小雪が吹き付ける「乾徳山」は展望を得られず
                                        登山日2015年3月14日



乾徳山山頂

乾徳山(けんとくさん) 標高2031m 山梨県山梨市

週間天気を見ながら、山行を考えていた。土曜日が何とかなりそうなので計画を立てたが、前日あたりになって不安定な天気との予報に変わった。しかし、延期すると3月は予定が立て込んでおり、山に行く機会を失ってしまう。そこで悪天候を承知で山梨県の「乾徳山」に出かけることにした。


3月14日(土)
秩父市経由で山梨県に入る。いつも思うのだが、雁坂トンネルの730円は高いなと思う。徳和から右折して乾徳山に向かって車を走らせる。ほどなく駐車場があり、車が一台止まって二人の登山者が準備をしていた。自宅からここまで2時間半なので、これからもこの付近の山に登ることが多くなりそうだ。

まずは朝食のカップラーメンを食べながら支度を整える。そうしている間に2人組は出発していった。見ればワカンとピッケルを持っている。どうしようかと考えたが、ピッケルはもっていく事にする。軽アイゼンを持ったのだが、念のために12本爪のアイゼンに変えた。

天気は太陽の光が届いて青空が見えている。この天気が続けばいいのだが、予報は間違いないだろう。しばらくは林道を歩いていく、駐車場からさらにこの林道を車で走るのは、ちょっといやらしい。歩き始めて30分ほどで「乾徳山登山口」の大きな標識を見る。ここが登山口で、階段を上って
杉林の中に道は続いている。

時折、杉林の中に石積みが見られる。炭焼き釜の名残にしては、積み方が直線的なので、かつてはここに民家や畑があったのかもしれない。杉林の中は鬱蒼としており、今日の天気がどうなっているのかわからないほどだった。登山口のところから延びてきている林道を横切って、なおも登っていく。登山口から30分ほど登ったところで、駐車場から先行した二人組が腰を下ろして休んでいた。見ればここは「銀晶水」と言うところで、斜面から水が湧き出ていた。水量はそれほど多くないが、喉を潤す程度なら十分だ。とりあえず、休まずにこのまま先に進んでいく。

いつの間にか植生はアカマツに変化してきた。再び林道を横切り僅かばかり行くと「駒止」と言う場所に到着した。この辺りから道は細くなり、残雪が凍結した状態で残っている。しかし、アイゼンを使う状態ではなく、道の端を歩けば問題ない。このあたり、腕時計で確認すると標高1400メートル付近だった。これから山頂までは600メートルほどだ。


標識はしっかりしている

林道は落石が多い

登山口

銀晶水

駒止

錦晶水


残雪が次第に多くなり、なおも登っていくと再び水場に到着した。「錦晶水」と標識に書いてある。最初の水場が「銀」なので「金」が正しいと思うのだが「錦」とはどういうことなのだろう。もっとも「晶水=小水」のイメージがあるから、変えたのかもしれない。「錦晶水」からは平坦な道を進んでいく。一瞬,カラマツがなくなり、開けた場所が現れる。ここからは乾徳山の山頂と、一旦下がった場所にある草地が印象的だ。草地は「扇平」と呼ばれるところらしく、草は枯れた状態で茶系統の色を見せている。さらに歩くと、標識があり分岐となっていた。「扇平・クサリ場・頂上」「大平高原・堂満尾根」「高原ヒュッテ」とそれぞれ指している。高原ヒュッテの方角を見ると、白い建物が見える。空は鉛色となり、悪化の傾向が見え始めている。そうなると山頂を踏んでおくのを優先して先に進むことにする。

トレースを辿って雪の積もった斜面を登っていく。この辺りは凍結した部分もなく、ステップを切りながらゆっくりと登っていく。登るにしたがって、疎林となり草地が広がり、大きな岩が点在するようになってきた。ふと見ると、シカの集団がこちらを見ている。何かその集団の姿がおかしくて吹き出しそうになってくる。シカは人間に慣れているのか傍に近づいても逃げる様子は無い。こうなると可愛らしいという気持ちではなく、うっとうしいとさえ感じる。

さすがにこの斜面は疲れたので、登り切った「扇平」と呼ばれる平原で、大休憩をすることにする。晴れていれば、この辺りから富士山が見えるのだが、この天候では全く見えない。かろうじて大菩薩嶺がわかる程度だった・

休憩後「扇平」から先に進むと樹林帯に入っていく。積雪も多くなり傾斜も強まり、場所によってはトラロープが下がっている場所もあった。こうなるとどうしようもないので、アイゼンを装着することにした。久しぶりのアイゼンなのでなんとなく手際が悪い。そのうちに樹上では風の音が音を立てるようになってきた。標高2000メートルはそれなりの厳しい条件であることは確かだ。


国師ヶ原から乾徳山

国師ヶ原の分岐

シカがこっちを見てる

近寄っても逃げない

月見岩

扇平(後方は大菩薩嶺)


アイゼンを着けると格段に楽になった。ここで下山してくる単独行者とすれ違った。なんでも山頂は展望もなく寒いので早々に引き上げてきたという。ちょっと気力が薄れてきたが、頑張って先に進んでいく。そしてついに岩場が出現するようになってきた。まずは「髭剃岩」鎖がなくちょっといやらしい。そこを過ぎると木の梯子がありちょっとだけ下降する。その先はしばらく雪の道を歩き、鎖場に到着する。下部は1本あり、上部は並行して2本が下がっている。傾斜はそれほどでもないので、すんなりと登ることが出来た。しかし、アイゼンで雪の無い岩場を登るのはあまりよろしくない。


扇平から樹林帯に入る

岩場の始まり

木のハシゴがある

岩場


「雨乞岩」の下をくぐり、さらに進むと、この乾徳山の核心部である「鳳岩(おおとりいわ)」の基部に到着した。「鳳岩」は下部の取りつき部分が一枚岩に近く、アイゼンが引っ掛かるような場所が少ない。アイゼンを外せばいいのだが、それも面倒なので鎖につかまって強引に登ることにした。中段まで登るとホールドがそれなりにあるので、あとは一気に登ることが出来た。山頂は狭い場所でそれほど多くの人は留まることはできないだろう。せっかくたどり着いた山頂だったが、横殴りの小雪が吹き付けるあいにくの天候でおまけに寒い。展望も登ってきた「扇平」が見える程度だった。とても休憩する気にもなれず、ザックは背負ったままだった。10分ほどで山頂を辞することにした。さあ、鎖場を下降しようとしたら、下からあの「銀晶水」で追い越した人が登ってきている。ここは鎖が一本しかないので、待つしかない。3分ほど待ってやっと登ってきたが、寒さに震えながら待つのは。かなり辛かった。


長い鎖場

鎖場は雪がない

扇平を俯瞰する(右上に大平高原が見える)

岩場が緊張する


鳳岩、これを登れば山頂だ

登りはじめは足がかりが少ない

ちょっと登ると手がかりがいっぱいある

登り切ってから下をのぞく

山頂に向かう

記念撮影

山頂から降りて振り返ると山頂に人が見える

綺麗な高原ヒュッテ(避難小屋)

高原ヒュッテの内部

駐車場まであと少し


下りは快適に高度を下げていく。「扇平」に着くまでに3人とすれ違った。それからもう一人はアイゼンを忘れて、途中で断念して引き返す単独行者だ。「扇平」では登るときに見なかった「月見岩」を見てから下った。この「月見岩」は本来「富士山」の好展望地であるらしい。ひょっとしたら天気が回復するのではと思い、ちょっとだけ立ち止まったが、あきらめて下山した。

このまま帰るのも癪なので、高原ヒュッテ(避難小屋)に寄って昼食をとることにした。高原ヒュッテはかつて営業小屋だったらしいが、日帰りが可能な乾徳山では維持ができなかったらしい。その後は荒廃が進んでいたが、山梨市が整備したらしい。バイオトイレは、去年完成したらしいが、冬季は閉鎖されている。中に入るとアイゼンを忘れて引き返していた単独行の男性が休んでいた。ここでもカップラーメンを肴にして焼酎をいただくことにした。結局はこの男性と30分以上も話をして過ごしてしまった。さぞかし迷惑だったに違いない。

40分ほど、高原ヒュッテで休憩後、時刻も早いのでゆっくりと下山した。



駐車場06:49--(.18)--07:07登山口--(.28)--07:35銀晶水--(.18)--07:53駒止--(.33)--08:26錦晶水--(.11)--08:37分岐(国師ヶ原)--(.32)--09:09扇平09:23--(1.17)--10:40乾徳山山頂10:52--(1.09)--12:01高原ヒュッテ(避難小屋)12:40--(1.03)--13:43登山口--(.17)--14:00駐車場


群馬山岳移動通信/2015


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。
(承認番号 平16総使、第652号)

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