ふるさとの裏山、日溜まりハイク「王城山」
登山日1994年11月23日


王城山(おうじょうさん)標高1123m 群馬県吾妻郡

 11月23日(祝)

 昨日は倉渕村の横須賀市民休養村「はまゆう荘」で、会社の同期会の泊まりでの宴会があった。せっかくなので、この機会を利用して山に登る事にした。もともとお座敷の宴会は好きではないので、山に登れるから参加したようなものだ。しかし、酒のつき合いで結局、就寝したのは午前二時過ぎになってしまった。したがって、朝は寝坊して自宅から出発したのと殆ど変わらない時間になってしまった。

 国道145号線を西進して、JR吾妻線の川原湯温泉駅を過ぎ、更に西進すると「林」と言う地名の信号がある。ここからさらに進むと、「かつぬまはし」と言う名の橋があり、その手前で右折する。この橋は分かりにくい、むしろ「王城山神社の神杉1500m」の看青を探しながら走った方が良いと思う。ここを入り、道なりに進むと集落が現れ、谷側に消防車庫が現れる。車庫のシャッターには「第五分団」と書いてあった。ここの車庫前が登山口になっており、狭い車道が山に向かっている。おそらく、この道に入ったら駐車する場所も無いだろう。そこで車庫の前の道を百メートル程進んだ所が、道が広いのでここに駐車する事にした。無用なトラブルを避ける意味でも、生活道路に車を駐車するのは神経を使ってしまう。

 車を降りて歩き始める。民家の庭先では老夫が掘り出したこんにゃく芋の、泥を落としていたので、軽く会釈をしてその前を通り過ぎた。先ほどの消防車庫前を山側の道に入り、道なりに進む。道は舗装されているが狭い、駐車スペースはあまり無いようだ。車はあそこに置いて正解だった。すぐに墓地に着いてT字路になり、道なりに左折して山に向かう。共同TV(衛星放送)の受信用のパラボラアンテナを過ぎると、道は再びT字路になる。ここは左折して少し歩くと沢を渡り、今度はコンクリート舗装の道に変わる。この辺で民家は無くなり、畑の中を歩くようになる。

 コンクリート舗装が終わったところが、三合目鳥屋坂だった。この標識は石で出来ており、振りがなもある、たいへん親切なものだった。ここで振り返ると、のどかな山村風景が目の前に広がっていた。日本人の心の故郷は、おそらくこんな風景なのだろうと思う。おまけに今日は陽射しが暖かく、よけいにそんな風に感じるのかも知れない。

 舗装は無くなったが、道幅は広く登山道と言うよりも、生活道路を歩いているような錯覚を感じる。雑木林を過ぎて枝尾根に登り上げると、そこは明るい山道だった。南向きの斜面に付けられた道は、暗さが全く感じられない。ゆっくりと味わうように、歩く事に努めた。

 五合目傘木は、大きな松の木があり、休むのに絶好の適地だった。この松が、から傘に似ているから、この地名が出来たらしいが、ちょっと無理があるように思われた。道幅が広いところはここまでで、これからは狭くなる。しかし、他の山に比較したら較べものにならないほど、この道は広く歩きやすい。

 すっかり葉の落ちきった雑木林は、見通しが良く気持ちが良い。しかし七合目の舟窪にさしかかった辺りから、上空の雲が陽射しを遮るようになった。こうなると途端に寒くなる。季節はやはり冬である。その内に空から降ってきたものは、白いものだった。突然の冬の来訪者は少しの時間で終わったが、寒さはそのままだった。

 再び枝尾根に当たり、ここは八合目中棚尾根と呼ばれる場所だった。道は一旦、左の谷に降りているが、どうも目の前にある場所が山頂らしい。良くみると微かに踏みあともある。思いきって左に入らず、このまま尾根を直進する事にする。

 ルートは難しい事はなく、五分ほど歩いたところで、王城山山頂に飛び出した。山頂には三角点と石祠が三基あり、五尺程の長さの剣が空に向けて地面に差してあった。山頂標識はブリキ製のお馴染みのものと、KUMOのプレートの二枚が松の木に付けられていた。展望は葉の落ちた木々の間から、榛名、菅峰、浅間、草津白根、と昨日降った雪を戴きながら見えていた。北には白樺の間から高間山が、すぐ近くに迫っていた。いつかはあの頂にも登ってみたいと思った。

 記念撮影をしようとしたが、なんと作動しない。てっきり寒さによる電池の容量低下と思い、懐で暖めてみたが同じだった。こんな時のためにも予備は持たなければ、と痛感した。結局記念撮影は出来ずに終わった。

 無線の方は折からコンテストの真っ最中。しかし、この電波過疎地の山の中、空き周波数ばかりだ。絶対にこんな訳は無いはずだ。試しにメインでCQを出してみたが、空振りばかり。しばらくするとJO1QHR/角田さんが富士見村移動で出ている。なんとか指定された周波数まで追いかけて、QSOする事が出来た。これで王城山のQSLは確保出来そうだ。安心してゆっくり食事に移った。

 山頂からは気になっていたので、正規な道を歩く事にする。道を下るとコルに着き、そこには作業に使うのだろうか、作業小屋が建っていた。今でも頻繁に使っているのだろう、中は整然と整理され、片づいていた。ここにも標識があり今迄いた場所が「古城」、そして反対側の小高いところが「王城」とあったので、試しに王城の方に行ってみる。十メートル程ですぐにその場所に着いた。いままでいたところよりも展望が良く、地面は草地で気持ち良いところだった。

 帰りはなにか早く歩くのがもったいないので、ゆっくり、ゆっくり、景色を楽しみながら歩いて下山した。


各地点には、石で出来た標識があり、それぞれに地名が記されていたので、以下にまとめて置きます。

一合目/王城山登山道入口
二合目/押手沢(おしてざわ)
三合目/鳥屋坂(とりやさか)
四合目/柴峰(しばみね)
五合目/傘木(からかさぎ)
六合目/炮碌岩(ほうろくいわ)
七合目/舟窪(ふなくぼ)
八合目/中棚尾根(なかだなおね)
九合目/お篭り岩(おこもりいわ)・御手洗(みたらし)の池
十合目/山頂尾根


「記録」

登山口10:07--(.34)--10:41傘木--(.32)--11:13王城山(古城)山頂12:29--(.03)--12:32(王城)12:41--(.35)--13:16登山口



                      群馬山岳移動通信 /1994/