冬と春を分ける尾根「雨降山」   登山日1994年2月11日


雨降山(あめふりやま)標高1013m 群馬県多野郡
カエルのおんぶ岩

 雨降山は神流湖の北西に位置しており、御荷鉾山の稜線の東のはずれにある。

2月11日(祝)

 この時期は何処に出かけても道路工事が多く渋滞でイライラする事が多い。特にこの鬼石の周辺の道は、工事用の信号だらけである。またここは採石用のダンプカーの往来が多く、これも渋滞の原因にもなっているらしい。神流湖畔の夜沢で右折して御荷鉾スーパー林道に入る。道は南に面している為か雪が見あたらない。しかし道はかなりの悪路で、ゆっくり走って路面を選ばないと車が分解してしまいそうだ。途中、採石用のダンプとすれ違ったが、道幅が狭くかなり慎重になってしまった。

 雨降山の登山口は立派な標識が立っており、さらに林道が奥に続いている。ちょっと道に不安があるので車は、ここの標識のところに駐車する事にした。

 車を離れ林道を歩き始めた。林道はさほどの悪路でもなく、これならば十分に車で入れたと後悔した。この林道は行き止まりになっていて、ここが実質的な登山口である。「雨降山→」と「NHK−TV中継所→」の標識が並んで立っている。道は杉林の中に入っていく。杉林の中の道は風もなく暖かい、また道は杉の葉が敷き詰められて、なんとなくふんわりしている。落ちて古くなったものは茶色に、新しい物は緑の鮮やかさを保って層をなしている。

 林道終点から15分ほど歩いたところで一旦杉林をぬけた。明るい陽射しが一気に射し込み、暖かいので思わず腕捲くりをしてしまった。付近の木々を見ると、何となく春の息づかいを始めているように感じる。

 再び道は杉林の中に入る。ここは信仰の山なのだろうか、杉の木の所々に御幣が下がっている。道の脇には時々きれいな石が転がっているが、これが三波石なのだろうか、興味の無い者には全く価値も分からない。杉林も終わると前方に尾根の稜線が見えてきた。この稜線の手前には大きな岩がある。これが「蛙のおんぶ岩」だ。

 なかなかうまい名前を付けたものだ。交尾の蛙の姿そっくりで、背中に乗っている方はちゃんと身体が小さい、それに恍惚の表情さえうかがえる。しかし良くみるとなんとその周りには、交尾出来なかった雄だろうか、5匹ほど羨ましそうに見ている。なんともリアルな形の岩があったものだ。この岩を過ぎるとすぐに稜線に出た。

 稜線に出た途端に季節が一変した。道には雪がありそれも凍っている。さらに北の谷から吹き上げてくる風がとてつもなく寒い。思わずセーターと目出帽を出した。この稜線からの道にも石碑があり、それぞれに御幣が下がっている。それに台のところには粗塩が盛ってある。状況からみてまだ新しい感じがする。

 さらに一登りすると東峰のTV中継所の建物が見えてきた。ここに着いてみると何やら小屋がある。そして周りには酒の一升瓶がかなりの本数散乱していて、切り口の新しい薪も設置してある。何やらここで宴会が出来そうな雰囲気だ。実際に中から数人の談笑が聞こえてくる。そして外には何の動物か分からぬが山で生業をする人が使う、尻皮とナタが無造作においてあった。中に入るには気が引けたので外の周辺を見てまわった。ここには琴平宮と御嶽大神の三つの碑が立っている。そしてそばには風雨に耐えて曲がった、大きな木がそれらを見渡していた。

 TV中継塔は榛名山の二ツ岳からの電波を中継していると書いてある。さらに興味をそそられたのは風力発電が云々との行だ。今では電力は麓から電線が来ているので、これで供給されているのだろうが、以前は風力発電で電力をまかなっていたのだろうか。たしかにそれなりの感じを受ける痕跡を見る事もできた。

 ここから雨降山へは一旦コルに降りてから登り返す。この登りはとてつもない急登だ。それに道が凍り付いている。しかたなくここで簡易アイゼンを装着する事にした。アイゼンを着けるとかなり楽になったが、それでも潅木につかまりながら登る事になった。傾斜が緩くなって楽になるとすぐに山頂に着く事が出来た。山頂は木が多くて展望はきかない。しかし、木々の間から南には神流湖と父不見山が、その東方には城峰山。目を西に向けると御荷鉾山そしてその遠方には八ヶ岳連峰が白く輝いていた。しかし寒い、南の斜面に移動して休む事にした。こちらは少しは暖かい。

 430mhzのハンディ機のスイッチを入れると、今日は何やらコンテストが開かれているらしく、分けの分からない数字の交換が盛んに行われている。周波数を覗いてみたがコンテスト局とトラックの連絡の通信しか入らない。これではダメだとQRTしてしまった。

 帰りは登ってきた道を忠実に辿って下山した。

「記録」

登山口10:45--(.05)--10:50林道終点--(.05)--10:55分岐--(.24)--11:19蛙のおんぶ岩--(.09)--11:28東峰--(.19)--11:47山頂12:42--(.37)--13:19登山口


                        群馬山岳移動通信/1994/