最強の鉄塔巡視路歩き「高倉山」「湯蔵山」  登山日2000年6月10日


高倉山(たかくらやま)標高1449m 群馬県利根郡/湯蔵山(ゆくらやま)標高1334m 群馬県利根郡
高倉山に向かってスキー場を登る
6月10日(土)

 前日は浅松山、田代山で雨にやられ全身びしょぬれになってしまった。湯桧曽の宿で温泉に浸かり、その後土合でアルコールに浸りそれぞれの車内で熟睡してしまった。そして朝起きると猫吉さんは既に活動していた。なにやら騒音と、車内に立ちこめた軽油の臭いで眠れずにいたらしい。空は、曇り空で雨は降りそうにない。

 そこで、計画を立てることにした。まずは谷川岳ロープウエイで天神平に登り、高倉山、湯蔵山を経由して湯桧曽に降りると言うものだ。そこで私の車を湯桧曽駅に置き、再び土合に戻って猫吉さんの車を置いて歩き出す事にした。

 ロープウエイは片道料金1000円であるが、その料金には換えられないものがある。天神平に立つと一気に爽やかな空気を感じることが出来る。ここからスキー場を登り、高倉山を目指すことにする。何かこちらを登る人は居ないので、ちょっと気恥ずかしい。
高倉山のミズバショウ
 この山はかなり植生が豊富で、様々な花が見られる。ミヤマハンショウヅル・イワカガミ・カタクリ・タムシバ・アヤメ・ミズバショウ・ハクサンチドリ・コバイケイソウなどが視界に飛び込んできた。申し訳程度に少なくなった残雪を踏み高台のリフト山頂駅に着いた。リフトは稼働していたが、客は全くなく二人の管理人がのんびりとしていた。山頂駅から一旦下り登り上げるとそこが高倉山山頂だった。

 山頂には、土の上に露出してしまった三等三角点があるだけだった。展望は谷川温泉から水上町中心部あたりが見下ろせる。また、大峰山、吾妻邪山の特徴ある山容も目に付くところだ。無線運用は、猫吉さんが見つけた局を譲ってもらい、なんとかQSLは確保出来ることになった。

 高倉山からは立派な道が、さらに湯蔵山に向かって続いていた。これならば楽勝で湯蔵山に行けると感じていた。気持ちの良いミズナラの林を抜けて歩くのはかなり心地よい。途中には送電線鉄塔があり、そこは下草が刈り払われて展望が開けていた。

 快適に歩いていくと、湯蔵山に続く稜線を外れるように道がついていることに気付いた。地形図を片手に戻っていくと、破線の位置が明らかに違うことに気がついた。つまり我々が歩いているのは、鉄塔保守のための巡視路だったのだ。地形図上の破線の道は既に廃道となり、その痕跡さえも無くなっていたのだ。

 しかたない、こうなれば藪をかき分けて登るしかない。猫吉さんと顔を見合わせてから藪の中に突入した。藪はあまり濃くはないので、かなり楽ではあるが、それでもきつい登りには違いない。途中、コシアブラの若芽が食べ頃になっていたので、一掴みほど収穫した。

 ひとしきり登るとそこが湯蔵山の山頂だった。展望は全くなく、木々の間からかろうじて高倉山が見えるだけだった。記念撮影後、無線運用を開始、するとJL1FDI/村上さんが登場してきた。これでQSLは万全と二人ともそれ以上は無線機を握ろうとはしなかった。

 地形図上では、湯蔵山からさらに湯桧曽まで行けるように破線の記載があるが。実際にはそんな道は確認できなかった。こうなったら、地形図には記載がないが、先ほどの巡視路を下ることが一番と判断して、湯蔵山を後にした。

 巡視路は快適で、幅も広くとても歩きやすかった。そして尾根の中腹の鉄塔にたどり着いた。ところがここで愕然としてしまった。この次の鉄塔に行くには深い谷を越えなくては行けないのだ。しかし、今更後悔して戻る気にもなれなかった。

 深い谷に向かって下降することに決定して、道を辿ったそこにはワイヤーが設置され、ひとまずは助かった。二人で交代でそのワイヤーに掴まりながら下った。かなりの急傾斜で滑ったらただでは済みそうにない。何とか沢に到達して、今度は登らなくてはいけない。疲れた身体にはかなり応える。

 なんとか目指す鉄塔に到着することが出来たが、見ればさらに深い谷を挟んで次の鉄塔はあったので、まずはここで一休み。猫吉さんは蕎麦を食べたいと言い出した。まさに私もそんな心境だったので、すぐに賛成した。

 再び沢に向かってワイヤーに掴まりながら下降。今度は登り上げるときには崩壊地があり一部緊張した。すでに壊れてしまっている梯子もあり、この巡視路の手強さは今まで経験した中では最高のものだ。

 やっとの事で、その次の鉄塔に到着、ここで問題が発生した。このまま行くと土合と湯桧曽の中間地点に到着することになるからだ。どちらに向かうかはとりあえず着いてから判断する事にした。この鉄塔から次はもう尾根伝いに下るだけだ。半ば安心しきって鉄塔を後にした。

 ところがすぐに次の鉄塔にたどり着いた。道も左に向かっていくものがあり、「矢木沢線 bS1→」と書いてある。念のために鉄塔の下に行くとここにも道があり、道は気持ちよく下っている。そこでこの下降する道を辿ってみた。しかし、10分ほど歩いてみたがどうも様子がおかしい。道は今度は登り上げるようになっているのだ。
湯桧曽川に向かって下降する
 どうやら間違ったらしい。

 再び引き返して、先ほどの鉄塔に戻ることにした。そして鉄塔をよく見るとJRの文字が見える。つまり我々が湯蔵山から辿ってきたのは東京電力の鉄塔であるので、JRの鉄塔巡視路は見当違いと言うことになる。今度は先ほど確認した「矢木沢線 bS1→」の道に踏み込んだ。

 しばらく進むと道は再び分岐して水平に行くものと下降するものに分かれる。ここは迷わずに下降するものを選ぶ。ゴーロ状の沢を疲れ切った足を引きずりながら下ると、やがて湯桧曽川の沢音が聞こえ、長かった巡視路の下りが終わった。

 結局湯桧曽には向かわずに排気ガスに悩まされながら、土合に向かって長い車道を歩いた。



「高倉山・湯蔵山」

天神平駅08:52--(.35)--09:27高倉山山頂10:07--(.30)--10:37湯蔵山11:00--(1.58)--12:58湯桧曽川--(.41)--13:39土合



群馬山岳移動通信 /2000/