臭いに閉口してしまった。なにしろ小用でトイレに行っても尿にまで臭いがしみこんでいたのだから。そんなことを考えながらなおも進むとひょっこり「小太郎(西峰)」山頂に出た。

 既に山頂には10人ほどの人が休んでいて賑やかだ。そこには三角点が置いてあったが、地形図にはその記載はない。三角点の文字の右横に何か書いてあるのだが、古いようでその文字は読みとることが出来なかった。それから山頂標識は細かい虫が大量に群がっていて、そばに近寄ることも難しかった。展望はガスの切れ間から山王林道が見えているだけだ。そのうちに山頂にいた女性が「これ、ニンジャニンニクでしょう? 」と言って仲間に見せていた。見ると先ほど見たギョウジャニンニクだった。おもわず苦笑してしまったが、訂正するのもお節介になるのでそのまま山頂を後にした。

 小太郎山からの道は最初はいきなり岩稜になっていた。晴れていればかなりの高度感があるのだろう。道の脇のダケカンバはまだ芽吹きが始まっていない。場所によっては雪の塊が残っていて初春の雰囲気が残っていた。多少のアップダウンを繰り返しながら進むと右下の眼下に太郎山の旧噴火口のお花畑が見えている。見ればまだ茶色でお花畑の雰囲気は伺うことは出来ない。

 そして周囲が賑やかになり、太郎山山頂に到着した。なにか山頂は最後の詰めで急な登りがないとその感激が薄いようだ。この山もそんな急登が無いので何となく物足りない雰囲気がある。山頂標識の前で記念撮影をして、根元までむき出しになった三角点を撫で回してから西側の岩場に腰を据えた。山頂はかなり広く20人ほどの人が思い々の格好でくつろいでいた。展望は相変わらすガスに阻まれてあまり望めない。430Mhzで2局とQSOをした。その内の1局は権現山の書き込みをした7M2INY/小林さんだった。QSLは確保出来たようなのでQRTしてしまった。

 さてこれからどうするか? 。それはこのままお花畑経由で志津側に下りてしまうと何かもったいない気持ちがする。各局の書き込みを見てもお花畑は笹に覆われて大したことは無いとあったような気がする。そこで思いきって登ってきたルートを再び戻り山王帽子山に登る事に決めた。そうと決まれば早速荷物をまとめて出発だ。ザックを背負い立ち上がると、登りはじめに一緒だった中年の2人組が山頂に到着した所だった。


「山王帽子山へ」

 ハガタテに戻り稜線沿いに鞍部に向かって、120メートルの標高差を一気に下りる。道は花を付けたシャクナゲが両脇にあり、なかなか整った道だ。そして道は笹が最近刈払いされたらしく歩き易い。私が持っている地形図は、昭和55年発行の二万五千分の一なのだがこの道は記載されていない。所々に木の階段の名残りがあるところを見ると、昭和55年以降に切り開かれたのだろうか? 。鞍部に着くとそこはかなり広い笹原の場所だった。天気が良ければこんな所で昼寝なんてのも良さそうである。

 鞍部からは再び登りになる。樹林帯の中の道は展望がないが、それでも明るい感じがする気持ちの良い道だ。時折、下方から登山者の声が聞こえてくるが、それはおそらくハガタテに登り上げる人たちだと思われる。20分程歩くと急に平らな場所に出た。ここでは親子と思われる登山者が3人休んでいた。

 ここからはたいした登りもなくゆっくり登り上げる。すると左側の立木に青地の山頂標識が取り付けられていた。しかし、そこはまだ低くその先がまだ高そうなので、もう少し歩いてみることにする。すると先ほどよりも高いと思われる地点に標識が二枚くくりつけてあった。一枚は白地に緑の文字で書かれており、もう一枚は西上州で良く見かける新ハイのG氏のものだった。それぞれに標高の数値が違うので、自分の地形図と同じ標高が記されているG氏の標識の前で記念撮影をした。

 山頂の西側に下草の無い、土が露出した明るいところがあったので、そこで無線機を取りだした。430MhzでCQを出すと、以前赤地さんが披露していた「陸奥の門番JI7FQX/佐藤さん」が呼んできた。聞けば近くの奥白根山からだと言う、当然RS59で強力だ。「フランス・クィーン・バッテン」と独特の言い回しで、しゃべるので思わず吹き出してしまった。私の笑い声が静かな山頂に響いて、関係の無い人が突然ここの場所に来たらさぞかし驚くだろう。そんなわけで15分くらいの長いラグチューをしてしまった。思わぬ長居をしてしまったので、急いで荷物をまとめて下山する事にした。

 山王林道への下山路も笹が刈払われて、良く整備がなされていた。小走りに駆けるようにして、降りると約20分で舗装がなされた林道に着いた。後はこの林道を下るのみであるが、誰か親切な人の車に便乗をさせてもらえないかと期待したが、結局そんな物好きは現れなかった。考えてみれば当然で、汗まみれの汚い中年の太った男を乗せるわけは無いと思った。林道はかなりの長さだったので適当にショートカットで笹のなかをかき分けて歩いた。駐車場に着くと朝とは違って華やかな観光客があふれていた。

 自宅に帰ってから山王帽子山の山頂標識の件で、意外なことが解って驚いた。取り付けた本人が白状したところによると、なんとあれは達筆標識だったのである。記録からして16年前のものだろうからかなり古いものだ。なんとも惜しいことをしたと思った。せめて写真だけでもと悔いが残った。


「記録」

 光徳沼駐車場08:20--(.11)--08:31登山口--(1.15)--09:46ハガタテ09:52--(.42)--10:34小太郎(西峰)山頂10:39--(.16)--10:55太郎山山頂11:46--(.14)--12:00小太郎山頂--(.20)--12:20ハガタテ--(.08)--12:28鞍部--(.25)--12:53山王帽子山山頂13:22--(.19)--13:41車道--(.34)--14:15駐車場



                    群馬山岳移動通信 /1995/