錦繍のを歩く「赤倉山」「備前楯山」   登山日1998年11月1日


赤倉山(あかくらやま) 標高1442m 栃木県上都賀郡/備前楯山(びぜんたてやま) 標高1272m 栃木県上都賀郡

赤倉山の登りの紅葉
 KXW/渋沢さんが、足尾山魂の赤倉山に登るという。赤倉山は去年、渋沢さんに案内してもらった中倉山から、松木川を挟んで見たその姿を見て、是非登ってみたいと思っていた。そんなわけで、連絡をとって無理矢理、同行の許可をお願いした。

 11月1日(日)

 朝焼けが東の空を染めている。こんな時は天候が心配だが、大きく崩れることもなさそうだ。待ち合わせの大間々町のコンビニに集合したのはおなじみの5人で、KXW/渋沢、IAS/中山、FDI/村上、CHR/水沢、そしてHXF/大塚だった。

 それぞれの車に便乗して、国道122号を足尾町に向けて走る。渡良瀬地区を抜けて田元の信号を右折、日足トンネルに向かって神子内地区に入る。ここの適当な余地に村上さんと私の車を置いていくことにする。


***赤倉山***

 ここからは中山さんの4輪駆動車に5人が乗り込み、神子内林道に向かう。赤倉山は当初の計画では、中禅寺湖畔の半月峠から歩く予定だったのだが、この時期の渋滞を予想して、地形図に記載されている足尾町(神子内)から延びる林道経由にしたのだ。

 林道入り口にはゲートがあるが、幸いにも開いているので難なく通過する事が出来た。林道はかなり荒れた場所もあり、4輪駆動車でなければ走れそうにない。谷側はガードレールもなく緊張しながらも、中山さんの慎重な運転操作に安心する。

 そんな林道も標高1100メートル付近で、道が崩壊しており通行不能となってしまった。仕方なく車は適当な余地に置いていくことにする。しかし、ここまで登れば赤倉山は標高差300メートルを残すのみ、だいぶ楽になった。

 5人が、前後になり横になり思い思いに歩き始める。渋沢さんがいると特に賑やかで楽しく、これが魅力となっている。時折振り返ると、鮮やかな木々の紅葉が目に入ってきて実に美しい。そんなお喋りと、景色の美しさに気をとられて、林道の道を登っていくと、後ろから声がかかった。
「このままだと行き過ぎる。ここから沢に下りましょう」
中山さんが地形図を片手に、みんなを呼びとめた。地形図に表されている、半月峠から足尾に通じる破線の道のほぼ中心、標高1300メートルで深沢に降りるジグザクの道がある。中山さんはこれを見ていたのだ。高度計を見るとたしかに1300メートルになっている。これは脱帽である!!集団登山に甘えて、すっかり地形図を確認することを忘れてしまっている事を反省した。

 林道から沢に降りる道は、笹があるもののかなりしっかりしており、標識の痕跡らしき板も朽ち果てて倒れていた。渋沢さんは昔ここを歩いたと言うが、その時の記憶は全くないらしい。

 深沢は水量も適度にあり、その流れは澄みきっていた。ここで初めての休憩、イチゴ大福を口に入れた。

 深沢からは道はなくなり、笹の斜面を適当に登ることになる。笹はおそらく鹿の食餌になっているのだろう、長さが20センチほどに揃っている。それだけ、鹿の頭数が多いと言うことなのだろう。明瞭な枝尾根に立つと、白骨化した鹿の頭部が放置されていた。角の部分は、鋸のような物で切り取られた跡が残っていた。

 この枝尾根から稜線に登る途中は、まさに素晴らしい紅葉の風景がが広がっており、カメラを向けたり、腕組みをして見とれたりと、さっぱりと高度が上がらない。私の後ろの村上さんも、さらに感激したらしく、後ろを振り返ってばかりで遅れるばかり。それほど素晴らしい原色の世界だった。

 稜線に登り上げると傾斜も緩やかになり、歩きやすくなった。時折、カラマツの林に入ると、笹もなくなり、さらに歩きやすくなる。この稜線は枝尾根が微妙に入り組んでいるので、中山さんとマーキングを取り付けながら歩いていく。

 稜線上は、道こそ無いものの時折テープの類があるところを見ると、登山者が入り込んでいることは間違いない。しかし、踏み跡はなく実に気分がよい。しきりに「もったいない!」「贅沢だ!」と口に出してしまった。なにしろ5人の人間だけが、独占しているこの景色は贅沢そのものだったのだ。

 赤倉山手前の広々とした標高1410メートルのピークに立ったときは、全員が思わず歓声を上げてしまった。何しろそこは緑色の笹原が一面に広がり、赤倉山までつながっていたのだ。そしてその中にシラカバ、カラマツが色づいて、点在していたのだ。しばらくはそこを渡ってくる風に吹かれながら、その景色に見とれて佇んでしまった。鞍部は小さな沢の流れがあり、鹿の足跡が無数残されていた。

 赤倉山は双耳峰になっており、まずは三角点のある南峰に向かうことにする。小笹の斜面はさほど苦しくもなく登れる。途中で、クコだと思うが真っ赤な実をいっぱいつけた木があり、これも見とれてしまった。

 三角点の山頂は展望はあまりなく、標識の類も見られなかった。唯一、赤テープにフェルトペンで赤倉山と記された物があっただけだ。記念撮影、奥の手の無線運用後北峰に向かう。ここは山頂から西の斜面を少し下ると中倉山、皇海山方面が見える。再び、東斜面に戻り、広大な笹原を眺めながら昼食にした。

 去りがたい思いを胸に、山頂を後にしたのはまだ正午前だったので、次の山に向かうことになった。


***備前楯山***
備前楯山から赤倉山・半月山・男体山・大真名子山・小真名子山を望む
 備前楯山は足尾に来たら、その名前に惹かれて是非登りたいと考えていた。しかしなかなかその機会に恵まれなかった。

 田元の信号を間藤駅の方向に右折、足尾本山駅を左折して西に向かう。荒涼とした風景の中を車で高度を上げながら上っていく。林道はかなり狭いが、対向車が来てもさほど苦労はしない程度だ。

 舟石峠には大きな駐車余地があったが、重機が置いてあり、あいにくと置き場所は限られてしまっている。早速支度をして歩き出すが、全員ザックも背負わず手ぶらで行くと言う。私も迷ったが、結局はザックを背負い出発した。

 この山は人気があるのか、良く整備された道と標識が完備されていた。しかし、階段状の道の作り方はここも同じで、歩きにくく大きなお世話といった感じが残る。さしたる特徴もない道をひたすら登ると、急に展望が開けて山頂に立つことが出来た。

 山頂からの展望は最高で、先ほど登ったばかりの赤倉山、その奥に半月山、男体山、大真名子山、小真名子山が見えている。目を転じれば中倉山は指呼の距離、盟主の皇海山はその奥でかすんでいた。賑やかに山座同定を楽しんでは、次の山行に思いを馳せた。


 穏やかな秋の一日、充実した気分で下山後は帰路についた。




「赤倉山」

林道(標高1100メートル付近)08:27--(.41)--09:08林道を離れる--(.16)--09:20深沢09:30--(.50)--10:20赤倉山11:15--(.54)--12:09林道--(.24)--12:33林道(標高1100メートル付近)


「備前楯山」

舟石峠13:59--(.36)--14:35備前楯山14:57--(.22)--15:19舟石峠





         群馬山岳移動通信/1998/