腕力で登った「十二ヶ岳」
登山日1994年3月19日


十二ヶ岳(じゅうにがたけ)標高1201m 群馬県吾妻郡・群馬県北群馬郡
十二ヶ岳山頂
3月19日(土)

 気象情報では、午後から雨が降り出すとの事だった。それも南部が中心であるとの事らしいので、北の方面の山に出かける事にした。なにしろ朝起きてから、行き場所を決めるのだから無計画と言われてもしかたない。いつもの通り自宅を出たのは午前9時過ぎである。

 吾妻郡東村から国道353号線を渡り、小野上駅の西にあたる道を北に入る。道は踏切を渡った途端に狭くなり、これでは大型車とのすれ違う場合は苦労しそうだ。所々に「十二ヶ岳登山口」の標識があるので、それに従って車で進んで行く。道はやがて山の中に入って行くが、舗装された道はさほど走り難くはない。鑷沢(けぬきさわ)沿いに登って行くと舗装も終わりダートに変わる。この林道は延長工事中で、いずれはこの林道も延長されこの山の雰囲気も変化して行くと思われる。工事の邪魔にならないように、一旦戻って広いところに車を駐車した。

 車から離れ林道を数分歩くと「十二ヶ岳/1時間30分」の標識に出会う。工事中の林道は更に数分で終わり、工事機械がさかんに活躍している脇を通り抜けた。登山道は沢の右岸を並走している。途中には「人面岩」なる標識があったので、どれがそうなのか暫く考え込んでしまった。なんと、岩の角が人の横顔の輪郭になっている所がある。丁寧にも後から書き込んだと思われる、目が付いていた。なんだか人面と言うよりは唇の厚い感じは魚の横顔の方が合っているかも知れぬ。

 杉林の道は単調でさしたる変化もなく、ひたすら登って行くのみだ。途中、「十二岳滝下(せんした)」それからその上には「十二岳滝上(せんうえ)」の真新しい標柱が設置してあった。滝でもあるのかと、周りを見たがそれらしき物は見あたらない。いったい何の標識だったのか、いまだに解らない。

 杉林を抜けると明るい雑木林となり、春の陽射しが暖かい。標高900m付近でも日溜まりの所は木の芽の色が、あおくなりだしている。確実に季節は移っている。雑木林の中の道を詰めていくと、やがて尾根にたどり着く。ここからは十二ヶ岳のピークの岩壁が大きく見えている。尾根の手前の標識の所まで戻って、右にトラバース気味に付いている道を歩く。

 小さな枝尾根を越えて少し進むと、中岳と十二ヶ岳の間のコルに出た。ここはちょうど十字路になっていて、立派な十字路標識があった。左に曲がって残雪の尾根道を進むと、十二ヶ岳の立派な山容が近づいてきた。

 やがて道は分岐する。右が山腹を巻いて登る女坂、左が十二ヶ岳に直登する男坂だ。少しでも早くピークに立ちたいので男坂を登る事にする。ところが参った。とてつもない急登だ。おまけに足元は表面がぬかっていて、その下が凍っているという代物である。そのために滑ること、このうえない。滑ったら潅木があるから、さほど滑落はしないだろうが、泥まみれになる事は間違いない。したがって当然これらをカバーするために、両手で潅木につかまりながら登る事になる。三点確保が必要で、これではまるで岩登りに等しい登りとなってしまった。腕力で登っているような物だから、体重の重い私はこうした登りは実に苦手だ。この急登の道の為か、道がいくつかに分かれて登っている。男坂から分かれたオカマ坂かも知れぬが、それとて急登にかわりはない。(オカマの道も厳しいのかも)悪戦苦闘の末やっと山頂(1200.9m)に到着する事が出来た。

 山頂には4人組のパーティーが山頂の一角を陣取り、酒盛りの最中だ。かなり賑やかだ、おまけに山頂標識は彼らの衣類の乾燥場と化している。簡単な挨拶を交わし、二等三角点を確認してから、山頂の隅の方に陣取った。今日は暖かい、陽射しも春のものだし、風も無風に近い。但し春霞の為に展望は望めなかった。見えるのは残雪の小野子山、そして微かに子持山の輪郭が解る程度だ。山頂は雑木もなく360度の展望がある訳なのだが、目の前にある筈の榛名山塊でさえも良く見えない。

 食事をして無線機のスイッチをいれる。430Mhzは相変わらずトラックの連絡用だけだ。1200Mhzを聞いてみると、新宿のJOCX−TVのクラブ局が出ていたのでQSOをした。もちろん山頂名の記入もお願いして置いた。
 標高1200mの十二ヶ岳で、1200Mhzで、出きればテレビ東京(12ch)なら最高だったがそうも行くまい。

 山頂であまりにも気持ちがいいので2時間近くも休んでしまった。帰りは来たときの男坂を下るのはとてもかなわない。そこで女坂を経由して下山する事にした。山頂から男坂と反対の明瞭な道を下る。100mほど下ると標識があり、右に曲がって緩やかに下って行く。北側の斜面なのでまだ残雪が深く残っている。それでもあの男坂を下るよりはましだ。難なく男坂との分岐に到着した。

 下山は忠実にそのまま登ってきた道を下った。

 林道に着いたところに沢があり、水が流れている。思わずその水で顔を洗ったが、実に気持ちが良かった。季節が変わった事をあらためて感じた。

 十二ヶ岳は展望が良さそうなので、空気の澄んだ季節に、ぜひもう一度来てみたいと思った。



林道終点10:30--(.25)--10:52滝下--(.07)--10:59滝上--(.17)--11:16尾根--(.10)--11:26コル11:31--(.03)--11:34男坂・女坂分岐--(.15)--11:49山頂13:43--(.08)--13:51男坂・女坂分岐--(.36)--14:30林道駐車地点



                        群馬山岳移動通信/1994/