美ヶ原散策「王ヶ鼻」「王ヶ頭」「茶臼山」
登山日2018年7月22日



美ヶ原から北アルプス
王ヶ鼻(おうがはな)標高2008m /王ヶ頭(おうがとう)標高2034m/茶臼山(ちゃうすやま)標高2006m

連日の猛暑で山に出かける気にもならない。久しぶりに知り合いと山に行く予定を立てた。ところが急用が出来てその予定は延期となってしまった。それではどこか探さなくてはと思いついたのが北アルプスの不人気の山域。出向いてみると、なんと林道が崩落して通行止めになっていた。仕方なく安曇野の施設の登山者用の駐車場で車中泊とした。朝方の気温は19℃でタオルケットをかけていたくらいでは寒いようだった。さてこれからどうしようかと悩んだ挙句に選んだのは美ヶ原だった。美ヶ原は平坦な高地であり、そのなかのいくつかのピークを踏んでいるが最高峰の王ヶ頭に行ったことが無い。地図が無くともGPSさえあれば、何とか周回できるだろう。

7月22日(日)
閑散とした美ヶ原自然保護センターの駐車場で準備をする。とにかく水だけはたっぷり持つことにした。ストックはいらないだろうが念のためにザックにくくりつけておいた。同世代の男性とスタートが一緒になった。聞けば明日は白馬岳とのことでうらやましい限りだ。その男性は王ヶ頭に登るというので、王ヶ鼻に先に登ろうとしていた私はここで別れて車道を登って行った。
この時期は花が多く車道の脇には様々な花が咲いており楽しませてくれる。車道はやがて分岐し右にたどれば王ヶ鼻であるが、なんと土埃を巻き上げてバスがやってくる。どうやら山頂ホテルのバスのようである。このまま山頂に行けば賑わいの中に身を投じることになる。そこで王ヶ鼻は後回しにして、王ヶ頭に向かう。車道を辿ると右に登山道が現れ「アルプス展望コース」と書いてあるのでそちらに向かう。


自然保護センター

王ヶ頭

王ヶ頭から槍・穂高

武石峰

王ヶ頭ホテル

この道は確かに展望に優れており北アルプスの山々が一望できる。またハクサンフウロを中心としたお花畑になっており見応えがある。このコースの途中から王ヶ頭に登りあげる道があり、朝日を背に受けてひとしきり歩くと王ヶ頭の山頂に到着する。山頂には三角点と石碑があり周辺は裸地になっていた。ここからの展望は最高で、雲海の上に北アルプスのそうそうたる盟主たちが連なっていた。ほどなくして自転車を押して若者がやってきた。東京から松本まで来てそこから自転車でここまで登ってきたという。とてもこの老体にはまねのできないことだ。この王ヶ頭の山頂を踏めばもう帰ってもいいかなと思ったが、まだ時間も早いのでもう少し散策してみることにする。この王ヶ頭はテレビ中継所のアンテナ群で針の山のようになっている。その下に王ヶ頭ホテルがあるがあまり目立つ存在ではない。付近を散策してみるとテレビ中継所やホテルが無ければ素晴らしい展望があったと思われる。まあ、これらの施設があるから美ヶ原ともいえるのだが・・・それにしても早朝の美ヶ原は静かなものだ。のんびりと牛が草を食み、空は高く永遠と草原が続いている。草原の向こうには美ヶ原のシンボルである「美しの塔」が見えている。時間もあるので車道を辿って歩いてみることにする。車道は思ったよりも歩きにくく、観光客を乗せたバスが走ると、ものすごい土埃が舞い上がった。これはたまらんと車道から牧草地に入って登山道に抜けようとしたが、柵があって入れない。入ったとしても登山道にある有刺鉄線を乗り越えるのはちょっと大変そうだ。
「塩くれ場」と呼ばれる場所に到着した。ここはかつて石の上に塩を置いて放牧牛に塩を与えた場所という事だ。ここから牧草地の中に入ることが出来るのでやっと車道から離れられた。すぐにトイレがあり外の水道で顔を洗って先に進む。すると標識があり「茶臼山→」と書いてある。あまり聞いたこともないが、時間的に余裕があるので標識に従って牧草地に入ってみる。牧草地の中の道はそれなりに道筋がついているが、それほど明瞭なものではない。うっかりすると草に隠れた牛の糞を踏んでしまうので慎重に歩かなくてはならない。それにしてこの美ヶ原というところは不思議な場所だ。広大な草原が見渡す限り続き、ここが開発される前の景色に思いをはせる。茶臼山までの道はアップダウンも少なく疲れは感じさせない。


王ヶ頭

美しの塔

牧場の中を茶臼山に向かう

茶臼山山頂

烏帽子岩


30人の団体が来た



王ヶ鼻の賑わい

王ヶ鼻の石仏群

牧草地をはなれゲートを抜けるとちょっとした岩場があり、そこを抜けるといったん鞍部に出てから再び登り上げることになる。このころから周辺の山はガスに覆われて展望がきかなくなっていた。わずかばかり登りあげると茶臼山の山頂に到着する。山頂は裸地になっており、下方からは扉峠を行きかうバイクの爆音がひっきりなしに聞こえてくる。展望はガスに阻まれて山々を見ることはできない。アキアカネがひっきりなしに目の前を飛ぶさまは、高原の風景によく似合う。人の居ない山頂のベンチに腰掛けて、冷やしたキュウリを音を立てて食べる。何ともうまい歯ごたえと食感だ。
山頂を辞して再び往路を辿って「塩くれ場」に戻る。多くの観光客が遊歩道を歩いておりその流れに乗って今度は車道ではなくアルプス展望コースを王ヶ鼻に向かって歩く。あいにくとガスで遠くの山々の展望は無いが、足元の花の多さに圧倒される。ハクサンフウロとイブキノトラノオを中心とした植生はなかなか見られるものではない。その中にひっそりと咲くナデシコ、ホタルブクロが目立つ。百曲り園地は数年前にドラマのロケ地となったところで、なかなかうまいところを選んだものだと思った。突き出た大岩の上に立つと高度感がありちょっとだけ山に来た気分を味わうことが出来た。しかし、静けさを破るように団体の観光客とすれ違うたびに、気分は損なわれる。30人くらいの団体でおそらく美ヶ原の何とかいう人たちが案内しているのだろう。拡声器まで使う必要は無いと思うのだが、どうなんだろう。それに道を譲ることを指導できないようでは立派なことは言えないのではないだろうか。
王ヶ頭の道を分けると、朝たどった道を逆に歩いて車道にでる。そのまま車道を進み「王ヶ鼻」に到着する。到着してビックリ、山頂は人で溢れかえっていた。立錐の余地もないとはこのことだ。それでも根性で山頂から少し離れてた岩場に陣取って腰を下ろした。相変わらずガスに阻まれて周囲の山の展望は得られない。こうなると初めにこの王ヶ鼻に来ればよかったと思ったがうまくいかないものである。腰を下ろしたがあまりの騒々しさに、早々に腰を上げてこの場を辞した。帰りがけに王ヶ鼻のアンテナ群の周りを歩いてから駐車場に向かった。


オトギリソウ

コウリンカ

イブキノトラノオ

オダマキ

ウツボグサ

ヒメシャジン

シュロソウ

ホタルブクロ

クルマユリ

カワラナデシコ


群馬山岳移動通信/2018

美ヶ原自然保護センタ6:55----07:52王ヶ頭08:06----08:29塩くれ場----09:17茶臼山09:30----11:13王ヶ鼻11:34----11:57美ヶ原自然保護センター



この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)