西上州の県境尾根の山「赤火岳」  登山日2006年3月21日


赤火岳(あかびだけ)標高1822m 群馬県多野郡・長野県南佐久郡


赤火岳から見る御座山



 赤火岳は群馬・長野県境のぶどう峠の南に位置する。通常に考えるならば、ぶどう峠から県境尾根を辿って到達する事を考えるのだが、最近長野県側には林道が通じているのがインターネットでわかった(あさぎまだらさんの記録)。こうなると、行ってみたくなる。それに季節的には薮が薄くなる今の時期を逃すわけにはいかない。

3月21日(祝)

 ぶどう峠は冬季閉鎖で4月7日まで通行止めになっているので、長野県側からのアプローチとなった。北相木村の「長者の森」と言う立派な総合リクリエーション施設を過ぎると、道はいきなり悪路となった。ツルツルに磨かれた登りのカーブは4駆に切り替えてもどんどん滑ってしまう。特に軽トラックは荷台が軽いので後部がどうしても振られる。なんとか切り抜けたが、帰りはどうなるものかと不安になってしまった。(案の定、帰りはLOWで下ったのだが横になりながら滑り降りる恐怖体験となった)

長者の森を通過する林道ゲート(施錠されていた)





 道はすぐに林道ゲートで遮断されてしまった。ゲートは施錠がしてあったので、手前の余地に駐車してここから歩くことにした。雪を予想して、ワカンを持参してきたのだが、周囲を見ても雪が少なくその必要はなさそうだ。その代わりにここから続く林道はツルツルに凍っていた。脇を流れる相木川も河畔は凍っている。

 まずは林道ゲートをくぐる「白岩三川林道」と書かれた林道は除雪されたことがあるのだろうか。道の両脇には雪がうずたかく寄せられていた。静かな林道で、踏み跡は全く見られない。歩き始めて10分ほどで大きな分岐に出会った。右は「木杣沢林道」(西群馬幹線 109−113)と書いてあった。この林道の除雪はどうやら送電鉄塔の保守の為のものと思われる。ところでこの分岐は「木杣沢林道」方向には曲がらすにそのまま直進する。

 除雪はしてあるものの、ツルツルの林道路面は油断できない。よっぽどアイゼンを着けようかとも考えたが、面倒なのでそのまま歩いた。先ほどの分岐から10分ほど歩くと道が堰堤のとことで再び分岐する。見れば堰堤の上部に続く明瞭な道に古い赤テープが2本巻き付けてある。考えたが、右に分岐するこの赤テープの道を登って見ることにする。道は堰堤の上部の沢に沿って登っていく。しかし、数分で道は行き止まりとなった。これはまずいと思い、先ほどの分岐まで戻った。どうやら、堰堤工事のための作業道路だったようだ。この分岐は堰堤の下の沢に掛かる橋を渡ってそのまま進んだ。

 さらに10分歩くと堰堤が現れて再び道は分岐した。今度は迷わずに堰堤の下の橋を渡って林道を進んだ。どうやら、道が分岐したら左の道を選択すれば間違いなさそうだ。そのとおりで、再び10分で道が分岐したが、今度は堰堤は無かった。GPSで確認すると右の道はあきらかに赤火岳から遠ざかってしまう。そこで今度も同じように左の道を選択する。

 この道は大きく左にカーブしてなだらかな坂道をのぼり、広場状の場所を右に大きくカーブして坂道を下る。すると目の前に赤火岳と思われるピークが確認できた。ピークは意外と間近に見えるので、これが本当に県境稜線の1822m峰かと疑いたくなる程だ。林道を下りきるとそこは広場のようになっていた。朽ち果てた波板と柱があるところを見ると作業小屋があったのだろう。ザックを下ろして、山頂へのルートを検討する。
堰堤の道(思わず右に行きたくなる?)最後の分岐(左に行く)
林道終点(小屋の残骸がある)取り付き点(沢の右の疎林の斜面を登る)

 それにしても笹が深く、尾根筋は登れそうにない。沢は上部がどうなっているのか不明である。再び林道を戻って全体を一望出来る場所でルートを探す。すると、沢筋の斜面が疎林になっており、積雪もあることからここを辿って、とりあえず上部に行こうと考えた。とにかく、初めからヤブ漕ぎはゴメン被りたいからである。

 まずは、この疎林に取り付くと意外と歩きやすいので安心した。まして適度な積雪で下草も押さえつけられて歩きやすい。暖かい春の日射しを受けて、徐々に登っていくと、尾根筋が意外と早く見えてきた。幸い、この疎林は尾根まで続いているようなので安心だ。振り返ると、赤白の塗装を纏った送電鉄塔が、何ともこの風景にそぐわない格好で見えていた。

 尾根に辿り着くと、そこは密度の濃い笹藪になっていた。ますはこの下降点に赤テープを枝に結びつけた。これで下降点の目印は付いたので安心だ。さてこの笹藪であるが、かならずケモノ道があるので、さほどの心配はいらない。探すと案の定、幾筋かの道が見えている。その中の一番状態のいいケモノ道に足を踏み入れた。このケモノ道がなかったら、かなり苦しくなることは間違いない。

 その笹藪もすぐに脱出し、ふたたび疎林となった。ここに索道のワイヤーが放置されていた。かつては木材の切り出しが行われていたことを彷彿とさせられる。さしたる変化もなく、忠実に尾根を登っていくと、突然目の前に三角点が現れた。三角点の周囲は刈り払いがなされており、そこだけが妙な感じになっていた。展望はなく、わずかに御座山方面が開けているのみだった。標識類は見あたらず、「モルゲンローテ」と書かれた赤布があるだけだった。

 今回のルートは、県境を縦走した場合のエスケープルートとしては最高だと思う。なにしろ山頂から林道までは30分掛からずに到達できるのだから。
下降点(赤テープを付けておいた)薮の中にあるケモノ道
三角点だけの山頂


「記録」

林道ゲート08.38--(.59)--09:37林道終点09:48--(.31)--10:19尾根--(.35)--10:54山頂11:12--(.24)--11:36林道(昼食)12:07--(.26)--12:33林道ゲート


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)