西上州のマイナーコース「ゴシュウ山(仏岩山)から物語山   
                                                登山日2009年3月28日






荒船湖と浅間山

ゴシュウ山(ごしゅうさん)標高940m 群馬県甘楽郡/物語山(ものがたりやま)標高1019m 群馬県甘楽郡





ここのところ野暮用続きで山に行く事が出来なかった。そろそろ山に行こうと計画していたが、当日の県北の山は天候が悪そうだ。どうしようかと考えていたら、職場のTさんが西上州の山に行くという。そこでその計画に便乗する事にした。Tさんの計画は相変わらすマニアックで、ちょっと考え付かないものだった。それは、鹿岳の北西にある木々岩峠から、ゴシュウ山(仏岩山)に至り、そこから西進してから物語山まで行こうと言うものである。これは、車二台を使うことが必須条件であるこから、はじめから二人で行く事を考えていたのかも知れない。


3月28日(土)

Tさんとコンビニで待ち合わせてから、下仁田町のサンスポーツランドに向かう。自宅からサンスポーツランドまで30分で来る事が出来るからホントに地元の山と言ってもいいだろう。Tさんの車をデポして、わたしの軽トラックで馬居沢の集落に向かう。集落を過ぎると道は軽トラックがギリギリ通れるほどの細い道となった。未舗装の道を登りつめると林道はT字路となった。そこにはプラスチックのプレートが立木にかけてあり、「木々岩峠← →御神木」とある。さてこの先は道の様子がわからないので、ちょっと下にある簡易水道の取水場に軽トラックを駐車して置く事にした。


駐車地点から、T字路は左の「木々岩峠」に向かって林道をひたすら歩く。道はそれほど荒れていないので、軽トラックでも充分に走行できる。ちょっと失敗したかなと思ったが、いまさら戻る事も面倒なので、このまま歩くことにした。途中にはダンコウバイが黄色い花を咲かせ始めていた。春はこんな山の中にも確実にやってきていた。その林道もやがて終点となり、枯れた沢の中に踏み跡が続いていた。ここにはは白いプラスチックのプレートがあり赤テープも賑やかに木々岩峠への道を終始案内していた。水の無い沢の中は石が累々と敷き詰められて、あまり歩きやすいとは言えない。足元のカタクリの花はまだ蕾で、咲くまではあと一週間ほどだろうか。幾筋かの沢を横切って登って行くとプラスチックのプレートがあり左の斜面を登るように示している。ところがこの斜面はかなり急傾斜で、取り付くには気合が必要だ。Tさんは元気良くすでに登り始めているので、今日はかなり調子が良さそうだ。その後を追いかけながら登り始めたが、落石の事を考えて少し横にずれて行く事にした。それにしてもこの斜面は足場が悪く、油断をするとズルズルと滑り落ちてしまうのである。なんとか潅木につかまりながら登るのだが、その潅木も少なく四つん這いになって登るしかなかった。上空は朝方の青空は無くなり、西高東低の季節風が運んできた、鉛色の冷たい雲が覆っていた。耳が痛くなるほどの寒気を感じたので、耳当てのついた帽子を被った。あまりの急斜面で、息も絶え絶えになって登っていると、すぐ側の斜面に林道の白いガードレールが見えている。エエエ!!!!なんと言うことだ。苦労して登っているのに林道がすぐそこまで来ているとは、なんとも気力が失せる光景がそこにあった。この斜面も上部に近づくにつれて、やっと傾斜が緩くなり立って歩けるようになり、さらに稜線に近づくと鹿岳の特徴ある鋭鋒が次第に競りあがって見えてきた。


軽トラックを停めた取水場付近

木々岩峠への標識

急登をひたすら登る

突然現れた林道


たどり着いた稜線には木々岩峠のプラスチックのプレートが掛けられていた。どうやらこの辺はこの手の篤志家が、プレートを付けたり、テープをつけたりしているのだろう。個人的に言えば、自己満足に過ぎない行為は止めてもらいたいものである。ルートファインディングは、山歩きのひとつの楽しみであり、この楽しみを奪われるような目印は納得行かない。個人名や団体名を記した山頂標識も、個人的には好きになれない。


木々岩峠で休憩後、稜線を辿ってゴシュウ岩に向かって歩き出すことにする。西上州的な気持ちよい稜線はアップダウンを繰り返しながら延びている。めざすゴシュウ岩は次第に大きくなり、これなら楽勝と思ったら、登るときに見えていた林道が目の前に切り開かれて、深い谷底のようになっている。これが林道で寸断されていなければ何の事はない、稜線づたいに歩けたのにいらぬ苦労をしなければならないのは悔しい。林道に向かってバラの藪を慎重に下降した。


ゴシュウ山から物語山

気持ちの良い尾根歩き

ゴシュウ山の十一面観音

ゴシュウ山から妙義山魂


林道に降り立つと、はたしてどちらに」行けばいいのかわからない。とりあえず左に向かったが、のり面を登れそうにない。こんどは右に行ってみると、何とか登れそうな斜面があった。登れそうと言っても、かなりの急斜面で体力を消耗することは間違いない。今回は岩稜歩きを想定していたものだから、ストックを持参していないことを後悔した。そこで落ちていた木の枝を二本持ってストック代わりにした。これはなかなか優れもので、捨ててもそれまでだ。これからはストックは現地調達がいいかなとも思った。それにしても身体が重い感じがする。歩き始めてからTさんに水を開けられっぱなしだ。単に12mm×40mのザイルを余分に持っているだけでもなさそうだ。それは、ここのところの野暮用による運動不足とコンビニ弁当、宴会続きで体重が増加しているのが原因なのは明白だ。急斜面をあえぎながら登り、先行しているTさんに遅れてゴシュウ山の山頂に到着した。


ゴシュウ山の山頂は石仏と石祠があり、緑青のかかった10円銅貨が傍らに落ちていた。まさか縮んだ訳でもないだろうがこの銅貨はやけに小さく感じた。山頂からは灌木の枝がうるさくてあまり展望はなく、妙義山と浅間山までの北方面がかろうじて開けていた。そして目指す物語山までの稜線は規則正しいノコギリ状ではなく、刃こぼれをおこした鉈のように見えた。これからあの岩稜を越えて行くのだと思うと、不安と期待が入り交じった複雑な気持ちとなった。


ひたすら登る

時には岩場の通過

板状の砂岩を敷き詰めたようだ

リンゴを食べる


ゴシュウ山の山頂をあとにして、西上州らしい両側が切れ落ちた灌木の稜線を辿って歩いていく。ときおり恐ろしいほど切れ落ちた斜面の脇を通る時は緊張してしまう。漫然と二人で雑談をしながら歩いていたらTさんが首を傾げた。事前の調査で地形図を精査していたら迷いそうなところがあり、まさに今いるところがその場所だという。稜線はどんどん下っていき、踏み跡らしきものが伺える。そこで、GPSで確認するとTさんの言うとおり、分岐点を通過してすでに数十メートル歩いてしまっていた。そこで、戻って見ると稜線から外れた斜面に赤テープが見えた。Tさんの事前調査と読図力に脱帽した瞬間だった。


ルートを修正して鞍部に下降するが、入り組んだ尾根筋はわかりにくく平坦な樹林帯のようになっている。天候が悪いときなどは迷う可能性が充分ある場所だ。鞍部からは再び苦しい登りに取りかかることになった。今回のルートは実に登りがきついと感じる。ふたたび枯れ枝を拾ってストック代わりに登ることにした。まあ、これだけでも疲労はかなり軽減されるだろう。板状の砂岩が敷き詰められた場所を過ぎると、物語山に通じる稜線はすぐそこだった。


稜線には白いプラスチック板に「←物語山」とあり、人が歩いている事を連想させた。ここまで来れば一安心、腰を下ろして休むことにした。Tさんが持ってきたリンゴを肴にして日本酒を飲み干した。それにヤキソバパンをひとつ腹に流し込んだ。当初はトヤ山も視野に入れていたが、とてもそちらに回る気力はすでになかった。分岐から物語山への岩稜の道は、実際に歩いてみるとさほど危険は感じなかった。ただし、いやらしい斜面のトラバースは緊張しながら通過することとなった。ローソク岩は名前の通りで10mほどの岩塔になてちた。とりあえず基部まで行ってみたが、疲れから登ることは止めて先に進むことにした。岩稜は概ね右側が切れ落ちていて、左側は比較的なだらかだった。途中にあるいくつかのピークで展望を期待したが、灌木に阻まれてあまり望むことが出来なかった。物語山もかなり近づいた所にある960mのピークは展望も良く、今まで歩いてきた稜線のルートを振り返ることが出来た。鹿岳はすでに霞んで青みを帯びて見えている、つくづく良く歩いてきたものだと感心しながら腰を下ろして、コロッケパンとポットに入れてきた白湯を飲んだ。


ロウソク岩を見る


ロウソク岩基部

ザイルを結局は使わなかった

鹿岳からの辿った縦走路


960mのピークピークからは、ただひたすら歩くだけだった。これまたきつい最後の斜面を登り切るとなんとか平坦な物語山の山頂までたどり着くことが出来た。山頂には誰の姿もなく貸し切り状態だった。再びここで腰を下ろして大休憩となった。まだまだ高い高度にある太陽の光を浴びた。あとは下りだけだと思うと、緊張感も薄まり疲労感が増してきたように感じた。


物語山山頂

鹿岳を下る



「記録」
取水場07:06--(.40)--07:46林道終点--(.28)--08:14木々岩峠08:25--(.08)--08:33林道--(.36)--09:09ゴシュウ山(仏岩山)09:19--(1.56)--11:15稜線分岐11:31--(.17)--11:48ローソク岩--(.35)--12:23960mピーク12:55--(.29)--13:24物語山13:54--(.21)--14:15林道--(.48)--15:03サンスポーツランド


群馬山岳移動通信/2009


GPSトラックデータ
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。
(承認番号 平16総使、第652号)