たくみの里の「泉山(利根郡)」
登山日1997年3月1日


泉山(いずみやま)標高830m 群馬県利根郡
麓から見上げる泉山
 猿ヶ京付近の山を去年から登り始めたが、なかなか味わい深い山が多く、何度も通う羽目になってしまった。

 3月1日(日)

 利根郡新治村の須川小学校付近は「たくみの里」として売り出している。そこには様々な伝統工芸を観光客に紹介している。もちろん販売もしているが、結構な値段がつけられており、庶民にはちょっと手が出ない。その「たくみの里」付近には気になる山がいくつか点在している。その中でまだ登っていない「泉山」に登ることにした。

 「たくみの里」に入り「泰寧寺」という寺を目指す。案内板を頼りに、静かな朝の道を車でゆっくりと走ると「泉山」の双耳峰が際だってくる。「泰寧寺」の駐車場はかなり広く、駐車してある車はまだ一台もなかった。

 支度をして泰寧寺の境内に向かって歩き始める。川に掛かる石橋を渡り、石段を登ると立派な山門が出迎えてくれた。この山門はかなり古いものらしいが、興味のないものにとっては全くわからない。さらに石段を登ると正面に本殿、右に鐘楼があり、その手前の庭木は名前の知らぬ蝋細工のような黄色い花が咲いていた。

 本殿の左に回り、墓地を抜けて杉林の中に入る。雪の上は全く人が歩いた様子がなく、けものの足跡さえも見られなかった。それにしても今日の雪はなかなか手強く、表面が堅いのに中が柔らかいのだ。だから大丈夫かなと足を乗せても、いきなり踏み込んでしまって疲れる。

 道は植林のための道が見られるが、ともかく沢状の地形に沿って上部を目指す。ところがツボ足の歩行のために、なかなか前に進まない。時折歩くのを止めて息を整えるのだが、振り返って見ると、泰寧寺の本殿の屋根が間近に見えるので、さほど進んでいないと感じる。

 これではたまらないと、沢状の地形から尾根に登ることにした。ところがとんでもない急登で、ピッケルを背中にしまって両手を空けて灌木につかまって登ることにした。ツボ足のラッセルも大変だったが、それと同時に急登もさらに大変になってしまった。再び少し登っては息を整える事にした。ここで、無線機から猫吉さんから私を呼ぶ声が聞こえてきた。

 今日は猫吉さんと予定を組んでおり、猫吉さんは「保戸野山」私は「泉山」を登った後に合流して、「唐沢山」に登ることになっていた。猫吉さんはいま起きたところで、これから食事とのことだ。どうやら私の方が先行しそうな雰囲気である。

 尾根に登りあげると、雪はかなり少なくなって歩きやすくなった。そして一気に山頂に立つことが出来た。

 山頂は展望はなく、松の木におなじみの山頂標識が取り付けてあった。KUMOはここでは見つけることは出来なかった。展望もないので三角点を手前に入れて記念撮影をした。「泉山」は双耳峰であるが、三角点のある南峰よりも、北峰のほうが標高も高く見晴らしが良さそうなのでそちらに移動することにした。

 ピークから降りて鞍部に行くと、西方面からかなり広い道が登ってきていた。この道を利用すれば、軽トラックなら登って来ることは可能かもしれない。北峰は南峰よりも若干標高が高く、見晴らしも北方面が開けていて素晴らしい。間近には高畠山とその岩壁が朝日に照らされて、遠方には真っ白な谷川岳が青空の中に浮かんでいた。

 南側の斜面のマンサクの花は、逆光の光の中で黄色い花びらが透き通って映えている。ここで今度はこちらが猫吉さんを呼び出すと、まだ出発をしていない様子。時間的には完全にこちらがリードしている事になる。そこでゆっくりと、無線機をセットしてQSOを楽しんだ。

 帰りは鞍部から一気に下山したら所要時間は15分であった。

 さて今度はいよいよ「唐沢山」に登るわけだが、猫吉さんはどうなっているだろうか?無線で呼び出すと、雪に阻まれてなかなか思うように行かず、まだまだ先は長そうだ。そこで、こちらが先行して「唐沢山」に取り付くことにする。

 国道17号線に戻り、新三国大橋を渡って坂道を登り、法師温泉の道と分かれてさらに進むと「三国TS」と言う広いチェーン装着場がある。ここに車を止めて道を戻ることにする。すると送電線が国道の上を通過しているところがある。そして送電線の下は刈り払いがなされているので、それに沿って山に入ることにした。

 刈り払いがされた送電線の下は、雪が積もりまるでスキー場のようになっている。そして今日の雪は、歩く度に膝まで潜り込む、まことに扱いにくいものだ。なんとか上部の鉄塔までたどり着いたときは、もうすっかり疲れてしまった。鉄塔の土台のコンクリートの上で、しばし景色を眺めてぼんやりと過ごした。目の前には、猫吉さんが登っている保戸野山が大きく見えている。目を凝らせばその姿が確認出来そうな距離だ。

 鉄塔からは尾根伝いに上部に登ることになる。植林の境界に沿って歩くので迷うことはなさそうだ。それにしてもツボ足のラッセルはきつく、何度も引き返したくなってくる。そのうちに雪に埋もれてはいるが、明らかに幅の広い林道に出会った。しかしこの林道は尾根をかすめているだけで、登山には利用できそうにない。

 さらに上部に向かって歩くが、なかなか高度が上がらない。

 そしてついに正午になってしまったが、標高は1000メートルに達していない。頭の中はもう登る気はなくなっていた。ザックを下ろし、ガスコンロで「カレーうどん」を煮込み始めた。そのうちに無線機から猫吉さんの、「保戸野山」登頂の一報が入ってきた。あちらも既に唐沢山は諦めているようである。唐沢山以外の山も候補に挙がったが、結局はお互いに断念することになった。

 お互いに山を下りて合流したのは午後2時を回っていた。

 それからは時間も早いので奥平温泉「遊神館」で一浴して、様々な情報交換をしてから帰宅した

 「記録」

   泰寧寺07:02--(1.00)--08:02泉山南峰08:09--(.06)--08:15泉山北峰09:17--(.15)--09:32泰寧寺

                    群馬山岳移動通信/1997/