信仰の山は富士山の絶景が待っていた「七面山」「希望峰」
登山日2023年12月18日


敬慎院随神門からの展望

七面山(しちめんざん)標高1983m三角点峰 山梨県南巨摩郡/希望峰(きぼうほう)標高1980m 山梨県南巨摩郡

七面山は日蓮聖人の高弟日朗上人が意思を継ぎ登拝、七面大明神をお参りしたとされています。標高1700mにある敬慎院までの参道が登山道として利用されている。参道といってもその所要時間は4〜5時間と長く、そこから七面山山頂まではさらに1時間はかかる。前夜車中泊を考えたが、億劫になり当日の早朝出かけることにした。

12月18日(月)
朝4時過ぎに自宅を出発、しかし10分ほど走ったところで自宅からテルモスを忘れているとの電話があり、取りに戻るというトラブルが発生、これで30分近くロスをしてしまった。野辺山経由で清里に入り、登山口である早川町にむかう。七面山敬慎院は身延町飛地となっているが、登山口は早川町のままだ。春木川の左岸につけられた道は舗装こそしてあるが、狭く荒れておりすれ違いはかなり注意が必要だ。駐車場はいくつかあるのだが、閑散としており先行車は一台だけだった。しかし、この付近は砂防堰堤工事が行われており、工事用関係者の車両がひっきりなしに通行している。

支度を整えて車道を歩き登山口に着くと、そこには立派なトイレが有り、駐車スペースもかなり余裕があった。これならば、ここまで来るまでくればよかったと思った。しかしこのスペースは杉の巨木の間にあり、枝が落下した場合、車にかなりのダメージがありそうだ。登山口の先には春木川にかかる赤い橋があり更にその先には白糸の滝が水量豊富に流れ降りているのが見えた。この時に、汗ふきタオルを忘れていることに気がついた。これからのことを考えるとタオルなしではきついことは確かだ。仕方なく車にタオルを取りに戻ることにした。これで20分のロス、今日は忘れ物で1時間近くのタイムロスとなり、これが時間に追われる山行となってしまった。

登山口には折りたたみ自転車がデポしてあり、登山者が利用するものと思われた。登山口からわずかに登ると鳥居と社がある。お寺の参道に神社というのも違和感があるが、これもなにかのいわれがあるのだろう。ここには「壱丁目」と書かれた石灯籠があり、ここが実質的な参道の入り口であることを示していた。参道は幅広く階段が設置してあるので、登山道と言う表現は正しくないようだ。すぐに2丁目の神力坊と呼ばれる坊を通過する。営業シーズンは終了しているのかひっそりとしていた。ここには七面山の女人禁制を解いたとされる徳川家康公の側室、お万の方さまがご使用になった「御駕籠の棒」が現存しているという。

参道は九十九折の急登の道で、道幅広くとも老体にはかなりきつい道だ。それに陽が当たらないらしく、霜柱は溶けることなく出来立てのままの形を保っていた。ふと気がつくと上方から2人の男性が駆け下りてきた。みれば若い坊さんですれ違い時に爽やかな声をかけていただいた。彼らが通り過ぎると線香の香りが参道に残っていた。


駐車場は他にもある

登山口の公衆電話

実質この壱丁目から登り始める

神力坊(二丁目)

丁目石(灯籠)で最終地点の敬慎院は五十丁目

終始こんな文言に励まされる

杉木立の参道

中適坊(二十三丁目)

中適坊

中適坊

スカイツリーみたいな杉の木

最後の坊、青雲坊(三十六丁目)の水道は凍結していた

和光門(四十六丁目)

下乗これより先は、なまぐさものを一切食してはならない


中適坊、青雲坊の2つの坊は人影もなくひっそりとしていた。青雲坊の外の水道は凍結しており、蛇口は固化して動かない状態となっていた。青雲坊の先で登山口から2時間半歩いたことになり、ちょっとだけ休憩。温かい白湯を飲んで身体を温める。空気が乾燥しているためか、湯気は直ぐに大気に取り込まれはっきりと見えない。周囲は杉木立に囲まれて展望は無く、どこに富士山があるのかわからない状態だ。そのうち周囲が賑やかになり、上方から若い女性が3人降りてきた。先程の若いお坊さんと同じように爽やかな挨拶をしてくれた。「ところでこの丁目石はいくつまであるんでしょうか?」と尋ねた。「五十丁目まであって、手前の和光門は四十六丁目ですよ。あと十丁ほどですからがんばってください」と励まされた。その内の一人は丁目灯籠に手を合わせていたので、この人たちはただの登山者ではないと感じた。

結局四十六丁目の和光門までは2人の登山者(?)に会ったのみで、本当に静かな参道登りとなった。

和光門には書札があり「下乗」「當山は精進修行の霊場です。参籠中は生ぐさ物は一切食さぬ様御願い致します」とあった。持ってきた食料を考えるとそれらしきものは入っていないので問題はなさそうだ。和光門からはさらに広い道が上部にむかって延びていた。その先には鐘楼と手水舎が設置してあり、こんな山の中にこれだけの施設があることに驚くとともに信仰という力はとてつもないものだと感じた。手水舎の水は凍結防止のためか止められていた。
さらに上部にある随神門に向かう。
随神門は有名な?絵になる風景が観られる。それは随神門を透してみる富士山でまるで額縁の中に富士山が描いてあるように見えるのだ。この山に登った目的はこれだったので、富士山が観られたので満足!満足!それにしても寒い!手袋をとるとたちまち指の感覚がなくなってしまう。手袋をつけるとカメラの操作ができないので我慢するしかない。もう限界というところで撮影を止めた。随神門の外は富士山を始めとする大展望が広がっていた。ここでは女性がひとり休んでいたが、とにかく寒いのでとても休む気にはなれず、少し先にある日差しのある広場に向かった。
ここでアンパンを白湯で流し込んで簡単な昼食とした。この広場は荷揚げ用索道の終着点となっており、何人かの人が作業していた。フト見るとここはシカの日向ぼっこ場となっているらしく、数頭のシカが寝転んでこちらを見ていた。この山はヤマヒルが多いと聞くが、このシカが撒き散らしているのではと想像できる。


鐘楼と手水舎

随神門(四十九丁目)

随神門から富士山を見る

随神門の前から富士山


シカ(こいつがヤマヒルを撒いているのか)

荷揚用索道終点


七面山への道は幅の広いなだらかな道だった。その道を10分程辿ると突然視界が開け、ナナイタガレと呼ばれる大崩落地がそこに現れた。崩落は現在も進んでいるらしく、絶えず石がカラカラと落ちていく音が聞こえている。近づくと吸い込まれそうな恐怖に襲われるので、足がそれ以上に進まないのは仕方ない。かつてはこの崩落地の縁に沿って登山道があったらしいが、今ではそこも崩落が進みとても歩けたものではない。新しい道はずっと内側に付けられており、この地点まで崩落が進むのは、まだまだ先になることだろう。

道はやがて急登になり、この寒いのに汗が吹き出してくる。フト見ると黄色い防寒具を着た女性が座り込んでいる。接近しても一心不乱にこちらに一瞥もなくスマホを操作している。それにしてもこんなところで何をしているのだろうと思った。

更に登ると絶景ポイントに到着した。ナナイタガレの崩落がすぐ近くにまで迫っているシラビソの巨木があり、その先に富士山が見えているのだ。絵に書いたような風景にしばらくは声もなく立ちつくしてしまった。すると上部から一人の登山者が降りてきた。七面山について聞いてみると「七面山は展望がありませんが、その先の希望峰に行くと南アルプスの絶景が見られます」これを聞いたには、予定していなかった希望峰まで行くしかないと決めた。別れ際にその男性を点景として写真を撮らせてもらった。


七面山への道

ナナイタガレ

ナナイタガレからの富士山

七面山(三角点設置点)山梨100名山の標柱がある

七面山の方位盤


七面山は三角点があり方位盤が設置してあった。展望は立木の囲まれて全く無くこれまでの苦労が報われるような場所ではなかった。あとで気がついたのだが、このポイントは三角点設置場所で最高点はこの先にある1989mのポイントだったのだ。この時は気づくこともなく標柱をそのまま信じてしまったのが間違いのもとだった。

慌ただしく希望峰に向かう

苔むした道を辿り、下降していく。鞍部にはサルオガセが絡まったシラビソがあり不気味でもある。鞍部から急登の道を登ると希望峰に到着だ。すれ違った男性の言う通り、雪を纏った南アルプスの峰が青空にスカイラインをくっきりと描いて見えていた。ここまで来てよかったと思える瞬間だった。ゆっくりしたいところだが、自分の体力を考えると早々に辞さなければならない。


七面山の先にいく

鞍部のサルオガセ

希望峰

希望峰からの南アルプスと笊ヶ岳

聖岳

なんとか明るいうちに下山


下山は往路を辿り日没前になんとか下山することができた。

今回は時間に余裕がなく、また老化が進んで思うような速度でコースタイムを歩くことができなかった。また七面山の最高点を踏めなかったのは心残りで仕方ない。それに敬慎院の観光?が全くできなかったのが残念だ。下山途中で登ってくるお坊さんと話したときに「ぜひ敬慎院に泊まってください」と言われたのが耳に残った。朝の随神門から見る赤く染まった富士山を見るのはざぞかし素晴らしいだろう。


駐車場07:49--(.11)--08:00登山口08:12--(.04)--08:16神力坊(1丁)--(.48)--09:04肝心坊--(.33)--09:37中適坊--((.55)--10:32晴雲坊--(.55)--11:27和光門(46丁)--(.03)--11:30随身門11:52--(.49)--12:41七面山12:48--(.18)--13:06希望峰13:11--(.20)--13:31七面山--(.36)--14:07随神門--(1.04)--15:11中適坊15:18--(.54)--16:12登山口--(.12)--16:24駐車場


群馬山岳移動通信/2023


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)