北アルプス静寂の「有明山」
                                        登山日2014年9月4日


有明山(ありあけやま) 標高2268m 長野県安曇野市・北安曇野郡


2014年8月は猫の目のごとく変化する天候に翻弄されて、山に行く機会を失ってしまった。9月に入ってからもその傾向は続き、なかなか出かけられない。こうなったら週末利用の山は諦めて、平日の山を目指すことにした。
天気予報を見比べて9月4日に北アルプスの寂峰である「有明山」に登ることにした。

9月4日(木)
燕岳への登山口でもある第二駐車場から出発する。この第二駐車場平日と言うこともあり、ガラガラ状態だ。本来ならこの第二駐車場から有明山に登ることは可能なのだが、登山口の標識に「登山者カードを入れる箱は有明荘裏の第三駐車場にある」と書いてある。律儀にそれに従うことにして第3駐車場に向かう。第3駐車場はヘリポートに隣接しており、離発着時は駐車も制限されるらしい。設置してある登山ポストに計画書を投函しようとしたら、なんと満杯であったので、無理矢理押し込んだ。どうやらこのポストは活用されていないようだ。登山届は必ず提出してくださいなどと叫んでいるが、どうやら掛け声だけなのかも知れぬ。登山ポストには鍵も掛かっておらず、過去の届も他人が見ることは簡単だ。個人情報の塊でもあるものだけに悪意を持った人に渡らないとも考えられないから不安はある。計画書は登山口で出すのではなく、家族、知人、所属山岳会に出した方が無難かも知れない。

登山口からしばらくは刈り払われた笹薮の中を進む。晴れの予報を期待していたのだが、朝方にかけて降った雨のため、笹深いところでは足元が濡れてしまった。おまけに周囲はガスでハッキリしないので気分の高揚は期待できなかった。やがて第二駐車場から登ってくる道と合流する。わざわざ登山ポストのために回り道をしたことが、とても無駄だったのではないかと感じられる。



登山口にあるポスト(不要?)

第二駐車場への分岐



この分岐からいよいよ登山道らしくなってくる。しかし、ピンクテープが頻繁に付けられているので道に迷うことはなさそうだ。道は急登なのだが、ロープとハシゴが取り付けられているので、整備は十分と言っていいだろう。それにしても登山道にある木の根は網目状に張っており、その上が滑りとても歩きにくい。大袈裟に言えば氷の上を歩いているようなものだ。まさに軽アイゼンが欲しいくらいだ。

分岐から急登をジグザグに登り、フト気が付くと様子が変なことに気が付いた。ピンクテープはなくなり、踏み跡も途切れがちになってきた。上部に登ったり、下方に目を凝らしてみるが、どうもハッキリしない。どうやらルートを見失ったらしい。あれほどハッキリしていた道を間違える筈はないと、半信半疑で戻ってみた。すると登山道に戻り、道は上部に向かっていた。あらためて見ると間違えようがないところだ。何故迷ったのかしばらくそのまま考えたが、納得いく説明は出来なかった。結局、10分ほどのロスで済んだことが幸いだったのかも知れない。



朽ち果てそうなハシゴ(意外としっかりしている)

このロープは不要と思ったがとんでもない



展望のない急登はそのまま続き、いつまでたっても樹林帯から抜け出せない状態だ。その急登も次第に横移動の道に変わっていく、その道は岩場の下に付けられており、その場所には鎖が設置してあるが、やはり緊張する。それにしても今日はペースが上がらない。やはり2ヶ月ぶりの山歩きでは空白期間が多すぎたようだ。15分歩いては5分休むような登り方になってしまった。

変化のない道を登り上げると、やがて道は大きく右に曲がり稜線を辿るようになる。岩場を越えながら登っていくと、後方の青い山並みがガスの中に霞んで見えている。おそらく鹿島槍の付近だろうと見当を付ける。しかし、近くにある燕岳の山頂付近は雲に覆われて、全く見ることが出来ない。



古い標識


岩場のトラバース

ママコナ


アスレチック

岩場でやっと展望が開けた

この鎖は新しい



そして視界が急に開けたと思ったら、そこが有明山の北峰山頂だった。山頂には眩いばかりのステンレス製の鳥居があり異様な輝きを放っている。神社があるのでお参りをしておく。展望はなく仕方なくベンチに座って、時間を過ごした。地図を見ると、この先にもピークがあるので歩き始める。神社の裏手に回り込み樹林の中を進むとすぐに三角点のあるピークに到着。気持ちの良いところなので、ここで大休止することにした。晴れていればここから燕岳、大天井岳、振り返れば安曇野の市街地が見えるはずだ。まあ、これでは仕方ない、雨が降らないだけでも儲けものだ。自家製のキュウリをつまみにノンアルコールビールをちびちびと呑む。

さて、ここから中岳、南岳(奥社)とふたつのピークがある。時間が早いのでそちらにも行ってみることにする。そのルートは意外なほど薮に覆われて歩きにくい。その上、展望もないことから南岳まで行っては見たが、特段の感慨はなかった。

さして記憶に残るものもなく、有明山山頂を辞することにする。




九合目の丁目石

山頂直下の樹林帯

ガスで展望はいまひとつ

ステンレス製の鳥居(避雷針も兼ねるそうだ)

北岳でとりあえずヤッタア

二等三角点

燕岳方面はこんな感じ

ノンアルコールビールで我慢

中岳の社


南岳の奥社



下山途中の標高2000m付近までくると、雨粒を感じるようになった。ザックカバーをセットしたが雨具は着けなくとも大丈夫だ。それよりも、木の根が更に滑りやすくなってしまったことが不安だ。そんなとき、木が根元から崩れ逆さになって倒れている崩落地にさしかかった。足場が悪くロープが垂らしてあるが、それを無視して両手に持ったストックを支えにして、慎重に下降した。ところが注意していたはずなのに、木の根の上に乗っかり、あっという間にスリップ。身体は横に一回転して崩落地に向かって、スローモーションのように落ちていく。ストックは手から離れて、身体よりも先に下方に落ちていった。「これまでか・・・」頭の中で最悪の状況が浮かんだ。
一瞬覚悟を決めたときに、身体がなにかに引っかかった。なんと倒れた木の枝に引っかかってクッションのようになり着地したのだ。それ以上、落ちないように慎重に身体を起こして俯せになり、立ち上がった。身体を点検するが、右腕にかすり傷を負っただけで、致命的なケガには至らなかったようだ。枝に掴まって更に下降してストックを回収して登山道に何とか復帰した。下降時はストックは収納するべきだと、この時はじめて実感した。

それからは、スリップしたことがトラウマになり、慎重に下ったのだが、スリップして尻餅を3回ほど繰り返してやっとの思いで駐車場にたどり着いた。

有明荘に向かって車で移動し、風呂にはいることにした。このころになると雨は土砂降り状態。そんなわけで風呂は独占状態。有明山の登山バッチを購入して、帰路についた。



なんとか鹿島槍を確認

この網の目状の根が滑る

ガスに囲まれる

滑落地点から見上げる

有明荘

誰もいない露天風呂



ところが、ふと妙なことに気が付いた。ストックを前輪に立てかけてそのまま車を移動してきてしまった。こりゃ戻るしかない。第二駐車場の戻ると、しっかりストックがタイヤに踏まれていたが、折れた様子もなく残っていた。ヨカッタ!!

帰りは長野自動車道に乗って、いつものように姨捨SAに立ち寄り、車内のゴミを整理した。天ぷら蕎麦を食べてから落ち着いて出発。ところがフト気が付いた。山バッチをそのまま捨ててきてしまったことを・・・・

なんという、山行だったのだろう。
まあ、全てがラッキーな方向に働き、大事には至らなかった。
幸いとするべきかも知れない。


それにしても登りは3時間が標準、早い人は2時間半。ところが私は4時間も掛かっている。
そろそろ老化による引退も近くなったのかと実感する。


05:35第二駐車場--(.07)--05:42有明荘登山口05:45--(.24)--06:09分岐--(.15)--06:24迷う06:35--(3.04)--09:39北岳09:49--(.02)--09:51三角点峰10:19--(.05)--10:24中岳--(.11)--10:35奥社10:42--(.30)--11:18北岳--(.59)--12:17滑落12:25--(1.00)--13:35分岐--(.13)--13:48第二駐車場


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。
(承認番号 平16総使、第652号)

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