ブナ林の道を抜けてセビオス岳・中ノ岳へ登る   登山日1999年7月10日


セビオス岳(せびおすだけ)標高1870m 群馬県利根郡/中ノ岳(なかのたけ)標高2144m 群馬県利根郡
中ノ岳から上州武尊(沖武尊)を望む
 上州武尊山はいくつかの道があり、そのいくつかを辿って登ったことがあるが、武尊牧場スキー場から登ったことがない。しかし、上州武尊山の賑わいは苦手なので、途中の「中ノ岳」に登ってみることにした。地形図を見ても道の記載がないので、静かな山頂が期待できそうだ。

 7月10(土)

 ここのところ、週末の天候が悪く思うように山に行けなかった。そのために実に一ヶ月ぶりの山行きとなってしまった。武尊牧場の大駐車場はまだ数台の車しか見られない。夏山リフトの運行開始は8時30分からなので、まだ2時間近く時間がある。一般の人が集まる前に登り出すには絶好のタイミングだ。

 支度を整えて舗装路を歩き出すと、すぐに屋根付きの階段がある。ステップが鉄板なので歩く度に大きな音が反響してちょっとうるさい。階段を登りきるとそこがスキーリフトの発着場所だった。当然、営業前なので静かで閑散として人影は全く見えない。

 草地をちょっと登ってから、アスファルト舗装の道に出る。この後はひたすらこのアスファルト舗装の道を登るだけだ。朝の光の中に牧草の緑がまぶしく、高度を上げる度に展望が広がってきた。その中でも奥白根山、皇海山、あたりは特に目を引く。

 やがて立派な建物が見えてきた、「ロッジまきば」と書かれており、宿泊施設も兼ねたものらしい。今日は宿泊者もなくひっそりとしているが、玄関の石段ではハイキングの若い男女が腰を下ろして休んでいた。特に立ち止まる必要もないので、軽く会釈を交わして先を急いだ。

 リフト終点は広い草地の中の、すがすがしい道の分岐点だ。木陰で男性が一人寝ころんで休んでいた。こちらもちょうどよい休憩時間なので、そばに腰を下ろしてザックの中から水と大福を取り出してほおばった。横浜から来たという男性は、かなり疲れている様子で、しきりにコースタイムの事を気にしていた。

 休憩後、整備された道を歩き出すと、さわやかな風がとても心地よく感じる。時折あらわれる東屋とアヤメの群落が整備された自然を感じる。途中に「東岐三等三角点」があり、精密に測量されたものであるとの説明板がある。しかし考えてみると、精密に測量されていない三角点なんてあるのだろうか?と不思議な気もする。

 道は刈り払いされ整備された草地を抜けてブナの林の中に入っていく。大きなブナの木の林は実に心地よい。頭上を覆う緑の葉は雲のように見える。木々の間を抜けてくる風は乾燥してさわやかだ。途中には映画のロケに使ったと言う場所があり、ブナが伐採され妙なコンクリートの残骸が放置されていた。このブナの林は紅葉の季節に再度来てみたいと思った。またカミキリムシの宝庫と言われ、捕虫網を手にした人もいる。

 ブナ林もやがて針葉樹林に変わってくると、赤い三角屋根の武尊避難小屋に到着だ。内部はかなり広く宴会もできそうだ。ここまでの間、かなりの登山者を追い越したが、ほとんどの人は東俣駐車場からの往復と思われる。そうすれば牧場の1時間の登りはパス出きることになる。

 避難小屋は内部を見ただけで通過となった。その後もいくつかのパーティーを追い越して先に進んだ。これは決して私の足が速いのではなくて、みんなが遅すぎると言うことらしい。それはガイドブックのコースタイムを見ても明らかだ。やはり、深田百名山と言うことでいろんな人が押し掛けているのかもしれない。

 セビオス岳では展望も開けて休みたかったが、ナイスミディーの集団が占拠していたので、見送って先を急いだ。しかし、中ノ岳の鞍部でついにダウンして、腰を下ろしてしまった。冷たいミカンとお茶を腹の中に入れて出発だ。

 今までの灌木は低くなって、展望が利くようになってきた。岩場にさしかかると、鎖が設置されており、それに捕まってよじ登る。ここで団体に出会ったら悲惨だと感じた。なにしろ浮き石は多いし、嫌らしい場所である。

 岩場を抜けると、目の前に懐かしい家ノ串から前武尊につながる稜線が広がった。ここからはさしたる登りもなくその前武尊からの登山道に合流した。この先には笹清水と言う水場がある。とても旨い水なので今回ちょっと楽しみにしていたこともある。思った通り、冷たく頭の中が痛くなるほど旨い。コップに2杯一気飲みだ。
中ノ岳(下の笹藪を抜けて岩場を右に巻いた)
 さて、中ノ岳だが何処から登ったらよいものか、さっぱり見当がつかない。しばらくウロウロしてみたが、どうも登れそうにない。そうしている間にも登山者が怪訝な顔をして通り過ぎていく。それもそうだろう登山の対象にもなっていない、ピークに登ろうとしている妙な男がいるのだから。こうなったら仕方ないなんとしても登ってやる。

 熊笹の中に飛び込んで、強引に体を持ち上げた。もう絶対に後戻りはしないと決めて、少しずつ高度を上げた。すると高度を上げるに従って笹は低くなり、登りやすくなった。眼前には大きな岩場があったが右から巻いてわずかな時間で中ノ岳山頂に到達した。

 山頂のハイマツの幹にはGさんの標識があり「中ノ岳(川篭山)」と書いてあった。川篭山は地元の呼び名だから、こちらの方が正しいのかもしれない。展望は最高で沖武尊、前武尊はもちろん、尾瀬、奥利根水源の山が一望だ。

 無線機のスイッチを入れると巻機山のFDIが出ている。早速交信してQSLを確保、同行していたCFRとも久しぶりの交信を果たした。山頂はものすごい大群の蠅に悩まされたが、なんとか根性でラーメンを作って腹に入れた。

 帰りは往路に果たせなかったセビオス岳で、VZTと交信してから充実した気持ちで戻った。



「記録」

武尊牧場登山口07:01--(.38)--07:39ロッジまきば--(.17)--07:56リフト終点-08:03--(.56)--08:59避難小屋--(.26)--09:25セビオス岳--(.49)--10:14中ノ岳分岐--(.05)--10:19笹清水付近10:32--(.12)--10:48中ノ岳山頂11:44--(1.37)--13:21リフト終点--(.43)--14:04登山口



                 群馬山岳移動通信/1999/