いたれりつくせり「岩櫃山」
登山日1994年2月27日


岩櫃山(いわびつやま)標高795m 群馬県吾妻郡
山頂からの展望
岩櫃山はその特異な山容から、一度は登って見たいと思っていた。 岩櫃山の麓を車で通過する事はあっても、なかなかその機会がなかった。


 2月27日(土)

 JR吾妻線の郷原駅(無人駅)に車を駐車して北の方角を見ると、 岩櫃山の山容が荒々しく迫っている。天候は時折、風花であろうか白いものが落ちている。わたしの地方ではこれをハーテと呼んでいるが、これは疾風(はやて)が訛ったものだと聞いた事がある。確かにこれを見るときは寒い。

 車を離れ東に向かい100m程度で左に折れて踏切を渡る。ここで駅のホームを通ってくれば、時間短縮が出来たと気が付いた。暫くは舗装の車道を歩く事になる。所々に立派な標識があるので迷う事はない。特に「赤岩通りコース」と「密岩通りコース」の分岐にあるものは立派だ。銭湯の壁に描かれた絵のようなものに、コースが書いてあるのだが、役に立ちそうもない。とにかく民家の中を道をひたすら歩く。途中には「カラオケ岩櫃山」なんて俗っぽい看板も目につく。

 車道を登り詰めたところで右に折れて、畑の中の道に入る。ここが実質的な密岩通りコースの登山口と考えていいだろう。歩きながら注意深く見てきたが、車を駐車するのは郷原駅以外にはなさそうだ。路上駐車は殆ど不可能だと思われる。畑の中の道にはいるとすぐに町営水道の配水池がある。ここには骨董品の様な水位監視表示機があり、アナログの表示板は何となく昔に戻った様な、懐かしさを感じる。

 杉林の中の道に入ると道は急に登山道らしくなった。所々に「山野草をとるな」「イワヒバを採ったら罰金」などの看板が多い。杉林もすぐに終わり雑木の中の道に変わる。途中「密岩神社→」の標識があったが、そちらには足を向ける事無く、ひたすら登る。

 このあたりから登山道が急に良くなってきた。おそらく整備が始まって間もないのだろう、階段状にプラスチック製の丸太が組んである。しかし、この人工的な材料はその上に乗ると滑るので、あまりその上には乗らないようにした。やがて鎖が現れてきた。その鎖はまだ新しく、メッキが光っているし、不要と思われるところにも設置してある。また次に現れた梯子などは、ペンキの匂いまで感じさせた。

 道はやがて稜線のコルに着く事になる。稜線の反対側の斜面は登ってきた南側とは対象的に、雪で埋まっていた。また風花が激しくなってきて、まるで雪が降っているようだ。コルから右の道を辿る。道は積雪があり滑り易いが、いたれりつくせりの鎖があるので比較的楽に登る事が出来る。天狗の懸橋と呼ばれるナイフリッジの難所はバイパス出来るようになっていて、その下を通れるようになっている。安全を考えて、そのバイパスを通る事にする。なんとここには転落防止用にネットが張ってある。なんとも素晴らしい登山道整備状況である。ここを抜けて鎖につかまり数メートル登ると岩峰に出た。この岩峰は潅木があり、あまり展望が利かない。

 登山道は岩峰から一旦下って、続いている。ここで下りはじめて数歩のところで、おもいいきりしりもちをついてしまった。道に積もった雪が凍結して、ツルツルになっていたのに気づかずにいたためだ。ダメージは大した事はなく、手首に擦過傷を負っただけだった。幸いに美庭骨は大丈夫だ。何とか起き上がり歩き始める。

 下りきると再び大きな岩峰が立ちふさがる。ここはなんと岩に穴が開いていて、道はここを抜けて続いている。しかし、私の巨体はすんなり通り抜けられないのが、なんとも情けない。穴を抜けると岩櫃山のピークの直下に出るが、ルートは右に巻いたところにあり、再び鎖と梯子が設置してある。ここを越えると南側の郷原駅周辺の民家の屋根が良く見えて、かなりの高度感を味わえる。そのまま右に巻いたところに山頂に続くルートがある。やはり鎖が懸かっており、それにつかまって登ると今度は2m程度の梯子がありこれを登ると山頂にたどり着いた。

 山頂は若干広い場所があり、山頂展望板が設置されている。またその場所の一角には更に1.5m程度の高い場所があり、ここには4等三角点を示すプレートが埋め込まれていた。「No103747・この測量標を移動すると測量法により罰せられます・国土地理院」と書いてある。しかし、これを移動するには、かなりの機材が必要だ。山頂からの展望は屹立した岩峰であるだけに360度が見渡せて抜群だ。上信越の国境の山が手にとるように解る。遠方にはこの岩櫃山と似た山容の妙義山も見えている。無線機のスイッチを入れたがあまり聞こえない。子持村の移動局が出ていたので、お声がけをしてQRTとなった。

 山頂から降りて赤岩通りコースにて帰る事にする。

 再び岩峰があり鎖が設置してあるが、使う事もなく難なく通過して、雑木の中の道にはいる。道は一旦、沢の中に入る事になる。沢の中は雪が詰まっておりかなり雪深い。所々に動物の足跡が見られるが何のものかは解らない。道は沢を抜けて右に曲がると標識があり原町に行くものと分岐する。その先の尾根を越えると今度は「郷原→」の標識が現れた。しかしその先にもこの標識があり、全く別の方角を差している。とりあえず手前の標識に従って右の斜面に下る事にする。ここには鎖が設置してあり、ここの岩を見ると何やら赤い色をしている。これが「赤岩通りコース」の語源かと納得した。

 雑木の林を少し下ると畑の中の道に交わり、右に向かうとすぐに民家の立ち並ぶ道に出た。

この岩櫃山、スリッパで登った人がいると言うが、とても信じられない。

「記録」

郷原駅10:43--(.16)--10:59密岩通り登山口--(.04)--11:03杉林--(.22)--11:25コル--(.04)--11:29岩峰--(.09)--11:38岩櫃山12:58--(.31)--13:29農道--(.15)--13:44郷原駅

                         群馬山岳移動通信/1994/