金精峠から2000mの稜線歩き「白根隠山」「白檜岳」
                                       
 登山日2020年8月29日


白檜岳に向かう途中から見る(錫ヶ岳、白檜岳、奥白根山)

金精山(こんせいざん)標高2244m 群馬県利根郡・栃木県日光市/五色山(ごしきやま) 標高2379m 群馬県利根郡・栃木県日光市/前白根山(まえしらねさん) 標高2373m栃木県日光市/白根隠山(しらねかくしやま) 標高2410m 栃木県日光市/白檜岳(しろびだけ)標高2394m 群馬県利根郡・栃木県日光市

今年はコロナ禍で2000mを越える山に出かけていない。制限は解除されたとはいえ、どうも県外には行きづらい。そこで群馬・栃木県境の奥白根山付近に未登の山があることを思い出した。それは白根隠山と白檜岳で、金精峠から錫ヶ岳に続くルート上にある。もちろんこの老体では錫ヶ岳に行くことなど当初から考えていない。

8月29日(土)
自宅を3時45分に出発、2時間で金精峠に到着した。驚いたことに駐車余地はほとんどなく、残りの4台分も10分ほどで埋まってしまった。これほど人気があるとは思っていなかっただけにギリギリ間に合ったことになる。目の前にある金精山の山頂部分は朝日に照らされて神々しく見える。しかし、今日も暑くなりそうな雰囲気がある。水は3.5リットル持ってきたが、これだけあればなんとかなるだろう。しかし、これだけ暑いと、この付近は雷の発生頻度が高いだけに午後は天気の急変が予想される。

登山口から金精峠への道を登りだすが、いきなりの急登ですぐに汗が背中に滲んでくる。かつては問題の無い道だったが、土砂崩れが起きたことで迂回路が設定され、階段が設置されたがそれも時間とともに老朽化が進み、今では階段の丸太は障害物となってしまっている。ここの急登の登りだけで体力のほとんどを使い果たすような感じだ。それでも20分ほど登ると見覚えのある金精神社の赤い社が見えてくると安心する。金精峠には単独行の男性が休んでいた。聞けば錫ヶ岳を目指したが、時間が遅くなったので白檜岳までなんとか行こうと考えているということだ。

金精峠から金精山への道も急登ではしごやロープを使いながらの道となる。久しぶりの山歩きなのでどうもペースが上がらず調子が出ない。単独行の男性は先に出発したとはいえかなり先行して行ってしまった。急登ということは高度がどんどんと上がり気持ちのいいことは確かだ。ダイモンジソウ、オトギリソウ、カニコウモリなどを見ながら大汗をかいて金精山の山頂に到着した。先程の男性が到着していて休んでいた。山頂からは男体山が大きく見えるが、朝日の昇る方向にあり逆光でうまく見えなかった。ほどなく男性が先に出発すると、すぐに女性の2人組が到着した。いかにも山慣れているという感じでハツラツとしていた。今日は北アルプスの燕岳に行く予定だったが、急遽予定変更したとのことだ。彼女たちも出かけ、そろそろと私も立ち上がり歩きだした。


金精トンネル栃木県側の駐車場から金精山

金精神社

金精山に登る途中から四郎岳

ダンモンジソウ

カニコウモリ

オトギリソウ

男体山方面


樹林帯の中の道を下降し、わずかばかり登り上げると道は分岐する。標識には「国境平」とあり、湯元温泉に続く道となっている。この付近はハンゴンソウが咲き乱れ、黄色の花園になっていた。再び道は樹林帯の中の登りとなったが、斜度はそれほどでもなく快適な道だった。樹林帯を過ぎると日差しが一気に身体に降り注いだ。賑やかな五色山山頂に到着、金精山で先行した男性も休んでいた。ここからの奥白根山の展望は素晴らしく、五色沼の湖面が穏やかなことから、その姿がきっちりと映し出されていた。


五色山山頂

五色山から奥白根山

五色沼に映る奥白根山


それにしてもこの山頂は賑やかで居心地が悪いので早々に辞することにした。いったん鞍部に降りて再び登りだす。樹林の道は意外と荒れていて登るのに苦労する。傾斜が緩くなると石を敷き詰めたような場所に着く。その石を積み上げた場所に前白根山の標識が立てられていた。周囲は何となくガスが多くなり、奥白根山山頂は時折隠れてしまうようになっていた。前白根山からの下降はガレ場の道となった。ふと見るとコマクサが群生しているではないか。この時期にコマクサに会えるとは思っていなかったので驚いた。ここのコマクサは赤色が強く他では見られないものだ。自生なのか移植されたのかは不明だ。鞍部に降りると、五色沼への道と分岐するが、直進して先に進む。40年以上前に菅沼から奥白根山、避難小屋を経て前白根、金精峠から菅沼に抜けたことがあるが、その時は苦しかったという思いで以外、景色のことなど全く記憶がない。


前白根山

コバルトブルーの五色沼

前白根山のコマクサ



積雪のために異様な形に曲がったダケカンバの疎林を抜けると森林限界となり、まるで放牧地にいるような感じの場所に出る。目の前には白根隠山の山頂がちょこんと頭を出している。晴れていれば気持ちがよい場所なのだろうが、あいにくと天気は下り坂のようだ。奥白根山の山頂を見ると登山者がうごめいているのがわかる。それにしても何という混み方なのだろうか?山頂から人間がこぼれ落ちそうじゃないか、あんな場所には行きたくないと思った。

白根隠山は顕著なピークで、石積みの場所に標識が差し込むように打ち込まれていた。山頂には3人が休んでおり静かなものだった。目指す白檜岳はすぐそばにあり、これならばなんとかなりそうだ。単なる通過点として白根隠山を発った。


前白根山から下降したところにある分岐

白錫尾根への道は封鎖(避難小屋への分岐)

前白根山とダケカンバ

ハンゴンソウと前白根山

白根隠山に向かう

気持ちのよい稜線歩きで白根隠山

白根隠山山頂から見る奥白根山

白根隠山から白檜岳とその奥に錫ヶ岳


意外なほど道はしっかりしており、踏み跡をたどっていく。
ところがその道は突然、断崖絶壁の縁に導かれてしまった。その縁から下を見ると、とてもじゃないが行けるような気がしない。しかし、よく観察してみると下には道らしきものが見える。さらに観察すると、今歩いてきた左側の砂礫の斜面に踏み跡が見える。わずかに戻って、そのルートをたどってみると難なく鞍部にたどり着いてしまった。振り返ると断崖絶壁が覆いかぶさるように天を突いている。あんなところを無理して下降しなくてよかった。
鞍部からは岩場を辿って登ることになる。ここでトレランの人とすれ違うことになった。
この人はたしか前白根から降りた時に追い越していった人だ」
「白檜岳から北の鞍部に降りようと思ったんですが、藪がひどくて戻ってきました」
「白檜岳まではいけますかね」
「笹薮で道がわかりにくいですけど問題ないと思います」
その言葉に安心して、先に進むことにした。

確かに笹薮に覆われて道はわかりにくいが問題はない。歩くにしても笹はふくらはぎほどの高さなので全く問題なく、緑の笹原は快適でさえある。笹原のところどころに点在するシラビソが、立ち枯れて白いオブジェのようになっている様もなかなかいいものだ。笹原の中の道はおそらくシカの通り道だったのだろう、意味もなく枝分かれしている部分もあり、ガスが巻いていたら迷うかもしれない。振り返ると金精山で会った登山者が白根隠山からこちらに向かってくるのが見える。しかしあの断崖絶壁で進退窮まったとみえる。ほどなくして彼は諦めて戻っていく姿が見えた。まあ、無理をすることはあるまい。

白檜岳はシラビソの立ち木に囲まれた平坦な場所で展望はない。山頂標識がどこかにあるかとキョロキョロする。ふと、立ち木の上を見ると高さ4mほどのところに標識を発見した。これを見るとこの辺の積雪はこんなにもなるのかとその銀世界の厳しい景色を想像した。せっかくなので菓子パンを食べて帰路の道に備えた。


オブジェ


奥白根山と白根隠山

白檜岳へ

白檜岳の笹原の中の道

白檜岳山頂

山頂標識があんなに高いところに

これが山頂標識


白根隠山を通過して2385m高点で時刻は11時半、ここでカップラーメンを食べて大休止することにする。3.5リットルの水は2リットルを使い果たしている。タオルも着ているものも汗で濡れているから絞ってから立ち木にかけるが、乾くことはないが気休めにはなる。ところが12時になると同時に空から雨粒が落ちてきた。慌てて荷物をまとめてザックに押し込んだ。ザックカバーはかけたが、着ているものはどうせ濡れているのだからと雨具はつけなかった。この季節は風が無ければ身体が冷えることもなかろう。

この後も断続的に雨が降る中を登山口に戻った。


記録

金精山登山口駐車場06:05--(.24)--06:29金精峠06:32--(.45)--07:17金精山07:43--(.13)--07:56国境平--(.32)--08:28 五色山--(.30)--08:58前白根山09:02--(.30)--09:32避難小屋分岐--(.31)--10:03白根隠山10:07--(.22)--10:29白檜岳10:43--(.29)--11:12白根隠山--(.10)--11:222385m12:041--(.34)--12:38前白根山-(.26)--13:04五色山13:17--(016)--13:33 国境平--(.21)--13:54金精山14:07--(.37)--14:44金精峠14:53--(.18)--15:11金精山登山口駐車場

群馬山岳移動通信/2020


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。
(承認番号 平16総使、第652号)

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