カモシカに遭遇した「高田山」
登山日1994年9月12日


高田山(たかだやま)標高1212m 群馬県吾妻郡
高田山山頂
9月12日(月)

 今日は一昨日、出勤したかわりの代休をしっかり取った。気象情報によると、夕方から雨が降り出すものの、日中は曇り空ながら、なんとか持ちそうである。今日は簡単に行ける山と言う事で、家を8時30分になるまで決めかねていた。ようやく決まったのが、出発の10分前だった。場所は四万温泉の手前の吾妻郡中之条町「高田山」だ。この前「嵩山」に登ったおりに、登山口だけは確認しておいたので、道は良く解っていた。

 中之条町を抜けて四万湖を過ぎ、駒岩に着く。今は駒岩バイパスが出来ているために、うっかりすると、旧道に気付かずに、バイパスを通過してしまう事も有り得るので、注意が必要だ。登山口は駐車場が無いので、乗用車で来た場合はむしろバイパスを通り、空き地に駐車した方が良いかも知れぬ。今日は相変わらずのミニバイクなので、更に奥に進む。駒岩バス停から、山に向かって石材店の前を通り、狭い山道を走ると「水道記念碑」に着く。道はまだ幅員2m程度の道が続くのだが、ここにミニバイクを置く事にする。

 幅員2m程の山の作業道は更に続く、そして道には何かキャタピラーのわだちがくっきりと残っていた。道の傍らにはツリフネソウ、ミズヒキの花が目立つ。やはり花の名前は覚えなくてはいけない。花を見て季節の変化と、その姿の移り変わりに感動しないだろうか。ふだん車などの移動で、見る事さえもままならない草花を、せめて歩いているときだけでも見てやらなければ、失礼ではなかろうか。それにはまず初めに花の名前を覚える事が必要だ。

 作業道を13分程進むと、右側に標識があり、それはこの道から分かれて、細い登山道に入る様になっている。かなり勾配がきついが、夏草もなく歩き易い道だ。やがて道はコンクリート製の鳥居に着く。柏手を打ち、頭を下げて鳥居をくぐった。地元の人の集団登山の時に使うものなのだろうか、朽ち果てたベンチがいくつも並んでいた。麓からは盛んに、田圃の鳥を追い払う、アセチレン爆鳴器の音が山に反響している。これでは熊も出てこないだろうと、勝手に決めて安心した。

 鳥居からの道は杉林の中の急な斜面を、右に左に折れながら徐々に高度を上げ登っていく。不思議な事にこの道は、この時期の山にしては、下草が極端に少ない。殆ど無いと言った方がいいかも知れない。これはやはりここに生えている木々が、太陽を遮り下草が生えにくい環境となっているからなのだろう。植生は杉から広葉樹の林に変わってきた。モミジやカエデが多いところを見ると、これからの秋の紅葉の時期には、さぞかし見事なものになるに違いない。

 道はやがて左側の斜面が開けた場所に出て、目指す高田山が望めた。まだまだ距離はありそうだ。この展望が開けた場所から、10m程更に登ると「獅子井戸」と標識のある場所に着いた。確かにここは水場になっているらしく、塩ビのパイプが斜面に突き刺してあり、その先からわずかな水の滴が落ちている。この水量ではコップ一杯でも、かなり時間がかかりそうだ。

 道はここから、右に向かい斜面をトラバースする形で、目の前の稜線に登り上げている。稜線に登り上げると、再び戻る形で左に360度曲がって、稜線を歩く。これならはじめから直登して、登り上げた方がいいと思うのだが、良く解らない。ともかく道は、ジグザグに変わり、石尊山山頂に着いた。

 石尊山山頂には祠があった。展望は南方面が開けていて、嵩山と四万湖が印象的だ。目指す高田山は潅木の間に見る事が出来た。ガイドブックでは、ここから高田山までは30分とある。あとわずかなので、もう少し頑張ろうと気合いを入れて歩きだした。

 ところがこの道はアップダウンの繰り返しの、なかなか苦しい道だった。これでは帰りもこのアップダウンの、繰り返しをしながら歩くと、思うと気が重くなる。しかし、そのコブのピークは露岩で明るく気持ちが良い。登り降りを繰り返しながら、苦しみながら何とか高田山山頂に到着した。

 山頂は潅木が刈り払われて、明るくなっていた。さらに南の方角は斜面も一部刈られており、展望が良い。その中で一等三角点は中央に、埋め込まれていた。山頂を更に探検すると、5月5日の山開きの時に使う、抽選券の名残りの標識があった。そして山頂標識は2枚あり、その内の一枚「上州高田山」と書いたものがあった。その裏を見ると「KXW」と書いてある、渋沢さんのものだ。そこで私も、自分のコールサインと日付を書いて置いた。

 無線の方は、430Mhzで4局QSOして切り上げた。

 帰りは登って来た道をそのまま、戻った。来るとき予想した通り、石尊山までのアップダウンはきつかった。そして石尊山からの道を下山途中に、突然大きな音がしたと思ったら、目の前、数m先をグレーの物体が駆け抜けた。思わず足が止まり、心臓が大きな音を立てているのが解った。まあ音を立てているからには、止まってはいないようだ。そして今、目の前を通り過ぎたのが、カモシカであったと思いつくまでには、かなりの時間が必要だった。ともかく熊でなくて良かったと、胸をなで下ろした。



10:25登山口(水道記念碑)--(.13)--10:38分岐--(.06)--10:46鳥居--(.21)--11:07獅子井戸--(.26)--11:32石尊山11:41--(.23)--12:04高田山13:00--(.17)--13:17石尊山13:23--(.28)--13:51水道記念碑


                    群馬山岳移動通信 /1994/