平標山の最後に登ったのは20年以上も前のことだ。その間には遭難した仲間の遺体をバスケットストレッチャーに乗せて降ろしたり、去年なくなった猫吉さんとは谷川岳主脈縦走と周回コースで登っている。また高山植物を目当てに登ったこともあったが、そのときは絶滅の危機に瀕していた時期でもあった。なんとなく遠ざかっていたが、最近は高山植物を目当てに登る人が増えたということだ。そこで、久しぶりに出かけてみることにした。 6月13日(金) 昔は無かったのだが、登山口の広い駐車場に駐車することにする。時刻は6時ちょっと過ぎたところだが、スペースは6割ほど埋まっていた。駐車料金は600円で出庫するときに支払うようになっている。立派なトイレも有り、観光地化しているようでもある。ひっきりなしに登山者が出発していく。かつては誰にも会わないこともあったのに、隔世の感がある。今日は時計回りで周回コースを取り、まだ行ったことのない「平標ノ池」を見たい思っている。 まずは林道をたどり、松手山の登山口に入る。いきなりの急登で目眩をしそうだ。なにしろ最近は奥多摩の軟弱コースばかり歩いているので、体力がすっかり落ちているようだ。いや、年齢を考えれば仕方ないことかもしれない。ともかくゆっくりと歩くことに集中した。後方に登山者の雰囲気を感じれば、すぐに脇に避けて先に行ってもらう。ともかく自分のペースを崩さないことが高齢者には大切だろう。そんな意味合いも含めて単独行が多くなってしまう。
以前登ったときの記憶は全くなくなっており、初めて登るようだ。大汗をかいたところで鉄塔にたどり着く。対面にある苗場山の台形状の山容は目立ち、雪が多く残っているのが見える。例年よりも雪が多いように感じるのは気のせいだろうか。鉄塔はちょうどよい休みどころなので、多くの登山者が立ち寄っていくので大賑わいだ。 鉄塔からも樹林が続き高度が上がったような気がしない。しかし、時折樹林が途切れると風が抜けて気持ちが良くなる。ひたすら登ることに専念して歩いていくと松手山に到着だ。ここは展望があり、広くなっているのでみんなが休むことになる。鉄塔で休んでいた顔ぶれがここでも見られた。 松手山からは快適な尾根歩きになる。天気が良ければ素晴らしい眺望の中を歩くことができるのだが、ガスが多くなってきたこともあり遠方は見えないのが残念だ。それでも登山道脇の高山植物は今を盛りに咲き乱れて見事というほかない。その色彩の豊富さは圧巻でもある。むかし覚えた花の名前を思い出しながら歩くのだが、その記憶も曖昧になっているのがさみしい。平標山の最後の登りは延々と階段の登りとなる。前を行く登山者に追いついたり、再び抜き返されたりしながら息絶え絶えで登っていく。昔はこんなにきついとは思わなかったのだが、今日は体力の消耗が激しいようだ。何度も立ち止まって足元の花を確認する。風に揺れるハクサンイチゲの群落に癒やされて再び歩き始めることを繰り返した。
平標山山頂に到着したが、大賑わいである。山頂標識は順番待ちの列が続いている。さて、ここからは平標新道の途中にある平標ノ池に向かうことにする。みれば平標ノ池は残雪が残っておりなんとも気持ちがよさそうだ。平標山山頂から急斜面の道を下降する。この道は殆ど利用する人がいないのだろう。ネマガリタケのヤブの切り開きが不明瞭になりつつある。今のところは踏み跡がしっかりとしているが、将来的にはわからない。これでは笹の中でバランスを崩せばそのまま滑落しそうだ。なんとか鞍部に辿り着き一安心だ。残雪の上を歩くのは心地よく、踏み跡が全く見られないのも気持ちがいい。池塘の中にはショウジョウバカマが咲き始めている。そのまま歩いていくと目指す平標ノ池にでる。ところが池と呼ばれる場所は残雪が残りその姿は確認できなかった。今年の雪の多さは尋常ではなかったようだ。残雪の向こうには巻機山が霞んで見えている。近くに見える連なりはタカマタギだろう。ともかく目的の場所に到着したということでここで大休止することにする。
休憩後は再び急斜面を笹につかまって、なんとか賑やかな平標山山頂に立つことができた。仙ノ倉山方面はガスに覆われてその姿を確認することができない。晴れていれば行ってみたいと思っていたのだが、ちょっと気力が薄れてしまった。しかし、途中までなら行ってみようと思い歩き出した。歩き出すとすぐにハクサンコザクラ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンバイの群落が目の前に広がった。以前はこんなふうになっていなかったのだが、見事な復活というほかない。そして昔は中腹を通過する道があったのだが、それはなくなってしまったようだ。 再び平標山に戻り、平標山の家に向かって下降する。この道が何しろ延々と続く階段なのだ。一部は今年の大雪で壊れてしまっている。これを復旧させるのは大変な労力が必要となるだろう。平標山の家に到着したが、昔の面影は全くなくなっていた。
平標山の家からもうんざりするような階段を降りることになる。なんとなく胃下垂になるようだ。こんなところをバスケットストレッチャーを使って下ったものだと思った。林道に到着してからも同じような景色の中を歩いて駐車場に戻った。
07:39登山口駐車場--(.56)--07:35鉄塔07:44--(.32)--08:16松手山08:19--(1.16)--9:35平標山09:47--(.26)--10:13平標ノ池10:35--(.27)--11:02平標山11:30--(.31)--12:01平標山の家12:11--(.40)--12:51林道--(.56)--13:47駐車場 群馬山岳移動通信/2025 |
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