体調を崩した大源太山と七ツ小屋山
登山日1998年4月29日




大源太山(だいげんたやま)標高1598m 新潟県南魚沼郡/七ツ小屋山(ななつこややま)標高1675m 群馬県利根郡・新潟県南魚沼郡

丸木橋を渡る
  4月29日(祝)

 猫吉さんと計画していた山は、諸々の事情で二転三転して、結局は上越国境の大源太山と決まった。仕事を終えて慌ただしく準備を行い、待ち合わせの場所に向けて出発した。

 関越道湯沢ICから標識に従って、夜道を走行する。途中から無線で猫吉さんと連絡を取りながら大源太林道に入る。林道は簡易舗装が一部なされており走行しやすい。そして大源太橋の脇の駐車余地で合流してに車を止めた。

 酒盛りをして1時頃眠りについたのだが、夜中の2時頃に周囲が騒がしいので目が覚めた。山菜取りの人の社が何台か通過したからだ。それからは眠れぬまま夜明けを待つ羽目になった。結局、5時頃起き出してしまった。そのころはまだ隣の車中の猫吉さんは熟睡しているようだった。

 大源太橋に車を置いたまま、林道を辿って歩き始める。10分弱で林道の終点に到着、ここにも広い駐車余地があり、ここまで車を持ってくれば良かったとちょっぴり後悔した。
これからしばらくは杉の植林の中を歩く。

 やがて沢音が耳に入り、そして雪解け水が飛沫を上げて流れる沢に出た。しばらくはその沢の右岸を歩くことになる。すると突然、道は幅10メートル程の沢に入り対岸に抜けている。そして沢には二本の丸太を、ロープでまとめて渡した簡単な橋が架けてある。橋の中程は水が掛かり、いかにも滑りやすそうな状態になっている。これを渡るのが嫌なら、冷たい沢の中に入り、腰まで水に浸かり渡渉をするしかない。

 猫吉さんの先を失礼して、最初に丸木橋を渡ることにした。慎重に足を運び滑らないように歩く。何しろ後ろでは猫吉さんが、カメラを構えて決定的瞬間を狙っているからよけいだ。緊張しながらも、なんとか対岸に到着。こんどはこちらが猫吉さんにカメラを向けて決定的瞬間を狙った。ところが猫吉さんは予想に反して、バランスをとりながら一気に橋を渡ってしまった。きっとカメラには悠然と丸木橋を渡る猫吉さんの姿が記録されたに違いない。

 丸木橋を過ぎて、小さな沢を二本渡ると、今度は幅7メートルほどの沢に出た。ここには丸木橋は架かっておらず、申し訳程度に岩が転がっているだけだ。まずは猫吉さんが挑戦してなんとか対岸に到達した。私も渡り始めたが、先ほどの丸木橋と同じでどうもバランスがうまくとれない。足が靴の中で安定しないで動いてしまい、どうにもぎこちなくなってしまう。それは、いつもなら靴下を二枚重ねて履くのだが、今日は一枚しか履いてこなかったのだ。それで靴の中に隙間ができて、足が靴の中で泳ぐようになってしまったのだ。(このことが体調不良の一つの原因となった)それでもなんとか水に浸かることもなく対岸にたどり着くことができた。

 渡渉が終わると、今度は急な斜面を登る道となった。道にはロープが寸断無く張ってあり、条件の悪いときにはこれを使わなくてはならないことがあるのだと思われる。急な斜面を気力だけを頼りに喘ぎながら登ると、後ろの猫吉さんとの距離がどんどん離れていく。
そこでタムシバの白い花が咲く木の下で休むことにした。ほどなく猫吉さんが到着、暑いので上着を脱いで、スパッツも外したという。確かに今年は雪が少なく、登山道にはいつもならまだ咲き始めるヤマザクラの花びらが、今年は既に落ちている。

 再び歩き出すと、登山道には春の花が咲き乱れるすばらしい道となった。イワウチワは絶えることなく道の脇に咲き、その間にはショウジョウバカマ、アズマイチゲ、カタクリの花が咲いている。この時期にこれだけの花が咲くというのも例年では見られない事だろう。それにしても相変わらずの急登で汗が止めどなく出てくる。

 標高1300メートル付近で灌木も少なくなり展望が開けた。目指す大源太山の山容も姿を現したが、山頂部分はガスが巻いて見ることはできない。どうやら天候は下り坂のようなのでこの付近で休憩することにした。道の脇の岩に腰掛けて周りを見渡すのだが、雪は谷筋に見られるだけで、傍らのマンサクは今が盛りと咲き誇っている。それにしても座っていると、なにやら眠気が襲ってくる。夕べの寝不足が効いているらしいことは明らかだった。

 ちょっとした岩場を越えて、さらに歩くとなんとあっけなく大源太山の山頂についてしまった。おもわず「ここが山頂?」と猫吉さんとお互いに聞き直したほどだ。それはなにか登山道の途中でもあるようで、さらに周りがガスで隠れているので展望が無い事もある。

 ともかく、猫吉さんは144Mhzで無線運用を始めた。私は430MhzでCQを出していた長岡市の局と交信を行った。その後記念撮影をして次の七ツ小屋山に向かうことにした。

 七ツ小屋山へは大源太山の岩場を、急下降して行かなくてはならない。一部には鎖場があり不安はさほど感じられない。しかし、ここに来て猫吉さんの歩くスピードが恐ろしく速くなってきた。こちらも急いでいるのだが、全く追いつけない。それは、私は足が靴の中で泳いでいるので、下降となると足の指がつま先に当たって泣き出したいくらいなのだ。
それに猫吉さんは、11時を過ぎると体が朝の眠りから起き出して、体調が良くなると言う特異体質なのである。そんなわけで、霧の中に消えそうになる猫吉さんの姿を見失わないように歩くだけで必死となった。

 道は一旦下ってから、小さなコブを越えてから徐々に登りとなる。道にはカタクリの花が多く見られ、場所によってはカタクリを避けて歩くのが困難なほどだ。そして傾斜が緩くなり草原状の場所に出た。ここには標識があり左は清水峠に向かう道が明瞭にガスの中に延びていた。そこから我々は左に折れて数分歩くとそこが待望の七ツ小屋山山頂だった。

 山頂からの展望は、ガスに阻まれて全く見えない。ここまで苦労して登って何の展望も得られないとは、ちょっぴり残念だ。持参した携帯電話で自宅と連絡をとると、なんと関東地方は晴れて暑いくらいだという。

 七ツ小屋山では猫吉さん430MhzでCQを出したが応答が悪いらしい。私はせっかくなので持参したピコ6+DPをセットしてCQを出している人にお声がけをして無線は終了した。山頂滞在は1時間ほどだったが、アッという間に時間が過ぎて下山に取りかかった。

 これからの私の下山は足の指がつま先に当たり、苦痛に顔をゆがめての下降となった。立ち止まって休むにしても下を向くと痛いので、上を向いて休むという始末。それにロープがあるところは、それにつたわって後ろ向きに歩いた。

 そんなわけでかなりの疲れと、寝不足のためだと思うが、林道に出る寸前で嘔吐をしてしまった。久しぶりに山がとてもきついと感じた。



「記録」

 大源太橋07:23--(.09)--07:32林道終点--(.15)--07:47丸木橋--(.17)--08:04渡渉--(.26)--08:30休憩08:50--(.42)--09:32休憩10:02--(.29)--10:31休憩10:52--(.07)--10:59大源太山山頂11:41--(.44)--12:25清水峠分岐--(.03)--12:28七ツ小屋山山頂13:20--(.40)--14:00大源太山山頂--(1.17)--15:17渡渉--(.15)--15:32丸木橋--(.18)--15:50大源太橋


             群馬山岳移動通信/1998/