一ノ沢から登る「常念岳」「横通岳」   登山日2013年7月22日





常念乗越から穂高連峰(槍の穂先は雲の中)



常念岳(じょうねんだけ)標高2857m 長野県安曇野市・松本市/横通岳(よことおしだけ)標高2767m 長野県安曇野市・松本市

駐車場04:09-(.17)-04:26登山口-(.17)-04:43山ノ神-(.44)-05:27大滝-(.20)-05:47エボシ沢-(.29)-06:16笠原沢-(.31)-06:47胸突八丁-(.19)-07:06最終水場07:12-(.44)-07:56常念乗越08:23-(.55)-09:18常念岳09:30-(.43)-10:13常念小屋10:39-(1.00)-11:39横通岳12:01-(.36)-12:37常念小屋13:07-(.25)-13:32最終水場-(1.58)-15:30登山口15:30-(.15)-15:45駐車場


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)



思わぬアクシデントで脇腹を打撲、肋骨に異常はないとの診断だが、どうにも痛みが取れない。金曜日に休暇をいただいて山に登ろうとしたが、寝返りも打てない状態。それではと、延期して月曜日に休暇をいただいたが、当初予定していた山は天気が悪そうだ。良さそうなところを探すと、常念岳がかろうじて雨の心配がなさそうだ。常念岳は三ツ股から蝶ヶ岳を周回しようと考えていたが、この状態では無理と判断、一ノ沢登山口からのピストンなら何とかなりそうなので、急遽計画を立てた。まして常念岳は北アルプスの入門コースとなっているようだ。
 7月22日(月)


登山者用駐車場に車中泊、午前3時の目覚ましが鳴ったが、なかなか起きられず20分ほど惰眠をむさぼる。起き出して、着替えを済ませて外に出ると、暗闇の中で近くを流れる沢音がゴウゴウと音を立てている。カップラーメンの朝食を食べきるころにはランプも要らないほど周囲は明るくなっていた。 


とてつもなく長い車道を歩いてやっと登山口に到着。なにも駐車場に車を置かなくとも、路肩にスペースがあるので、ここに停めれば良かったと後悔した。駐車場から20分ほど歩くと登山口に到着。ここには登山指導所とトイレが設置されていた。しかし、人影はなく出しっぱなしのトイレ前の蛇口から出る水音だけが聞こえている。案内表示板を見ていると、大型バスが到着し登山口前の広場で転回して停車した。バスから2名ほど乗客が降りたのを確認してから、登山口を出発した。
 道はほとんど水平に近く、ダラダラと樹林のなかを進んでいく。まだまだ夜明けは先のようで、樹林帯の中はより暗く感じる。登山道を横切る山の斜面から一ノ沢に流れ込む沢の水量は豊富で、このコースは水の道と言っても良いくらいだ。こうなるとザックに入れた4リットルの水は、単なるおもりとなってしまうかもしれない。山ノ神の鳥居に一礼してさらに進む頃になると、やっと頭上が明るくなり、青空が確認できるようになった。それを見ていると、雨になると言う天気予報が外れるのではないかと、期待を持たせるようだ。


 沢の水音を聞きながら登っていく。幾つかの丸太橋を渡り距離を延ばしていくが、一向に高度が上がらないのが気になる。支流である笠原沢を過ぎると、明るい一ノ沢の本流を登ることになる。沢の先には雪渓が残り、その先には緑の稜線が青空の中に浮き出て見えた。このあたりになると下山してくる登山者とすれ違うようになる。それと同時に、ものすごいスピードで二人組に追い越された。トレランでもないようで、その速さはとてもついて行けそうにない。


 沢を登り詰めると、右側に木製の階段が現れ「胸突八丁」の標識が立っていた。その名の通り、この階段を登っていくと、やっと高度が上がっていく感じがする。しかし、さほどの苦しさは感じない。それはこの付近から高山植物のオンパレードとなったからだ。その花の名前を思い出そうとしていると、それだけで時間を費やしてしまうからだ。見る間に今まで歩いてきた沢が眼下に去り、今度は新たな沢の流れが見えてくる。整備された道は木道が渡されてとても歩きやすい。関係者の方の労力が見える。

ひとしきり登り上げると最終水場となった。豊富な水量で冷たくて飲み心地が良い。気がつけば、持ってきた4リットルの水は全く使用せず、ただの重りとなってしまったようだ。今度このルートを登るときは最終水場まで水は不要ということを覚えておこう。勢い込んで水を飲んだら咳が止まらず、咳をする度に脇腹に痛みが走ってしかたなかった。

水場から、登山道はジグザグになって高度を上げていく。第一ベンチから、第二、第三と過ぎると目の前が急に開けて砂礫の広場に出た。ここが常念乗越で、赤い屋根の常念小屋とその先に穂高連峰が横たわっていた。しかし、残念ながら槍ヶ岳は雲に隠れて見えない。南岳と北穂高岳の間のキレットの部分だけが青空が開いていた。その中心にある三角形の長谷川ピークが突起となって目立っている。平日ということもあり広場に混雑はなく、ベンチもほとんどが空いている。そこで、まずは大休止としよう。冷やしてきた自家製のキュウリにマヨネーズを付けて囓ると何とも旨い。立て続けに2本を平らげてしまった。




一ノ沢登山口にバスが到着

登山口

山ノ神

王滝ベンチ

沢音が心地よい

沢を詰める

雪渓が残っている


胸突八丁

最終水場

常念乗越まであとわずか

常念乗越


常念小屋


30分ほど休憩して、まずは常念岳にとりつくことにする。ほとんどの登山者は宿泊するのだろう、空身で往復する人ばかりだ。そこで考えたが、ザックを置いていくことはどうしても出来ないので4リットルの水もそのままザックに入れて登ることにした。大きな石がゴロゴロとした道はルートが解りにくく、いつの間にか脇にそれてしまうことがしばしばだった。振り返ると常念小屋の向こうに横通岳の秀麗な姿が見えている。大天井岳は無理としても、あのピークを登っておきたいと思いながら登り続けた。

帽子の鍔から汗が絶え間なくしたたり落ちている。下山してくる人は涼しい顔である。よほど疲れているように見えたのか、「大丈夫ですか?」「もう少しで傾斜が緩くなりますよ」と励ましてくれる。たまたま擦れ違った子供の顔に汗が飛んだらしく「お父さん、雨が顔に当たったよ」と言った。しかし、「それはおじいさんの汗だよ」とは言えなかった。そんな登りも、陽が翳ると急に寒くなり、日が射すと強烈に暑くなった。ミヤマダイコンソウとハイマツの岩場を歩いて行くとやっと常念岳山頂にたどり着いた。

山頂には4人ほど休憩していた。まずは記念撮影をしてから周りを見渡す。山頂方位盤があるが、文字が小さく高齢者には見えないものだった。蝶ヶ岳方面に続く稜線は霞んでいるがそのルートはハッキリと見える。怪我さえしなければ常念岳から蝶ヶ岳というルートも可能だったに違いないのに何とも情けない。穂高連峰のスカイラインは相変わらず雲が居座って見ることは出来なかった。そうしているうちに狭い山頂は登山者が多くなり、居心地が悪くなってきたので下山することにした。



常念岳への道は石の道

常念岳山頂

常念岳より蝶ヶ岳方面

ミヤマダイコンソウの咲く斜面


常念岳からの穂高連峰・大天井岳・燕岳、手前に見えるのが横通岳


常念小屋のベンチで考える。時刻は10時ちょっと過ぎ、まだビールを呑む時間ではない。やはり横通岳に登っておくことにする。

出発時から重量がほとんど減っていないザックを背負って出発する。一旦樹林帯に入り、そこを抜けると展望が優れた砂礫の斜面の登りとなる。振り返るとあれほど解りにくかった常念岳の登山ルートがくっきりと見えている。陽はほとんど射さずに冷たい風が吹き始めた。素手で過ごしてきたが、ここで手袋を装着することにした。下界の暑さはここでは無縁のようだ。手前のピークを巻くと、岩を積み重ねたような横通岳が間近に見える。山腹には迂回路が横切っており、燕岳からの縦走では横通岳のピークは踏まなくとも良いルートができあがっている。その迂回路を歩いてくる二人の登山者と擦れ違った。登るときに追い越された二人組だ。聞けば大天井岳まで行ってきたとのこと。まさに驚きの健脚であると感心してしまった。

横通岳の登りはコマクサの花畑を登る快適な登りだ。何度も足を止めてコマクサを鑑賞する。横通岳のルートが紹介されていないのはなんとも寂しい話だ。あえぎながら登っていくとケルンが積まれた山頂に到着だ。雲がなければ360度の大展望である。それでも稜線を目で追うと大天井岳が確認できる。一人占めの展望を楽しんでいると、単独行の男性が到着した。69歳という男性はこれから、槍ヶ岳まで行くというが、天気が悪くなったら小屋で沈澱するという。いつになったら自分もそんな山歩きが出来るのだろうか。

横通岳から常念小屋に下山すると、なんと80人の中学生でごった返している。関係者に聞けば明日は100人が登ってくるとか。やはり北アルプス入門の山と言うことなのか。時刻は12時半、小屋でビールを購入して一気に飲み干す。ああ、何という幸せなのだが、展望だけはなんとも残念だ。心残りの山というのも良いではないかと言い聞かせて下山についた。


常念岳中腹から常念小屋と横通岳(ガスの奥)

横通岳から常念岳

横通岳山頂

横通岳山頂三角点

横通岳からのパノラマ(常念岳・穂高連峰・大天井岳)

常念小屋に青い点々が

ジャージ姿の80名の中学生がいる

冷やしたキュウリ

とりあえずビール(500円)



ヤマガラシ
(同日に登ったpasocomさんに名前のアドバイスを貰いました)

コンロンソウ

タカネスミレ

センジュガンピ

オトギリソウ

ホタルブクロ

ウサギギク

ニリンソウ?

ハクサンシャクナゲ

グンナイフウロ

ニッコウキスゲ

コケモモ

オヤマノリンドウの蕾

マルバタケブキ

シモツケソウ

イブキノトラノオ

コマクサ(後方は常念岳)




群馬山岳移動通信/2013