おもいっきり林道歩き「根本山」「熊鷹山」
登山日1993年10月21日


根本山(ねもとやま)標高1199m 群馬県勢多郡・群馬県桐生市・栃木県安蘇郡/十二山(じゅうにやま)標高1143m 群馬県勢多郡・栃木県安蘇郡/熊鷹山(くまたかやま) 標高1169m 栃木県安蘇郡
登山口案内板
 10月21日(木)

 今日は会社を休んだ。

 有効期限が今年の11月までの年次有給休暇があと12日分ある。到底、期限内に使いきる事は不可能だが最後のあがきで何とか今日休む事が出来た。

 秋晴れを期待していたのだが朝方まで雨が残っており自宅を出る頃になってやっと雨があがったものの空はまだどんよりしている。

 今日はミニバイクをやめて乗用車である。平日は山は空いているのだが道路は通勤ラッシュのため大変な混雑だ。高崎−前橋−桐生と混雑する市街地を全て通り抜けて桐生の秘境梅田地区に入る。道は梅田湖を過ぎたあたりから狭くなって来る。車が一台やっと通れる程度である。すれ違いは待避所以外では不可能であると思う。この道路は狭いが舗装されており、ある意味でスピード超過で走る事が可能なので対向車が来た場合非常に危険と思われる。

 三境林道を左に分けるとすぐに不死熊橋の登山口に着く事ができた。なんと自宅から2時間30分もかかってしまっている。

 駐車スペースは車が数台置ける程度である。今日は平日のためか車が一台あるだけだ。この道(石鴨林道)は更に続いているがゲートがあり一般車両は通行止めとなっている。しかしこのゲートは鍵が掛けてないのでこれから先も走る事は可能である。だが今回の登山コースからはこれ以上進んでも意味が無いので車はここに止める事にした。

 車を降りると前の斜面から拳ほどの大きさの石が落ちてきた。もう少しで車に当たるところだ。周りを見ると車のものと思われるガラスの破片が散らばっている。慌てて車を更に安全と思われる場所に移動して駐車した。

 不死熊橋を渡り沢の左岸の登山口に取り付く沢コースと尾根コースは共にこの登山口から始まる。指導標の通りに林道を行くと、とんでもないアルバイトを強いられる事になる。登山口から少し行くとすぐに指導標に従って沢コースと分かれて右に折れて山道に取り付く事になる。

 急坂を登ると林道に出会う。これを横切って再び山道に取り付く事になる。指導標らしきものは殆ど見あたらないが、道は良く歩かれているらしくしっかりしている。植林された桧の林の中をひたすら登る。登山道の所々に松の木があるが、思わずその度に何かマツタケでも生えていないかと、根本を見てしまうのは、なんとも恥ずかしい癖である。

 標高900m付近で右側の部分の植林された桧がまだ小さいために展望が急に開け、熊鷹山を大きく望む事が出来た。しかし林道が稜線付近まで山肌を削って延びている姿はなんとも痛ましい。ここから見る根本山山頂付近は紅葉が始まったところであるがモミジの赤い色がなんとも鮮やかに見えている。

 中尾根十字路に到着すると突然ガサガサと音がして動物の気配を感じた。
思わず緊張しながら目を凝らして周りを見ると小さな動物が数匹動いている。それは尻尾に特徴があるのですぐに正体がリスであると判明した。まことに早い動きであっと言う間にどこかに消えてしまった。

 登山口から1時間18分で根本山山頂に立つ事が出来た。

 山頂と言っても何か登山道の途中にある普通の場所くらいにしか見えない。展望は全くと言って良いほど樹林に遮られて見えない。三角点と山頂標識が無ければ完全にそのまま通過してしまう様な場所だ。

 とりあえずここで昼食をとりながら無線機を出して430Mhzで3局とQSOした。ともかく寒いので山頂は立ったままで過ごした。(翌日の新聞では浅間山、奥日光で初雪が観測されたと書いてあった)

 ここで怖がり屋の私を悩ましたのはドングリである。それは風が吹く度にドングリがポタポタと音を立てて落ちるのだが、静かな山の中ではその音はかなり大きく響くのだ。その度に私はビクッ!としてばかりいた。

 山頂を後に再び中尾根十字路まで戻り十二山を目指す。特別なアップダウンもなく15分ほど歩くと十二山に着く事が出来た。ここも山頂と言う感じはしない。祠と何かの小屋がある。また壁のすっかり落ちてしまったトイレがあり、便器の白さが鮮やかに見えていた。この山頂にはステンレスで出来た参拝記念のノートを入れたポストがある。中を開けてめくって見た。コールサインが記入されているものがあったのだが、知っている局は見あたらなかった。

 今度は熊鷹山を目指して歩き出す。途中氷室山への道を左に分けるとまたすぐに十二沢への道を右に分ける。道は稜線を真っ直ぐに進んでいく。かなり熊笹に覆われた道であるが道を迷う事はない。

 この道を歩いていると突然身が凍り付くようなものに出くわした。何か大型の動物が掘り返したような跡である。それもまだ新しい。周りの木を見ると根本のあたりの皮をはいだものがある。熊か猪ではないだろうか?思わず立ち止まってしまった。この前の二子山の時のように口笛を吹く気力も無くなってしまった。しかたなく無線機を取り出して音量を最大にして誰かのQSOをスピーカーから流して歩く事にした。

 しかしもし出くわしたらどうやって逃げようかなどと身構えながら歩いた。

 熊鷹山の山頂に着いたときはたいへんうれしかった。山頂は木が伐採されており明るい。ここなら熊も来ないだろうと思ったからだ。この山頂には何に使うのだろうか桐生工業高校が建てた櫓がある。試しに登ってみると360度の展望が望めた。紅葉も始まったばかりだが傾き掛けた陽の光りに照らされて鮮やかな色を放っている。ここにもポストがあり中には熊鷹山の林道反対の署名要請書も入っていた。またノートがあったのでコールサインを記入しておいた。

 熊鷹山を後に下山を開始した。すぐに朽ち掛けた鳥居があり更に進むと道が分岐している。真っ直ぐ下へ降りるものと左に行くものである。迷ったが左に行くとすぐに大きな指導標があった。これに従って右に折れると先ほどの真っ直ぐ下に降りていた道と出会った。この下山路は無数に踏み跡がありかなり迷う。運を天に任せて道を選んで降りていく。かなりの急坂で、もし登りに使うならばかなりバテるだろう

 林道に着くと大きなパワーショベルが置いてあった。MLQ局の書いた「YAMA0967」によると林道からの登山口が良く解らないとあったがなるほど解りにくい。何にもないのである。そこで登山道を少し戻り「火の用心/田沼町/佐野警察署」の看板を持ってきて登山口の木に縛り付けて置いた。これが無くならない限り登山口の目印となるであろう。

 ここからは林道を忠実に辿っての下山である。砂利道の林道は変化もなく黙々と歩くだけである。20分も歩くと完全に飽きてきて思わず走り出してしまった。それでもいつまで経っても林道は続いている。ふと間違った林道に迷い込んでしまったのかと不安が頭の中をよぎる。今までの林道歩きの最長時間は北志賀の雑魚川林道を5時間歩いた事があるが、それに匹敵するような長い時間が感じられた。

 やっとの事で車に着いたのは林道を歩き始めて36分であった。時間的には大した事はなかったが、なにかおもいっきり林道を歩いたような気がした。


「記録」

登山口(不死熊橋)10:45--(.06)--10:51林道横断--(1.05)--11:56中尾根十字路---(.07)--12:03根本山山頂13:01--(.15)--13:16十二山--(.10)--13:26氷室山分岐--(.26)--13:52熊鷹山山頂14:05--(.18)--14:23林道--(.36)--14:59登山口(不死熊橋)


                         群馬山岳移動通信 /1993/