今度は登る事が出来た「兜岩山」  登山日1994年10月23日


兜岩山(かぶといわやま)標高1368m 長野県佐久市
ローソク岩
 今年の4月3日に兜岩山に登ろうとしたが、途中で凍り付いた雪に阻まれて断念した経緯がある。西上州の山登りの季節が来たら、登ってやろうと狙っていた。ついに夏も終わりその季節がやってきたので、再度登る事にした。

10月23日(日)

 気圧配置が冬型になっているのだろうか、ミニバイクで内山峠を走ると、かなり強い季節風を身体に受けた。それでも峠を過ぎて山道に入ると、風は穏やかになった。狭い荒船不動尊へ続く道を走ると、突然の数台の車が数珠つなぎで止まっている。いや動かないと言った方がいいのだろうか。狭い道ながらミニバイクならば、脇を抜ける事はたやすい。前の方に進んで驚いた。なんとマイクロバスが2台、狭い道で苦しんでいるではないか。すれ違いざまに、ドライバーに「大変ですね」と声を掛けて、そのまま走り抜けた。乗用車で来ても大変なのに、なんとも無謀としか言いようがない。

 荒船不動尊にミニバイクを止めて歩き出す。前回と違って雪もなく歩き易いし、下草も思ったほどうるさくはなかった。ときどき潅木の間から見える、荒船山はわずかながら色づいていた。

 前回よりも4分ほど早く稜線に着いた。これは道が凍結していなかった事が原因と思われる。ここからは立岩が間近に見え、秋の空の向こうに両神山の特徴ある稜線が見えていた。荒船の経塚山の岩壁はツツジの紅葉が見事で、白い岩と赤い葉のコントラストが鮮やかだ。

 稜線伝いに兜岩山に向かって歩く。頭上の葉は黄色中心で、まさにそのトンネルをくぐっている感じである。御岳山の分岐を分けて、道は下降する。目の前にはロウソク岩の岩峰が青空に突き出ている。そしてやはり岩壁は赤い色が中心の、紅葉の衣をまとっていた。さらに山全体が錦の衣をまとった、目指す兜岩山が構えている。まさに西上州の登山の季節到来である。

 孫ロウソク岩の基部に着くと、少しの高度感を味わう事ができる。それは南側が切れているからだ。しかしそれほど不安感はない。ルートはここからロウソク岩の基部をまいて通じている。ロウソク岩は兜岩山よりも10メートルほど高いのだが、とても登れるような所ではない。

 まき道を進むと、4月に雪で断念した場所が現れた。雪がないときは、なんともなく通過する事が出来た。まことにあっけない限りである。そして難なくその先の板橋を渡り、先に進むと、道は再び稜線に登り上げた。ここで登山者に3人出会った。皆、単独行で偶然ここで出会ったのである。何となく4人で立ち話をして時間を過ごした。2人は下山途中、1人は登山途中だったので、その人と一緒に登る事になった。聞けば昨日は高妻山に登って、今日は神奈川まで帰る途中に立ち寄ったとの事。なんとも若さとは羨ましい物である。右から田口峠からの明瞭な道と合流して、コブをひとつ越えてから、登りの道をひとしきり進むと兜岩山山頂に到着した。

 山頂は三角点と手製のブリキの山頂標識があるだけで、後は潅木に囲まれて何も見えない。記念撮影をして、西に2分ほど行ってみる事にする。そこは岩の上で、秋の陽射しが暖かく気持ちが良い。西方面に180度の展望があり、特に八ヶ岳の展望が素晴らしかった。ここで先ほどの登山者と1時間ほど雑談をして過ごした。

 山頂に戻り無線機を取り出して、430Mhzのスイッチを入れてみるが、さっぱり声が聞こえない。やはり西上州の薮山、なかなか電波は飛ばないようだ。やっとの事で3局とQSO(1局はNO−QSL)しただけで閉局した。

 帰りは登ってきた道を忠実に辿って戻った。4月には悔しい思いをしたが、今回は簡単に登れてしまった。しかし山は苦しい方が印象に残るようだ。今回のような山行だったらこの兜岩山はあまり印象に残らない山となっていただろう。



 荒船不動尊09:50--(.27)--10:17稜線--(.08)--10:25御岳山分岐--(.07)--10:32孫ローソク岩基部--(.07)--10:39ロウソク岩基部10:47--(.10)--10:57兜岩山山頂12:54--(.46)--13:40荒船不動尊


                      群馬山岳移動通信/1994/