御坂山塊「節刀ヶ岳」「鬼ヶ岳」「十二ヶ岳」「毛無山」
登山日2018年12月13日

節刀ヶ岳からのパノラマ(富士山が見えないのが残念)
不逢山(あわずやま)標高1562m 山梨県南巨摩郡・笛吹市/金堀山(かなほりやま)標高1608m 山梨県南巨摩郡・笛吹市/節刀ヶ岳(せっとうがたけ)標高1736m 山梨県笛吹市/金山(かなやま)標高1686m 山梨県南巨摩郡・笛吹市/鬼ヶ岳(おにがたけ)標高1738m 山梨県南巨摩郡・笛吹市/十二ヶ岳(じゅうにがたけ)標高1683m 山梨県南巨摩郡/毛無山(けなしやま)標高1500m 山梨県南巨摩郡

ここ数年は年末になると富士山周辺の山を歩いている。そんなわけで今年も天気予報を見ながら会社を休んで出かけた。目的の場所は河口湖の北にある御坂山地の一角である「節刀ヶ岳」だ。この辺りは富士山を見るには最高だろう。

12月13日(木)

登山口である富士河口湖町にある「若彦トンネル」入口付近にある大石登山口に車を停める。この場所は大石ペンション村入口からでないと入ることが出来ないという妙なところだ。駐車した場所は工事関係の資材置き場となっているらしく、ブルーシートに覆われたコンクリートブロックが置かれていた。外に出ようとしたが、あまりの寒さと強風に耐えられず再び車内に入ってしまった。午前6時のスタートと思っていたのだが、ストーブを出してお湯を沸かすのもできない。仕方なく駐車場所から市街地に戻ってコンビニで暖かいものを食べてから登山口に戻った。そんなことをしていたら出発時刻は6時20分を過ぎてしまっていた。

駐車場所からは未舗装の林道を歩いていく。5分ほど歩くと観光案内板があり、大石峠はここを右に進むように表示がある。その近くにはロッジ風の廃屋があり、ラーメン、アイスクリームなどのメニューが書いてある。かつてはこの辺りはキャンプなどで賑わっていた時期もあるのだろう。しかし現在はお化け屋敷そのものだ。道は植林のための作業道をそのまま登山道にしている感じだ。したがって分岐が頻繁に出てくるので注意しながら登って行く。それにしても風が強く頭上の枝が揺れて擦れあう音が獣の声にも聞こえてくる。歩き始めは薄暗かったが、次第に樹林の中にも朝の橙色の光が差し込むようになってきた。しかしそれもわずかな時間で、空が鉛色になってくるとともに薄暗い樹林の中の道となった。天気予報を見て絶対に大丈夫と思った日を選んできたのだが、見事に裏切られてしまったようだ。

シモバシラの枯れた茎から滲み出た水が凍ってできる現象はこの時期ならではのものだ。途中に杉の巨木があり、なにか由来のあるものかと周囲を見たがそれらしきものは見当たらなかった。しかし、周囲は石積みで囲われているところを見ると保護されているようにも見えた。

大石峠に到着、周辺は草地になっており大人数がくつろげそうだ。ここで富士山が見えれば最高なのだが、一瞬山頂が見えただけで、この日は終日雲に覆われて見ることは無かった。出発時間が遅れたこともあって予定時間から大幅に遅れている。本来ならここで休むはずだったが、寒さと強風でゆっくりすることはできない。そうなるとこれからも休憩時間は無くなるだろう。地図を見ると近くに不逢山というピークがある。往復してもたいしたことは無いので、富士山が見えなければピークハントもいいだろうと、節刀ヶ岳方面とは反対方向に進んだ。

道はしっかりしているのだが、倒木がひどく最近整備した痕跡が多数みられた。こうした登山道整備をしていただけるという事は頭が下がる、この作業を行うには必要な道具を持ち上げなくてはならないからだ。おまけに倒木の処理は大変なことだろう。大石峠から10分弱で不逢山に到着したが展望もなく寒いので早々に山頂を辞することにした。

大石峠に戻り節刀ヶ岳に向かって歩き出す。快適な道で距離がどんどん伸びていくのがうれしい。アップダウンも少なく30分ほどで金堀山に到着。山頂は登山道途中のこんもりとした場所で、樹林に阻まれて展望は無い。立木に古い標識が縛り付けられていなければ通過してしまうような場所だ。


資材置き場に駐車する

賑わっていた場所も廃墟となっている

大石峠への分岐

朝日が樹林の中に一瞬入ってきた

シモバシラ

巨木

大石峠

一瞬、富士山頂が見えた


天候の状況は好天の兆しは見えない。フリースの手袋だけでは手先が冷たくなり、ときおりズボンのポケットに手を入れて温める。金堀山から30分ほどで節刀ヶ岳への道を分ける。標識に従って道を進み霜柱を踏みしめながら歩き、岩場を越すと節刀ヶ岳山頂だった。真新しい山頂標識があり、古いものは抜かれて隅に立てかけてあった。ここでも富士山が見えないのが残念だ。見れば登ってきたルートとこれから辿るルートが一望だ。これから辿る十二ヶ岳付近は風に流される雲がひっきりなしに通過しているのが見える。立ったまま菓子パンを一つ食べて10分ほどの滞在で山頂を辞することにした。

節刀ヶ岳から金山まではほとんど平坦な道で10分ほどの時間で到達した。金山山頂は刈り払いがなされていたが、展望もなく休むには適していないかもしれない。しかし、今日は風よけの意味を含めて、展望が無い場所は良い。天候は悪いが予定通り鬼ヶ岳をピストンすることにする。


不逢山

金堀山

節刀ヶ岳

金山

倒木

もうちょっとで鬼ヶ岳

鬼の角

鬼ヶ岳山頂


金山からカラマツ林の中の道をどんどん下って行く。帰りはここを登ることになるのかと思うとちょっと憂鬱になってくる。鞍部に出ればあとは登るだけだ。ここの道も倒木が多く、シカの食害対策として根元を覆っているネットをそのままに倒れている。調べてみると今年の10月2日、台風24号は河口湖で最大風速41.9m/sとなっている。これでは倒木が出るのも無理のないことだ。登山道も崩落している場所があった。山頂に近づくと鬼ヶ岳の特徴ある岩が見えてくる。鬼ヶ岳山頂は狭い感じがするが、それは周囲がガスで展望が効かないためなのかもしれない。ともかく山頂の特徴ある岩をバックに記念撮影してここでも早々に下山することにした。

再び金山の山頂に戻り登山地図を見る。あまり下調べをしてこなかったのだが、金山から毛無岩までは中上級者向けと書いてある。この天候では難易度も上がっているのは間違いないだろう。どうしようか?ここからペンション村に下るのがリスクを避ける意味では最善の方法に違いない。まして自分が登山者として初級者なのか中級者なのか不明である。過小評価も過大評価もよくないことは事実だ。時刻は11時なので日没まではたっぷりと時間がある、結局は毛無岩に向かって歩を進めることにした。


ここを下れば危険は無い



十二ヶ岳山頂

十二ヶ岳から下降する


金山から10分ほどで大石ペンション村への道を分けるが、迷うことなく毛無山に向かって進むことにする。ここでストックをザックに仕舞って両手が使える状態にしておくことにする。さらにフリースの手袋から皮手袋に付け替えて岩場の通過に備えた。1661mのピークを越えると梯子とロープを頼りに鞍部に到着。鞍部からロープを伝って岩場を登りあげる。到着した場所が十二ヶ岳だった。山頂には社が二つあり、赤い屋根の社には真新しい幣束が下がっていた。ここでも雪の粒が混じった強風が吹き荒れ、当初はここでお湯を沸かして豪華なカップラーメンと思っていたのだ。しかし、この風が強い状況ではそれもかなわないので、菓子パンとピーナッツを食べて質素な昼食とした。あまりに寒いので10分ほどの滞在が限界だった。標識には擦れた文字で「毛無山 80分」と書いてあった。

十二ヶ岳からは固定されたロープを使っての下降となった。太いロープは古く擦り切れて細くなっている部分もある。最近設置されたらしい真新しいロープは9mmと細く、PP製なので滑りやすく持ちにくい。どちらを選ぶかと考えれば古いロープに頼ってしまう。ヒヤヒヤしながらそのロープを補助程度に考えて標高差120m岩場を下降していく。途中で下から登ってくる男性2人とすれ違った。踊り場のような場所があったのでなんとかやり過ごした。二人はアンザイレンで登っていたが、どんな効果があるのか疑問を持った。ともかく今日初めて出会った登山者だった。鞍部に近づくにつれて吊り橋が見えてきた。吊り橋は考えていたよりも華奢な感じがした。「一人ずつ渡れ」と書いてあるが、とても複数では渡る気にならない。乗って見ると不安定で一歩を踏み出すごとに不規則に揺れるのだ。下を見るとキレットの底は不気味な爬虫類の口のようだ。対岸に渡り振り返ると下降して来た崖が恐ろしいほどの急傾斜でせりあがっていた。吊り橋からはさらに崖を登ることになる。ロープはなるべく使わず岩のホールドと灌木の露出した根を掴んで登って行く。

そしてたどり着いたピークには十一ヶ岳という標識があった。私が到着と同時に2名のパーティーがすれ違うように出発して行った。その後に残った5人のパーティーも荷物をまとめて立ち上がるところだった。
「ここから先は危険なところはありますか?」と尋ねると。
「まだまだロープのある岩場があるよ」と答えが返ってきた。
その答えにちょっとうんざりしながら十一ヶ岳山頂を先に進んだ。確かに嫌というほどの岩場を越えて進んでいく。「八ヶ岳」「七ヶ岳」・・・・と名前の付いたピークを越えていく。おそらく十二ヶ岳以外は誰かが冗談でつけたのだろう。てっきり一ヶ岳が毛無山と思っていたが、毛無山のピークの手前に一ヶ岳があった。

十二ヶ岳からほぼ予定通りの83分で毛無山に到着した。山頂にはテントが張られており中から話し声が聞こえてくる。そのうちに女性が1人テントから出てきた。その次に「寒い、寒い!」を連呼しながら男性が出てきた。軽く会釈してここから見える河口湖を見ながらルートを探す。ここから淵坂峠に向かう標識が無いのだ。先ほどの男女に聞いても「わからない」という。こうなったら地形図に従って方向を定めていくしかない。河口湖方面に行く道に入り慎重に左に向かう分岐があるはずだと探しながら行く。山頂から100mほど下ったところで草地の中にわずかな踏み跡がある。その先にはマーキングテープを下げた木がある。標識が無いので不安はあるが、ともかくこの道に入って行く。GPSで位置を確かめながら、地形図の破線のルートをなぞる。どうやらこれで間違いなさそうだ。しかし、踏み跡は薄くここが登山道なのか不安になる。まして倒木が行く手をふさぎ、足元は枯れ枝が落ちており、すんなりと歩かせてくれない。目印も標識もなく、落ち葉に埋もれた境界見出票の頭部が赤くなった杭があるのが唯一のよりどころだ。ともかく尾根の分岐では方向を定めて、何度もGPSを確認しながら歩いた。しかし十二ヶ岳から2時間半以上歩いてきたことから、標高1250mの枝尾根分岐で休憩することにした。ザックの中から自宅の庭で採ったミカンを口に含むとその甘さで疲れが和らいだ感じがした。この時期は日暮れが早く14時になると寒さが一段と増してくる感じがする。


吊り橋が見えた


渡る

渡り終えて振り返る


淵坂峠に近づくとアカマツが多くなり、それと共に道形もはっきりとしてきた。そして淵坂峠に到着すると立派な標識があり、毛無山への方向が書いてあった。いままで何の目印もなかっただけに妙な感じがした。淵坂峠からは立派な道があり何の不安もなく大淵谷に導かれ、渡渉すると出発点に戻ることが出来た。駐車地点には相変わらず自分の車しかなく、空は鉛色の雲が覆われて最後まで富士山は見られなかった。
今回の山行は消化不良の点があったが、再挑戦する気にはならなかった。


どこかで見かけたような名前

毛無山

毛無山から淵坂峠への分岐

ここがルートだろうか

ミカンを食べて一休み

境界の杭が頼りだ

淵坂峠の立派すぎる標識


大石登山口06:23--(1.37)--08:00大石峠08:05--(.08)--08:13不逢山08:15--(.05)--08:20大石峠--(.29)--08:49金堀山--(.35)--09:24分岐--(.06)--09:30節刀ヶ岳09:43--(.04)--09:47分岐--(.08)--09:55金山--(.32)--10:27鬼ヶ岳10:31--(.23)--10:54金山--(.07)--11:01分岐--(.51)--11:52十二ヶ岳12:03--(.17)--12:20吊り橋--(1.06)--13:26毛無山13:30--(.11)--13:41休憩13:56--(.26)--14:22淵坂峠-(.24)---14:46渡渉--(.10)--14:56登山口

群馬山岳移動通信/2018


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)