宝物探し西上州「御場山」    登山日1993年11月23日


御場山(おんばやま)標高1059m 群馬県甘楽郡
御場山山頂
 御場山(1059m)は上信越自動車道の碓氷軽井沢ICのそばに位置する山である。西上州のはずれにある山で、よほどの物好きでない限り登る人はなかなか居ないようだ。

 11月23日(祝)

 下仁田から国道254号を内山峠に向かう。下宿のあたりで軽井沢行きの大きな標識があり右に入る道がある。後ろの座席では子供が家を出たときから一所懸命にゲームボーイで遊んでいる。家ではファミコンで遊んでいながらよくも飽きないものだ。

 初鳥屋(はっとりや)で左に下る道がありそちらに向かう。たいした目標が無いので見落とし易い。登山口も分かりにくい急激に道が細くなり、おかしいと思ったのでバックして引き返して、若干広いところがあったので車を止めた。駐車は路上駐車となり、車は3台程駐車できる。ぜいたくを言わなければ道の反対側に未舗装の空き地があり数台は止められそうだ。

 今一つ登山口がはっきりしないので谷側にある民家に道を尋ねるために出かけた。ちょうど大根を干している老婦人が居て尋ねる事が出来た。なんとこの家の前を通らないと登山口に行けないようだ。申し訳ない事をしたが、わざわざそこに行く道を塞いでいる洗い桶をどかしてくれた。話し好きのこの老婦人はいろいろ話してきたが、早々に礼を言って子供を連れて失礼した。表札を見ると「吉永・・・」とかすれた文字がかすかに読み取れた。

 民家を過ぎるとすぐに沢に出る。沢の水は上部で工事をしているのだろうか、それともこの沢特有の水質なのか白く濁っている。子供を抱いてこの沢を渡河する。これから先、何度となくこの作業を繰り返す羽目になってしまった。

 杉林の中をひとしきり登り沢を渡りこれから先はただひたすら沢筋の道を登る事になる。所々不明になるところがあるが、白いテープの目印がかなり正確に木の枝に縛ってあるので周りを見ながら歩けば迷う事はない。いつも不思議に思うのだがこの目印を付ける人は凄いと思う。只でさえ登るのが大変なのにこれだけの作業を正確に行うのだから。またこの目印はふと本当に正確なのだろうかと思う事がある。登山以外のたとえば猟師や山菜取りの人の個人的な目印だったらと。

 沢の中は落ち葉がかなり厚く積もっておりスポンジの様になっているところもある。体重の重い私はかなり踏み込んでしまった。子供は落ち葉に足を取られて苦戦している。しかし6日前に登った天狗岩に較べると格段に明るい沢は気分が良い。

 御場山の取り付きにあるコルの手前の沢はかなり崩壊が進み荒れている。子供を慎重に支えながら沢に降りて、再び軟弱な砂地の斜面を登る。コルは雑木に覆われて展望があまり利かない。わずかにコルを挟んで西にあるピラミッド状のピークが印象的だ。

 コルからは薮漕ぎを強いられる。子供は顔の周りの木の枝と足元の岩場の不安定さに負けずに頑張っている。薮も5分ほどで終わり傾斜のきつい桧と松の林に変わる。息を切らせながら登ると御場山山頂に着いた。登山口から70分であった。ガイドブックでは90分なので、子供の足を考えれば上出来だ。

 山頂は雑木に覆われているが、木の葉が落ちているので木々の間から周りを見る事が出きる。物見山付近はよく見え、その斜面の牧草地の緑はこの時期ではひときわ目を引く。又上信越道が山肌を切り裂いて走っているのが痛々しく見える。

 山頂では榛名相馬山のJS1JDSとQSOできた。ちょっと風邪気味なのか声の感じがおかしく感じた。

 山頂で1時間近く休んでいると身体が冷える。荷物をまとめて下山を始める。子供はワクワクしながら歩いている。それは登山道の脇の探しもの為である。何かと言うと水晶なのだ。登ってくるとき大体の感じは掴んでいるので真っ直ぐにそこの谷に向かった。

 ここは岩壁に石英の層が走っておりそれが崩れて沢に岩石としてあるようだ。全く価値は無いものだがそれでも親子でうろうろと沢の中を徘徊してしまった。その成果か岩に張り付いたきれいな水晶の結晶を見つけた。陽にかざすとキラキラ輝く。きれいなものである。暫く子供と宝物を真ん中において「ダイヤみたいだ」と見とれてしまった。


「記録」

登山口(10:40)---(.44)---(11:24)コル---(.26)---(11:50)御場山山頂(12:45)---(1.09)---(13:54)登山口


                          群馬山岳移動通信 /1993/