富士山に近いのに富士山が見えず「御正体山」 
登山日2017年12月9日



石割山からのパノラマ

平尾山(ひらおやま)標高1290m 山梨県南都留郡/石割山(いしわりやま)標高1413m 山梨県都留市・南都留郡/御正体山(みしょうたいさん)標高1681m 山梨県都留市・南都留郡

年末にやっておきたいこと、それは富士山を見ることだ。会社の野暮用(?)もたまりにたまっているので、これ以上休むわけにもいかない。そんなわけで久しぶりに土曜日の山行を決め込んだ。場所は山中湖の北にある「御正体山」としたが、ルートがいまひとつ決まらない。この時期はバスはほとんどが運休となっている。当初は山伏峠をスタートすることにしていたが、駐車場所でのトラブルが報告されているので諦めて石割神社から往復することにした。

12月9日(土)
前日は谷村PAで車中泊、朝4時に起床して車内を片付けて現地に向かう。この時点では駐車場をどこにするか悩んでいた。日帰り温泉の「石割の湯」の駐車場にしようかと思っていた。そこでその駐車場に到着して準備を始めた。しかし、どう考えても効率が悪そうなので、石割神社の駐車場まで行ってみることにした。昨日降った雪が積もった道は轍もなく静かなものだ。やがて、石割神社の駐車場に到着する。駐車場は30台程置けるという事だが、それ以上も可能と思われる。おまけに立派なトイレがあり常夜灯も点灯したままだ。どうやら神社駐車場を選択したのは正解だったらしい。雪が薄く積もった駐車場は誰も来ることは無いだろうと、入り口付近に停めた。しかしこれは大ヒンシュクを買ったのではないかと思う。それは登山者だけでなく、参拝者が訪れるという事で利用者はかなりものだったようで、さぞかし邪魔だったに違いない。

ヘッドランプを点けて橋を渡り赤鳥居をくぐる。階段は一直線に延びてヘッドランプの灯りは上部まで照らすことが出来ない。傍らの標識を見れば403
段あると書いてある。まさか数える訳もないから信用するしかないだろう。それにしても急な階段でうっすらと積もった雪がいやらしい。階段を昇るうちに周囲は徐々に明るくなりヘッドランプは必要なくなった。



石割神社の赤鳥居

403段の石段が始まる

石段途中で一休み

石割神社



石割神社に到着したころ、周囲はすっかり明るくなり朝の光が満ちていた。社の脇には神社のご神体である割れた大きな岩がある。予備知識が無かったものだから知らなかったのだが、なんでもこの石の割れ目を通り抜けると願いが叶うと言われているらしい。今の願いはピンピンコロリなので、ここで願いが成就されなくてよかったと思う。これより先は道は登山道らしくなってくる。設置されたロープや木の根に掴まったりする場所もある。

歩き始めて50分ほどで割山の山頂に飛び出す。
おお、なんという絶景なんだろう。
上部に雪を纏った富士山が目の前に大きく、山襞は朝日を受けて陰影がはっきりと見て取れる。眼下の山中湖は光を反射して磨いた金属面のようだ。富士山の右には南アルプスがくっきりを白い稜線を刻んでいる。周囲は雪が表面を覆い足跡も残っていない。今日は一番乗りだという事がなんとも嬉しい。ただし、残念なのはあと30分早ければ、朝焼けに染まった紅富士を見ることが出来たことだ。



石割山山頂


絶景だ!!



石割山から御正体山への道に踏み出すとすぐに鉄塔がある。ここは十二曲峠への分岐でもある。ここからの道は単調で展望もなく、まして富士山を背負って歩くことから全く面白味が無い。笹に覆われた道は、積もった雪が身体にかかり不快だ。

山伏峠からの道と合流する場所も特徴が無い。しかし、そこから30分歩いたところにある256号鉄塔のある場所は展望が良い。それは鉄塔とその送電線の下が刈り払われているからだ。ここからは富士山を見ることが出来る。それに南アルプスの山々が美しい。この鉄塔が無ければ御正体山までの道は実につまらないものだろう。その代わりに陸上自衛隊北富士演習場の砲弾の音がひっきりなしに聞こえてくる。この時代だからじっくりと練習を重ねてもらいたいと思う。それに、ヘリの音も尋常ではなかった。なんとなく「祝典ギャロップ」の軽快な音楽が頭の中で駆け巡ってしまった。




御正体山に向かって(標識では3時間50分)

笹藪

雪が積もった笹藪

御正体山が見える

山伏峠への道を分ける

256号鉄塔からの展望



 
256号鉄塔から南アルプス



奥ノ岳、中ノ岳、前ノ岳とピークはあるのだが、展望は無いと言っても言い過ぎではない。石割山から歩き始めて3時間ちょっとで御正体山の山頂に到着した。ここも展望が無く三角点と社とテーブルベンチがあるだけだ。ここも雪の上に踏み跡は無い。実に渋い山であることは間違いない。ストーブでお湯を沸かしてお茶を飲む。冷えた身体には暖かいものが最高だ。そのうちにご夫婦と思われる二人が道坂峠方向から到着。そちらの展望はどうかと尋ねると「展望は無く純粋に山歩きを楽しむ修行の道だった」と答える。するとどちらから登っても展望は無く、富士山も見えない山という事になる。




中ノ岳

山頂にある立て札

御正体山山頂



帰りも同じで富士山に向かっているのだが、さっぱり富士山は見えない。そこで石割山に到着してしまった。富士山には相変わらず雲はかかっていないので最高の天気だ。日没まで2時間近くまである。じつはここで富士山に沈む太陽(ダイヤモンド富士)を見ることを考えていたのだが、あまりにも時間が残っている。それに十二曲峠の方から賑やかな声が聞こえてくる。せっかく静かな山を歩いていたのに、これでは気分が台無しだ。そこで地図を見ると、平尾山まで行って、そこから駐車場までの道があることがわかった。おまけに展望が良いと書かれている。そこで予定を変更して平尾山経由で下山することにした。

石割山の山頂もそうだったのだが、下降ルートは泥沼ルートだった。登山靴はもちろんゲイターも泥だらけ、これで転んだら悲惨な目に遭う事は間違いない。幸いなことに、トラロープが設置されているので、それに頼り切って下山した。急降下が終了したときはホッとした。最低鞍部についてからはダラダラと道を登って行き、再び下降すると石割神社への道を分け、その先が平尾山でここからの展望は石割山と同様であった。風もなく何とか日没までここで頑張ることが出来そうだ。しかし、風が無いと言っても時間経過とともに気温がどんどん下がってくるのがわかる。山中湖の湖面が波立ってキラキラと光を反射し、太陽は高度を下げているが、それでも光は強烈で見つめていることはできない。

平尾山に到着して40分が経過したところで、太陽が富士山の左稜線に隠れはじめる山頂でないのが残念だが、これは仕方ないことだ。シミュレーションするとあと一か月後くらいがちょうど良さそうだ。太陽が半分くらい隠れたところが見事なダイヤモンドの輝きとなる。その光も陰り始めると急速に光は失われていく。光が失われると様子は一変し、富士山の後ろの空の色も変わっていた。




石割山から下降

平尾山山頂



平尾山山頂で待機

ダイヤモンド富士

日没後はこんな感じ

平尾山から急いで下山

駐車場は誰もいなかった



さあ、急いで戻らなくてはならない。
見る間に暗くなっていく山道を下降して行く。途中で左に道を分けて貯水池に向かって雪の積もった道を進んでいく。ちょっとした沢を渡渉するが、その時に泥で汚れた登山靴を洗う事にした。あとは林道を辿って駐車場にたどり着いた。駐車場にはすでに車は一台もなくひっそりとしていた。

荷物を整理して「石割の湯」で汗を流してから帰路についた。


石割神社駐車場06:10--(.30)--0640石割神社--(.20)--07:00石割山07:21--(1.05)--08:26石割山分岐08:35--(.52)--09:27中ノ岳--(1.06)--10:33御正体山11:00--(1.47)--12:47石割山分岐--(1.33)--14:20石割山14:39--(.32)--15:11平尾山15:52--(.26)--16:18石割神社駐車場


群馬山岳移動通信/2017

この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)