登山禁止?となった高反山     登山日1999年4月29日


高反山(たかそりやま)標高1131m 群馬県多野郡

高反山の全景(上野村スカイブリッジから)
 高反山は、国道299号で上野村を通過すると、北側に大きく見える山だ。前から気になっていたのだが、なかなかその機会がなかった。それは、アカヤシオの咲く春を狙っていたからだ。

 4月29日(祝)

 今日は愛用の原付スクーターでの移動だ。自宅から上野村の勝山地区まで塩沢峠を越えて走行距離約60kmとなった。スクーターもそうだが自分でも良く走ってきたと感心する。さてどこから登ろうかと地形図を引っぱり出して考える。

 勝山から一旦西に向かってからその後に北に向かい、高反山の東まで続いている道がある。早速その道に入ってみることにしたが、何の気無しに進んだら教員社宅の駐車場に入ってしまった。すぐに戻って社宅の入り口を右に折れて道なりに進む。するとこんどは由緒のありそうな神社の横の道に来てしまった。地形図で見ると確かに神社の記号がある。

 どうやら分岐を見逃して、ちょっと進みすぎたようだ。ちょっと戻って見るとすぐに分岐は見つかった。そこには鉄塔巡視路のおなじみの黄色い杭があり「安曇幹線1号線」と書いてある。「bQ09」は先ほどの神社の方向なので、今度は「bQ10」の方向に向かう。

 コンクリート舗装の道は、軽自動車がやっと通れるくらいの幅で急傾斜である。あえぎながらスクーターで登ると、前方で軽トラックが道を塞いでいる。その横をすり抜けようとすると、畑から男性が出てきた。軽く会釈をすると、向こうから話しかけてきた。

「この道は通れねえよ、鎖とカギがかかっているんだ」
「これは高反山に行く道ですよね」
「高反山はあれだが、この道は車は通行止めだ」
「歩きは良いんですか?」
「歩きは構わねえが、この山の持ち主がこの前の常会で決めたんだ。なにしろ車で乗り付けて、作ってる椎茸は持ち帰るし、めぼしい樹は掘って持ってぐし、ゴミは捨てるし、良いことは全くねえんだ」
「そうですか・・・・。とにかく歩くのは構わないんですね」
「まあしょうがねえやな」

そんなやりとりをしてから、男性と別れてさらに上部に向かった。どうやら山荒らしには、そうとう憤慨している様子が言葉の感じから汲み取れた。

 問題の鎖はやがて現れた。南京錠とダイヤル錠の二つがかけられていた。しかし肝心の鎖はかなり弛んで地面に接触しているので、スクーターならば乗り越えて先に行くことは可能だ。しかし、無用なトラブルは避けなければいけないので、乗り越える事は断念した。近くの梅林の取り付け道の脇にスクーターを置いて、支度をはじめる。こんな時は車でなくて良かったと思う。なにしろ車を転回する場所もないのだから、もし車で来たら最悪である。

 もっとも、車で来た場合は勝山地区の「上野村、道の駅」に車を停めてもわずかな距離である。それにあまり上部まで車で行くよりも、周回コースがとれるように下部に車を置いた方が楽しみが増えることは確かだ。
山頂から勝山地区を見下ろす(中央は上野小学校)
 鎖を跨いで歩き出すと、今度はすぐにイノシシよけの高圧電流の柵が邪魔している。高さ70センチほどのものなので、なんとか跨いで通り過ぎた。道は軽トラックの轍が少し見られるだけでさほど荒れた様子はない。それどころかコンクリート舗装されているので、快適そのものだ。

 歩き始めてしばらく行くと道が分岐するが、構わず水平に東の方向に歩く。水道の施設を過ぎると、道は山道らしく上り坂になってくる。地形図の道の表記は正確で、高圧送電線から次第に離れていく感じもそのままだ。

 やがて大きな分岐に差し掛かった、未舗装の道は西へ、舗装の道は大きく右にカーブして東に向かっている。分岐の道は地形図の表記の通り、右に大きく曲がり東に向かう舗装路を辿ることにする。ここからの、麓の展望は素晴らしく、目の前には最近出来た「スカイブリッジ」が目を引く。そして群馬・埼玉県境の山並みが美しく連なっていた。

 しばらく歩くと今度は道が再び分岐「GTV多野新羽中継所」と標識にある。おそらくここは852mの標高点の表記のある地点に違いない。道の脇は雑木林で、芽吹きの始まった淡い緑の葉が眩しい。途中大きな松の木の根本に石祠がある場所を通過する。幣束が置いてあることを見ると、今なお信仰を受けていると推測できる。道はやがてなだらかになり、椎茸の栽培地を過ぎると峠に差し掛かった。

 地形図を見ると、高反山はここから西にあとわずかである。林道から離れて、稜線に沿って歩くために薮の中に入った。

 しかし、少し登ると刈り払い地になり薮はなくなった。最初に登り上げたピークにはヒカゲツツジの大きな株があり、黄色い花がいっぱいに咲いていた。刈り払いされた訳は、おそらく椎茸の栽培に使う木を確保したためと思われる。まあ、個人所有の山で生活の糧なのだから、自然破壊などと言うことは言えないだろう。

 刈り払いされた場所もすぐに終わり、薮の稜線に再び突入だ。しかし、さしたる苦労もなく、踏み跡もはっきりしているので歩きやすい。やがて、顕著なピークが樹林越しに見えてわずかな時間でそのピークに立つことに出来た。
高反山山頂(熊棚が見える)
 山頂には三等三角点が設置されており、山頂標識が2枚対峙して取り付けられていた。ひとつはGさんのもので、裏にはKQA、ENW、の書き込みがあり残念ながらKXWの文字は消えかかっており判読不能だった。そしてもう一つは達筆標識で、三角点の南の立木に取り付けられていた。達筆標識の後ろの立木を見てギョ!とした。それは熊棚があったからだ!!。この山には熊がいたのか、慌ててザックから鈴を出してザックにくくりつけた。そして、三角点の周囲は、紫色のリンドウが群落を作っていた。

 三角点の南側の岩場は展望が開けて、気持ちの良いところだった。まさに西上州の山並みを満喫出来る。叶山、二子山、諏訪山、両神山、大ナゲシ、天丸山、諏訪山、品塩山、御座山が一望だ。そして眼下には神流川の流れと、勝山地区の集落が春の大気の中にあった。ここで、昼食のラーメンを作って食べた。また無線はこのあたりとしては非常に良く、運用が出来た。約一時間の滞在で休憩もとれたので、ザックを担いで帰ることにした。

 さて、帰りは周回コースを考えているので、山頂から西の尾根を辿ることにする。

 所々に赤テープがあるので、それを頼りに快適に下っていく。するとにわかに傾斜が急になり、ついに岩場の上に出てしまった。あちこちウロウロしたが、結局岩場の左の道を下ることにした。若干のバラの薮だったが、さほどの問題もなく通過する事が出来た。おりた場所には、満開のヤシオツツジが見事だった。

 さて、ここからルートが怪しくなった。ともかく南に下る尾根を頼りに下ると、はっきりとした作業道が現れた。その道をさらに下ると、テレビ共同アンテナの場所にたどり着いた。場所は874mの標高点の表現のある場所と思われる。

 その後は、地形図の林道の道を辿って、出発地に戻った。
(途中bW鉄塔に行く巡視路があったが、入らない方が無難と思われる)




「記録」

林道鎖ゲート09:25--(.19)--09:44林道分岐--(.08)--09:52GTV多野新羽中継所分岐--(.32)--10:24峠--(.27)--10:51高反山山頂11:47--(.27)--12:14TVアンテナ--(.14)--12:28林道分岐--(.18)--12:46林道鎖ゲート


         群馬山岳移動通信 /1999/