林道を辿って「富士浅間山(西上州)」
登山日1995年2月6日


富士浅間山(ふじせんげんやま)標高899m 群馬県甘楽郡
富士浅間山山頂
 2月6日(月)

 「富士浅間山」については石井光造氏の著書に記述があったようだが、本屋で立ち読みをしただけなので記憶が曖昧だ。2万5千分の1の地形図を眺めても、この山に達する道は記されていない。ともかく道が狭い事を予想して、ミニバイクで移動する事にする。

 寒い!とにかく寒い、下仁田町あたりまで来ると全身に震えが来た。おまけに道は前日の雪が日陰に残っており、緊張しながら走行するが、二輪はとにかく不安定な乗り物である。カーブではタイヤがスリップするのが解る。

 南牧村にはいり、南牧川に架かる小沢橋を渡って「黒滝山不動寺」に続く道をたどる。「南牧村消防団第3分団第3部」の詰め所の所を左折すると、道はかなり狭くなる。そのまま道なりに行くと、金比羅様の石灯篭が左にあり、その先が分岐している。ここには「黒滝山不動寺 2.5km」と書かれた立派な緑色の標識がある。矢印は直進するようになっているが、左に折れて「焼山橋」と言う小さな橋を渡り、いよいよ山道に入る。しかし、なんとここに入って10m程で、通行不能となってしまった。水道工事で道が掘り返され、ミニバイクとは言え、とても通行できそうにない。

 近くにあった民家の庭にミニバイクを置く事にした。黙って置く訳にもいかないので、挨拶に行くと、快く了解をもらう事が出来た。そしてさらに、貴重な情報をもらう事が出来た。それは「富士浅間山」は焼山峠まで行かずに、手前500mの所から右に作業道がある、それが登り道だという。地形図を見ると、たしかに焼山峠の手前1000mに山に向かう道がある。しかしそれは300m程で切れており、山頂には達していない。距離もその人が言う焼山峠から500m手前ではなく、2倍の1000mあるのが気にかかるが、ともかくこの地形図の道の辿って見る事にする。

 民家を後に歩きだすと道は工事の為にいたるところが、掘りおこされていた。やはり期末なので工事が多い事は予想しているが、あまりにも多すぎる。しかし道の谷側にある簡易水道の施設を過ぎるとその工事も終わり、足跡の無い雪の積もった道になった。道を大きく折り返して少し歩くと、沢に架かるガードレールの付いた橋を渡り、道が分岐する。この左の山に向かっている道が、おそらく地形図の破線で書かれた道なのだろう。しかしコンクリート舗装の素晴らしい林道である。

 道は右に左にと、折り返しながら高度をあげていく。やがてコンクリート舗装が終わったが道はあまり荒れていない。雪と工事が無かったら、快適にミニバイクで登れる道である。汗がにじむ頃になると、右手に見えている「幕岩」の岩壁が次第に同じ高度になってくるのが解る。

 それにしてもこの林道は何処まで続いているのだろうか。一向に行き止まりになる気配はない。それどころか山頂に続いているようにも見える。「富士浅間山」と思われるピークは、谷を挟んだ左の尾根の先にあるピークと思われる。それは「幕岩」の位置からみて、間違いない。しかしそうであっても、上部の稜線に着けばそれを辿って、山頂に着けそうなので、さほど心配はいらないようだ。

 この道の所々には無数に動物の足跡が残っている所を見ると、この山は食べ物が豊かなのだろう。手に持ったストックの石突きが、小石に当たって山にこだまする、静かな山だ。やがて林道はついに、上部の稜線に達してしまった。そして更に稜線に沿って続いているが、林道は背丈寄りも高いカヤが密生している。それをかき分けて歩くと、道は下りはじめてしまい、「富士浅間山」のピークと思われる所から離れていく。そこで適当な所で林道から離れて、雑木の林の中に踏み込んだ。落ち葉の中の歩き易い所を見つけて、上部を目指す。

 やがて目の前に大きな松の木がある稜線にたどり着いた。ここではじめて赤い目印と思われる、紐が結んであるのを発見した。人が入っている証拠があったから、ともかく一安心である。この稜線を辿ると、すぐに石祠がある山頂に到達する事が出来た。

 石祠はふたつあり、ひとつは東に、もうひとつは南を向いていた。東を向いているものは、中にリポビ○ンDの空瓶が収められていた。山頂は南北に10mほどの長さで、お馴染みのブリキ板で出来た山頂標識が、木に打ち込まれている。三等三角点も綺麗な形で、埋め込まれていた。山頂からは「大屋山」が間近に見え、先ほど山ランのカウントを拒否された、不遇のピーク「立岩」がやけに立派に見えていた。

 山頂からは430Mhzで2局、交信を行い山頂を後にした。

 この山は今の時期に登るのが最適である。何か薮が深そうな気配があったからだ。なお最初の橋の所のガードレールの柱と、林道から別れて山に入るところの2本の杉の木に、青いビニールテープを巻き付けて置いた。



「記録」

10:19焼山橋の民家--(.08)--10:27林道分岐--(.45)--11:12林道を離れる--(.14)--11:26稜線--(.08)11:34富士浅間山山頂12:14--(.46)--13:00民家


                        群馬山岳移動通信/1995/